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僕の音楽評論 その5 椎名林檎編

椎名林檎のファーストアルバム「無罪モラトリアム」(写真)を初めて聴いた時は衝撃的だった。古く艶かしい日本の裏カルチャーが込められているようなその独特な歌詞や世界観。”こんな凄いアルバムを作っている椎名林檎とは、一体どんな人なんだろう?”という興味が湧き上がった。その後、椎名林檎が当時まだ二十歳そこそこの女性であることを知った時は、嘘だろ? と思ってしまった程だ。その曲や歌詞がどう考えても若い女性が制作しているような作品には到底思えなかったからだ。その最初の衝撃は、ちょうどプリンスのアルバムを初めて聴いた時の衝撃にも似ていた。言わば”灰汁が強い”アーティストであることと、”天才と奇人”の紙一重みたいなところが共通していると言える。ルックス的にはかなり魅力的だと思うが、時折見せるその恐ろしいまでに鋭い眼光や、独特な歌唱法からは、(極端に言えば)突然にわけも分からず刺し殺されてしまうような(笑)“殺気”さえ感じてしまう。
こんな彼女だが、「無罪モラトリウム」は彼女のアルバムの中でも最も好きな作品であり、僕の好きなアルバムのトップ10にも入る名作だ。1曲目の「正しい街」から始まり、「歌舞伎町の女王」、「丸の内サディスティック」、「積木遊び」などは特に好きな曲だ。

シングルとしては1999年に発売された「本能」(写真)が最も気に入っているが、彼女が看護婦に扮したコスプレで登場するこの曲のPVは、見てはいけないものを見てしまったような(やばいものを注射されてしまうような(笑))不思議な感覚が漂った作品だったが、このインパクトが功を奏して売上的にも100万枚を超える大ヒットを記録した。

ここ暫く彼女は「東京事変」としてバンド活動を中心としていたが、今年久しぶりのソロ名義アルバム「平成風俗」(写真)をリリースしたばかり。これは蜷川幸雄の娘で、有名な写真家である蜷川実花の初監督作品で、江戸時代の吉原を舞台にした映画「さくらん」のサントラともなっており、椎名林檎が映画の音楽監督を務めている。この「平成風俗」はいかにも彼女らしいタイトルだが、オーケストラを採用した壮大なスケールの作品に仕上がっており、音楽のジャンルもクラシック、ジャズ、タンゴなどを取り入れた曲など満載で、アルバム自体が1つの”椎名林檎ミュージカル”を聴いているような味のある作品だ。特に一曲目の「ギャンブル」は、007のテーマソングのような壮大なスケールで始まり、彼女にしては爽やかな歌唱スタイルで、何か遠い記憶を呼び起こすかのような旋律が魅力の「ハツコイ娼女」、そしてサビが実に美しい「花魁」、実兄の椎名純平とのデュエットでシングルでもある、「この世の限り」などは特に気に入っている曲だ。

椎名林檎ワールドは本当に好き嫌いが分かれると思うが、興味のある方はぜひ一度”林檎”を試食してみてほしい。
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