日々ふさおまき

走って跳んで歩いてます。

2011年9月23日~24日 那須岳登山と三斗小屋温泉煙草屋旅館に宇都宮

2011-09-25 01:30:09 | 旅行記

トレーニングと絶景そして温泉とおいしいもの。
旅の4楽を求めて、あちこちをさまよう私たち”ふさおまき”
今回の旅程は、彼女の制作でした。

チョイスのきっかけの一つは、私の「今年は全然山に行っていない!」
という叫びを叶えてやろうという暖かい心栄えなのですが、
今回は一ひねりありました。
山の絶景温泉です。
それが三斗小屋温泉。
山の中にたたずむ、かつては5軒、今では2件の旅館が営業する温泉地です。


ここに行くことで、もうすでに3要素が詰まるわけですね。
山道を歩いてしかいけない=トレーニングにもなる
山の中の温泉は大展望=温泉と絶景

さて、23日の朝。
家を出るのは7時30分と山に行くにはゆっくり。
新宿から湘南新宿ラインで大宮に出て、新幹線「なすの」に乗って、
くりおこわ弁当を食べ終われば、そこはもう那須塩原で10時35分。
そこからは地元の東野交通が運行するバスで、那須岳ロープウェー山麓駅へ
1時間10分かけてエンジンをうならせて山道を登り11時10分。
ロープウェーはたった4分で高度を300メートルを稼ぎ11時35分。
家を出てから4時間で、山頂を見上げる位置に立ちました。

(このあとも、すべての写真はクリックしていただくと拡大版になります)

さあ、いよいよ自分の足で歩くトレーニングの始まりです。
ただ、誤算が2つ。
東京から離れる醍醐味の「すがすがしい空気」がありません。
今も活発な活動を続ける那須岳は噴煙を上げ、
山頂から標高差200メートルしかない山麓駅に、
硫黄の風を運んできます。
もう一つは「急登」


ロープウェーが長い山麓道をはしょってくれるおかげで、
すでに歩き出しから首を上に上げないと先が見えないほどの
急な斜面の登りになるのです。
トレーニングは、すこしずつ体を動くようにして準備を整えなければ、
最高のパフォーマンスまで持っていけません。
それがいきなり大きな出力を筋肉に求められるのです。
さらには、火山帯とくゆうのがれた岩場がずっと続き、
まだ硬い足の関節に大きな動きを要求してきます。
石を踏んではすべってずりずり、支えようとして太ももに力を入れてと、
どうも体をリズミカルに動かすことができない、リカバリーばかり続きの
いびつな運動になります。
おかげで、出発10分で、私のハムストリングは軽い肉離れです。

まあそれはトレーニングと思うからであるのでしょう。
山頂を目指す人の中には、ロープウェーついでという人も多く、
黒皮のパンプスで歩く女の人もいましたし、
テニスシューズは当たり前、といった感じです。
あのゴロゴロ石によく耐えられるものだと、足首の強さを思ってみたり、
さすがにあれでは靴が壊れるだろうなと危惧したり。
どっちでもいい、大きなお世話です。

1915メートル、山頂には那須岳神社の鳥居がありました。
40分の登山でも、やはりピークは嬉しいもの。
盛んな霧のうねりと、強風が吹きつける中、
もちろん記念撮影もして、100名山の幾つめだか制覇を記録します。
すでに山麓は見えなくなっていますが、
新しい火山を思わせる火口のすり鉢形状を残すこの山では、
お鉢めぐりが楽しめます。
火口を見下ろして、ずっと内側がへこんでいる尾根を360度伝って歩く
なんというのか、内側引力とでも表現するような体感が独特なのです。

お鉢めぐりを終えると、方向をロープウェーとは90度西の違える方角に
とって斜面を下降します。
高度を下げるのは楽なもので、30分歩いて峰の茶屋跡と呼ばれる、
那須岳と朝日岳の峠に着きました。
山頂も強風ですが、ここは豪風です。
がんがん、ぼーぼー、ぐわんぐわん、いろいろな音を立てる風が
ひっきりなしに峠を乗り越えていきます。
そう、旅館の予約のときには、電話で「峰の茶屋跡あたりで
あんまり強い風が吹いていたら、無理して来なくていいからね。
キャンセル料はとらないから。だめだったら絶対峠を越えて歩かない。
強風にあおられて、谷に落ちる人もいるからね」
それもあながち脅しではないだろうと思うほどに、
風は吹き続けます。
茶屋跡に建つ避難小屋で、お湯を沸かしてお茶にする計画を立てていたのですが、
風の前に断念。テルモスから玉露温度に下がったお湯を粉茶に注いで我慢します。

休憩は5分。これだけ風がうなると休んでいる気がしません。
荒ぶる風ですが、飛ばされるとまでは行きません。
今日の宿、三斗小屋(さんどごや)に向かって、緩やかな傾斜になった
道を西にとります。
緩やかになると、急に色が現れました。


緑の海。
ダケカンバが斜面を埋めます。
あと1~2週間で紅葉を迎えるとのことですから、
この落葉広葉樹の樹海は、きっと酸味の色に覆い尽くされるのでしょう。
山道はその森の中へと下っていきます。

30分ほど歩くと、子供会でしょうか、20人ほどの小学生くらいの子を
連れた団体が列を停滞させています。
どうやらおとといの台風で増水した沢を越えるのに手間取っているようです。
一人ひとり、大人に手を引かれて急流をまたぐ子供たち。
地元の子供でしょうか、それほど怖がることも大声を出すことも無く、
渡渉します。
私たちも応援する気持ちで眺めていました。
全員が渡り終えたところで、先に行かせてもらいます。

このあたりにくると、さらに道はゆるく、石も少なくなり
快適な緑のトンネル歩きとなります。
足元を見て、リンドウを見つける余裕も。
最後の少しだけ登って、開けた先に三斗小屋が見えました。

この山の中の温泉地には、煙草屋さんと
大黒屋さんがあり、
どちらも山小屋風の、板を組んだ素朴な建物が、斜面にそって
いくつかの棟を並べています。

到着は14時15分。
ガラス戸をあけると、親切な女性の手早い案内を受け、
靴を脱いで、2階のしゃくなげの間に入ります。
斜面向きの部屋はややカビくさくはあるものの、
個室で6畳、山中ではありがたい広さです。
さあ、温泉。
うわさの山中露天風呂へ。
15時からは女性専用になるので、タオルだけ握ってさっそく外へ出ます。
芝の斜面を用意されたサンダルで50歩ほど行くと、小さな着替え小屋があり、
そのまえに、直径10メートルほどの岩風呂がありました。
確かに、大展望。
緑が続く向こうに大空が広がります。
人工物のない風景は、深呼吸とともに心を開放し、緩めてくれます。
源泉は72度ほどあるそうですが、湧き水で埋めた温泉は、
長湯にぴったり。
一緒に入っている男性たちも、なかまと談笑して、
動く気配もありません。
私も一人、お湯の中で、ばしゃばしゃ言わない程度に、
足首やハムストリングをストレッチして、大風景を堪能しました。


しかし。
部屋に戻ると私の体に異変が!
これがもう、電池切れのように体からも頭からもエネルギーがなくなり、
すとんと眠りに落ちてしまったのです。
標高1500メートルの山間は、夕方が近づくほどに気温が下がり、
10度は下回っています。
毛布を羽織って、でも体がまったく動かず、まぶたは落ちるしかありません。
交代で温泉に出かけた彼女を待つことすら出来ず、
16時30分に始まる夕飯まで、
読もうとして手に取った文庫本を胸の上にのっけたまま、
睡魔に身をゆだねていたのです。


夕食は、そんな巡り悪い体でいただくことになりました。
ただ歩行も2時間30分とはいえ、それなりに山歩きですから
おなかは減っています。
畳の上のお膳には、岩魚の甘露煮、そして豚ロース焼きまであります。


山菜などと一緒にありがたくいただき、
両隣のご夫婦らしき人たちとも、二言三言お話もして、
山の食事は20分でご馳走様。
またすぐに眠くなって、彼女が起こしてくれたときには、
もう真っ暗になっていました。

そして、今日最高の絶景へ。
星空。星降る夜。
数えるのは無理です。天の川が満天を埋めるような様子。
ベランダから見上げたあと、
8時30分には、真っ暗な露天風呂へ彼女と一緒に入って、
またまた、天に通じる大解放です。

山の宿は自家発電です。
消灯は9時。
本当にジャストに電気は落ちました。
彼女はヘッドライトでしばらく読書を続けていましたが、
それもしばらく。
寒さを毛布と布団でくるみながら、せんべい布団にやや腰の痛みをわずらいつつ、
うつらうつらと馴染む夜。
深夜に風が強まり雨音が屋根を叩いたりもしましたが、
目覚めたのは朝ごはん直前の朝6時25分になった時でした。


24日。旅の2日目。
2つのピークを目標に数えていました。
一つは那須連山最高峰の三本槍岳、もう一つは朝日岳。
両方登れば6時間コースで朝日岳だけなら3時間30分くらいのはず。
朝ごはんを終えると7時30分に宿を後にしました。

15分ほど登ると三斗小屋の源泉が斜面から湧き出し煙を上げています。


火山の力を横に見ながら、登り道は続きます。
昨日よりも、すこしは前置きのある緩めの斜面で体を慣らし、
1時間ほどで隠居倉という小さな尾根のピークに。


ちょっと下ってのぼり、展望のよいというか、大きく斜面をくずした
やせた尾根のほとんど植物も無い道を、風にあおられながら
歩いていきます。


どうも体調は昨日より悪く、しょっちゅうバランスをくずして
おっとっとと足をするつど、後ろから彼女に笑われます。
風も昨日以上で、ますます感覚を麻痺させます。
汗をかくだろうからと、上着を早めに脱いだのもたたり、
指先の感覚もなくなってきます。
2000メートルも無い山でも、風がこれほど体力をそぐ原因になるのですから、
山というのはやはり平地では想像に難い気候を突きつけます。
目標の一つ、三本槍岳との分岐点・熊見曽根東端で、
あまりの強風と、山体を多い尽くす霧に登るのをあきらめ、
今日は朝日岳だけを狙うことにしました。


そんな選択も、彼女は瞬時にしてくれます。
すぱっとして、ありがたいこと。

そしてしばらく尾根を行き、朝日の肩という丸みのある山頂を見上げる地に
到着。登攀5分とは思えぬ、切り立った岩の手探り足探りの登りを
なんとかこなして、1896メートルの山頂にタッチして、どんと
跳ね返るようにくだりを始めたのでした。

後はもう下りだけ、なのですが、
同時に道は狭まり、むき出しの斜面に鎖がずっと張られているのも
やや恐怖感を誘う移動の連続で、足はさらにねじれて行きます。
もう、歩く早さは彼女のほうが早いくらいになりました。

それでも、昨日最高の強風に悩まされた峰の茶屋跡にたどりつき、
さらに下り始めると、嘘のように風は和らぎ、
気温も上がります。
下れば霧もありません。
太陽のぬくもりが届き、朝のガラパゴスイグアナのように、手足を広げて
光を浴び、血が体に巡る喜びを受け取ります。

弾むように、まろぶ様にくだりを駆け、
11時には登山口の駐車場にいたり、


そこから15分ほど道路わきの小道をたどって、
冷えた体を救ってくれる、大丸(おおまる)温泉旅館に到着しました。
しかし、ここはなかなかに時間厳守の温泉で、
入浴客への開門は11時30分。常連さんによると、厳しく守られるそうです。
15分ほど待つうちに、スパッツを脱ぎ、リュックから温泉用具を取り出して、
入館に備えます。

 


上流から流れる豊富な温泉を、3段の湯槽で受け止め、
どれも広々とした景観を堪能できる、川沿いの旅館は、
日帰り客の人気も高く、次から次に人が入ってきます。
バスの時間まで浸って、冷え切った体はずいぶんと楽になり、
風呂上りには二人で、おいしく那須高原のソフトクリームをいただきました。
今シーズン最後で、最高に染み渡るソフト体験となりました。
このときここに及んで、ようやく青空ですしね。

バスは12時35分発。
エンジンブレーキを強烈に利かせて、1時間で黒磯駅に到着。
往路と違う駅を使うのは、
彼女がまた、事前計画中に、謎の、そして超ラブリーなパン屋さんを発見
していたからでした。

その店は、まったく嘘偽り無く、想像を超えて、意外性ばかりのお店でした。

  


黒磯駅の、山とは反対側、南口の一帯は静かなたたずまいです。
店は酒屋が見えるくらい。すぐに住宅地ですし、
人通りもほとんどありません。
プリントアウトした地図だけを頼りにやってきたのが
まるぱん工房さん。
このように切り取ると、高原のパン屋さんですが、
歩いてきた県外者にとっては、やや活気をなくした町の
住宅街に、どこからとも無く急に現れたワンダーランド。
そこだけ明るく、地熱も高く思えるほどでした。
この立地が第一の意外性。
次の意外性は、パンの愛らしさ。この熊、そして小熊。
他にも動物シリーズが並び、どれも丁寧に整えられているのです。

  


きっと作り手が、かわいい動物をパンで形にしたいと思ってるんだと
確信できる、手の込んだ作りようです。
ほら、時々ありますでしょ。町のパン屋さんで、売らんがために子供狙いに
動物やキャラクターのパンを作って、みんなどこかひしゃげているのが。
第三の意外性は、ごめんなさい、味です。
天然酵母を謳うパンには、独特のきつい香りと、
歯切れの悪さがあると思い込んでいました。
だけどまるぱん工房さんのパンは、薄めに焼いているのだけれど、
もっちりとして香りはあくまで軽やか、小麦っておいしいなと思えるものなのです。

  


ちくわパンの味付けも、そのパンのもつ力を超えぬよう、とはいえその力を
測りきって、ちゃんと必要最小限のマヨネーズを流し、
マスタードまで潜ませています。バランスの妙でしょう。
作り手の感覚がとても好ましいのですね。


付け加えれば、応対に出てくれた年のころ30半ばに見える男性の
さりげない観光客への気遣いや世間話も、居心地の良さを高めてくれました。

14時10分、黒磯駅から宇都宮行きの普通に乗車します。
1時間ほどの車中は、横長椅子でしたが、買ったばかりのパンを我慢できる
状況ではなく、缶コーヒーとともに、味わいのひと時を、
車窓に切り取られた那須連山の、全体で見ても巨大な火山をかつては
形作っていたのだと思わせる景観とともに過ごしたのです。

15時10分に宇都宮着。
リュックをコインロッカーに預け、次なる美味の目的を狙います。
ここ3年ほど年に一回は出かける、シュークリームの名店・シャンベルタン
JR宇都宮から東武宇都宮に向かい、パルコの前を左へ入って。
枝道の一角に見つかります。年に一回だと、ちょっと迷ってたどりつく、
といったくらいの、隠れ場所的なお店ではあります。


ショーケースには、本当にシュークリームばかり。
シューには3つほど種類がありますが、どれもなかなかに楽しいあしらいが
施されていて、今日はすでに売り切れのものがかなり出ていましたが、
HPで見れば20種は店頭に並びます。
購入したのは、シトロン・エクレア・ティファニーにスワンの4つ。

      


これは自宅で食べるために、保冷パックをリュックにつめてきたのですから、
私たちのシャンベルタン好きは、自分でもたいしたものだと思います。

旅の味の締めくくり。
宇都宮ですから餃子です。
町の大きなビル地下に、「きらっせ」という餃子のフードコートがあります。
にらの入った餃子がそれほど好きでない彼女も、宇都宮では付き合ってくれます。
老舗の一角みんみん。羽根餃子を売りにするめんめん。
今回はこの2店のお世話になりました。
みんみんからは揚げ餃子。

めんめんからは焼き羽餃子とおろしポン酢のゆで餃子。

  


キリンフリーでのどを潤しながら、ぱくぱくと口に放りこみました。
一口にして、皮と汁と餡が味わえる餃子は、
口に楽しい食べ物の代表です。

と、満腹に浸っていたら16時15分。
電車は16時47分です。
彼女を前回の一人訪宮時に見つけたアンテナショップ「宮カフェ」に案内して、
市内各地のクッキーを買ったらタイムリミット。
急いでバスに乗って駅へ行き、
湘南新宿ラインで逗子までつながる、さすがにJRな長距離普通電車に乗って、
2時間後には新宿に着くのでした。

長くなりました。
4つの希望と欲望を、タップリ頭にもおなかにも詰め込んで、
今回の旅も終わりです。
 

 

 

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4 コメント

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栃木牛 (さあ)
2011-09-25 03:13:21
がってん大田原!栃木の名物の牛食べるたび
一度ご企画くださいね
返信する
高級牛とトレーニング (RYO)
2011-09-25 09:00:16
牛を食べるなら、ますますトレーニング量を
増やさなければなりませんな。
それにしても、どうしたの?
早起きですね。
返信する
すごい量 (まま)
2011-09-25 09:53:11
感心しました。お口も、足腰も、目も、随分
楽しまれましたね。あれだけ色々味わうには、
あの、運動量が、要りますよね。色々好きな
事が、受け入れられる二人で、嬉しいです。
那須の山て、凄い 景色見る事が
出来てラッキーでした。
返信する
そうなんです (RYO)
2011-09-25 10:54:16
大量の文章におつきあいいただき、
感謝に堪えません。
自分でも読み返せないくらいですから(笑)

那須はさすがに御用邸のある、
日本の自然を代表する「火山に生きる土地」
でした。
おいしいパン屋さんも含めて、
いつかご案内させてください。
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