犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

激辛牛すじ煮込み

2014-01-16 22:58:58 | 食べる

 品川のミャンマー人が働いている居酒屋に、あらためて出直しました。

 日曜日の夜だったため、前回よりも客は少なめ。厨房にいるミャンマー人も二人だけ。前回ホールにいたミャンマー女性はおらず、代わりに日本人の男性がいました。

「この店のお勧めはなんですか」

「そうですね。これがよく出ますよ」

 日本人の店員が指さしたのは、激辛牛すじ煮込みなる一品。

「じゃ、ビールとそれください」

 あたりを見回すと、どのテーブルにも牛すじ煮込みがありました。

「ここ、ミャンマーの方が多いですよね」

「ええ。私はいつも別の支店にいるんですけど、そっちにもミャンマー人がいます。なんでも、20年くらい前にここで働いたミャンマー人がいて、その人の紹介、紹介で、ミャンマー人が多くなったらしいです」

「牛すじ煮込みもミャンマー風ですか」

「いや、そんなことはないですよ」

 出てきたのは、激辛の名にふさわしく、煮込まれた牛すじ肉が油ぎった汁の中で赤黒く光っています。とはいっても、さまざまな激辛料理に慣らされている私にとって、それほど辛いとは思えませんでした。

 日本人店員の話では、ミャンマー風ではないという話でしたが、これはまぎれもなく、ミャンマー料理のアメーダーヒン(牛肉カレー)

 「ヒン」は日本のミャンマー料理屋ではカレーと訳されていることが多いけれど、おかず、または煮込み料理のこと。アメーダーは牛肉です。ミャンマー料理は油を大量に使い、「~ヒン」と称される煮込み料理は、上のほうに油の層が分離するほどです。この店の牛すじ煮込みがまさにそんな感じでした。使われている牛肉は、メニューによれば100%和牛だそうで、とてもやわらかくておいしい。

「ああ、そういえば、これがミャンマー料理です」

 店員さんが指さしたのは、お店のまかない料理の残り。

「ミャンマー風の香辛料の入ったスープ麺なんですけど、材料はよくわかりません」

 それで厨房内のミャンマー人に聞いてみました。

「それ、材料はなんですか」

「ココナッツミルクです」

「ああ、オンノウカウスェーですね」

「ホウッテー(そうです)」

 お店の人がときどきマイクに向かってミャンマー語を話しています。二階にも席があるようで、前回見たミャンマー女性は二階のホール係をやってるのかもしれません。厨房内の、私の目の前にいたミャンマー人は無口であまり話がはずまないので、ビール2本を飲んで、席を立ちました。

 ちなみに、「激辛」という言葉は、94年発行の三国(三省堂国語辞典)第4版にはなく、2008年発行の第6版にはあります。意味は、a味がとてつもなくからいこと。「-のカレー」、b評価がひどくてきびしいこと「-批評」。

 「激」の似た用例として、「激安」もありました。ひどく安いこと「-の商品」

 2014年の最新版では、「激-」という造語成分が立項されていました。

げき-【激】 (造語)[俗]はなはだ。たいへん。「-安・-やせ・-混み・-吸収タオル」

 激吸収タオルって? 妻に聞いてみると、キッチンタオルで、油などの吸収がとてもいいやつがあるんだそうです。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 三国がやばい | トップ | 普通考 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

食べる」カテゴリの最新記事