こんな彼女だが、「無罪モラトリウム」は彼女のアルバムの中でも最も好きな作品であり、僕の好きなアルバムのトップ10にも入る名作だ。1曲目の「正しい街」から始まり、「歌舞伎町の女王」、「丸の内サディスティック」、「積木遊び」などは特に好きな曲だ。
シングルとしては1999年に発売された「本能」(写真)が最も気に入っているが、彼女が看護婦に扮したコスプレで登場するこの曲のPVは、見てはいけないものを見てしまったような(やばいものを注射されてしまうような(笑))不思議な感覚が漂った作品だったが、このインパクトが功を奏して売上的にも100万枚を超える大ヒットを記録した。
ここ暫く彼女は「東京事変」としてバンド活動を中心としていたが、今年久しぶりのソロ名義アルバム「平成風俗」(写真)をリリースしたばかり。これは蜷川幸雄の娘で、有名な写真家である蜷川実花の初監督作品で、江戸時代の吉原を舞台にした映画「さくらん」のサントラともなっており、椎名林檎が映画の音楽監督を務めている。この「平成風俗」はいかにも彼女らしいタイトルだが、オーケストラを採用した壮大なスケールの作品に仕上がっており、音楽のジャンルもクラシック、ジャズ、タンゴなどを取り入れた曲など満載で、アルバム自体が1つの”椎名林檎ミュージカル”を聴いているような味のある作品だ。特に一曲目の「ギャンブル」は、007のテーマソングのような壮大なスケールで始まり、彼女にしては爽やかな歌唱スタイルで、何か遠い記憶を呼び起こすかのような旋律が魅力の「ハツコイ娼女」、そしてサビが実に美しい「花魁」、実兄の椎名純平とのデュエットでシングルでもある、「この世の限り」などは特に気に入っている曲だ。
椎名林檎ワールドは本当に好き嫌いが分かれると思うが、興味のある方はぜひ一度”林檎”を試食してみてほしい。
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