犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国語の辱説(罵り言葉)

2020-06-23 00:42:04 | 韓国語教室
 金与正の「糞犬」のような罵倒表現を読んで、韓国語学者の故・長璋吉さんの「罵り言葉入門」というコラム(『言語』1986年11月号「特集ハングルの世界」、大修館書店)を思い出しました。

 韓国語(朝鮮語)で罵り言葉は、ヨクソル(辱説)といいます。韓国語は、ヨクソルがまことに発達しているようです。

 ヨクソルの要素には、次のようなものがあります。

〔基本5単語〕
ゴッ(것 もの)、ノム(놈 やつ)、ニョン(년 あま:女性専用)、セッキ(새끼 動物の仔)、チャシク(子息 자식、がき:男性専用)

〔基本3冠形詞(連体詞)〕
(이 この)、(그 その)、チョ(저 あの)。これらをそれぞれヨ여、コ거、チョ조にすると、さらに小馬鹿にする効果がある。

〔基本3修飾語〕
ナップン(나쁜 悪い)、トロウン(더로운 汚い)、コヤッカン(고약한 怪しからん)

〔応用3修飾語〕
ピロモグル(빌어먹을 物乞いする)、ウラジル(우라질 乞食する)、マンハル(망할 滅びる、醜い)

〔応用2語尾〕
ガットゥニ(같으니 ~め)、ガットゥニラゴ같으니라고(さらに威厳をもって罵るときに使用)

 実際には、以上の要素を適宜組み合わせて使います。

〈例〉
イ・トロウン・チャシク(この汚いがき)
ヨ・コヤッカン・ノム・ガットゥニラゴ(この不届きな奴らめ)

 いちだんとエスカレートした罵り言葉に、次のようなものがあります。

チェーミシッパルノム(제미씨팔놈 てめえの母ちゃんとやる奴、mother fucker)

チュギルノム(죽일놈 殺すべき奴)

オサラルノム(오살할놈 五殺すべき奴)。「五殺」とは、ただ殺すだけでなく、殺した後、五体(頭、胴体、手、足)をバラバラにすること。

 究極のヨクソルとして…

ヌンジチョチャマルノム(능지처참할놈 陵遅処斬すべき奴)。「陵遅処斬」とは、一気には殺さず、少しずつ五体を切り取り、苦痛を与えながら八つ裂きにしたあと、晒しものにする、朝鮮時代の刑罰。

 1884年、甲申政変を主導した金玉均(キム・オクキュン)は、クーデターが三日天下に終わった後、閔妃が送った刺客により上海で射殺され、その遺骸は朝鮮に送られて「凌遲處斬」に処せられ、頭部は長く漢江河畔に晒されたのだそうです(リンク)。

 最後に、必ずしも罵り言葉でないものも含まれますが、「糞」を含む俗談(ことわざ)・慣用句のたぐいをいくつかご紹介しましょう。
※食事中に読まないでください。

【顔に糞を塗る】
面目をつぶす。日本語では「泥」ですが。

【糞をもらして梅の花を愛でる】
間違いをしておきながら、しれっとしてずぶとい。

【糞をしに行って飯くれと言うのか】
もともとの目的を忘れ、まるで違うことをする人に向かって。

【糞は乾いても臭い】
本性が悪いのは、変わりようがない。

【糞はいじるほど臭い】
性悪なやつをかまえば、よけい不快なことばかりだ。

【糞が恐くて避けるもんか、汚いから避けるのさ】
くだらん奴は相手にしない。

【糞して去った井戸の水もいつか飲む日が来る】
いつ世話になるとも限らないから、他人にはいつもよくしておくものだ。
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