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プリンスのニューアルバムが発売!?

2016年4月に惜しまれながらも57歳の若さで急逝、全世界のアーティストや音楽ファンに今なお多大な影響を与え続けている孤高の天才、プリンス。僕はプリンスのファンなので、亡くなった後も彼の作品をかなり良く聴いているが、やはり彼の音楽性は唯一無二で、他に真似が出来るアーティストはいない。



そんな天国のプリンスから、またまた何とも素晴らしい贈り物が届けられた。2010年にレコーディングされたもののお蔵入りとなっていたスタジオアルバム、『Welcome 2 America (ウェルカム・2・アメリカ)』が7/30に発売されたのだ。ジャケットもなかなかカッコいい。



今回発売となったアルバム『Welcome 2 America』は、変化しつづける世の中や政治的分裂、マスメディアによる情報コントロール、人種やジェンダーなどあらゆる差別や偏見など、今まさに2021年日本をはじめ全世界が直面している社会問題に対し、プリンスが抱いた懸念、心願った希望、描いた未来が記録されたパワフルかつメッセージ性の強い作品となっており、プリンス本人は2010年に「世の中は偽情報に溢れかえっている。ジョージ・オーウェルが警告していた未来そのものだ。僕たちはこのようなチャレンジングな時代を信念曲げずに生きなければならない」と語っており、レコーディングから11年の月日を経て遂に世へ解き放たれることとなったのだ。



プリンスは何万もの未発表曲がまだ遺産として眠っていると言われており、死後も多くのアルバムを出すことが出来るのだが、このアルバムで注目すべきなのは、未発表曲を寄せ集めてアルバムにしたのではなく、“アルバム”として完成された状態で未発表となっていたことだ。つまり、今聴くことが出来る状態で11年前には完成していたということなのだ。



作詞・作曲/プロデュース/その他各楽器のパフォーマンスはプリンス本人。またレコーディングには、天才ドラマーのジョン・ブラックウェルほか、クリス・コールマン、タル・ウィルケンフェルド、モリス・ヘイズ、またザ・ニュー・パワー・ジェネレーションからシェルビー・J.やリヴ・ウォーフィールド、エリサ・フィオリーロらが参加している。



アルバム発売に先がけて、アルバム表題曲である「Welcome 2 America」の配信もスタートしていたが、ゴシップに溢れるテレビやネットからの情報過多、かつて“Slave”(奴隷)と自らの頬に描いたように音楽業界への不満などについて独白。さらにアメリカ合衆国の国歌にある歌詞の一部「Land of the free/Home of the brave」(自由の地/勇者の住処)を、「Land of the free / Home of the slave」(自由の地/奴隷の住処)と揶揄するなど痛烈な批判も込めた楽曲となっている。



このアルバムは社会性の強いアルバムではあるのだが、一瞬それを忘れて純粋にプリンスの音楽として聴いてみることにした。制作された2010年と言えば、この年プリンスが唯一リリースしたアルバムは、『20Ten』という、まさに2010年をタイトルにしたものだった。前にもブログで触れているが、この『20Ten』というアルバムがかなり好きで、僕の好きなプリンスアルバムベスト5の第2位に位置づけられている作品だ。余談になるが、この『20Ten』は、初期プリンスを彷彿とさせるファンキーで活きのいいシンセサウンドが炸裂しており、久々に若々しいプリンスを聴けて嬉しかったが、今考えて見ればかなり実験的なアルバムだったと言える。



(『20Ten』に関しては、下記過去のブログをご参照)
https://blue.ap.teacup.com/applet/bluedeco/20160108/archive

そんな2010年に完成していた『Welcome 2 America (W2A)』。収録されているのは下記12曲。
1) Welcome 2 America
2) Running Game (Son of a Slave Master)
3) Born 2 Die
4) 1000 Light Years From Here
5) Hot Summer
6) Stand Up And B Strong
7) Check The Record
8) Same Page, Different Book
9) When She Comes
10)1010 (Rin Tin Tin)
11)Yes
12)One Day We Will All B Free



何故当時リリースされなかったのかが不思議なくらい内容の濃い、素晴らしいクオリティーとなっている。アルバムとして完成していただけあって、全体の統一感や社会メッセージ性にも筋の通った作品となっており、また全体的に大人っぽく、艶のある内容で、女性コーラスなどの使い方も、ジャズ色が前面に出ていてなかなか味わい深い。特に、1曲目、2曲目、3曲目はジャズ風味が豊かで、オシャレなサウンドとなっている。そういう意味では同じ年に制作された『20Ten』とは対照的な作品と言えなくもない。



全ての曲がメロウかと言えばそうでもなく、ノリのいい曲も織り交ぜながらバランスの良い仕上がりとなっている。僕は個人的に気に入ったのは、ミディアムテンモナ心地良く、どこか2015年のアルバム『HITNRUN Phase Two』を思い起こさせる4曲目の『1000 Light Years From Here』。そして、ロック色が強く出ているのは5曲目の『Hot Summer』。まさに毎日暑い夏の日々が続く今聴くのが旬な1曲だ。



一転して、美しいバラードをデュエットで聴かせるのが6曲目の『Stand Up And B Strong』。なかなか良い曲だ。7曲目の『Check The Record』はまたロックなプリンスが前面に出たカッコいい曲。得意の裏声をふんだんに聴かせてくれるのが9曲目の秀逸なバラード『When She Comes』。



そして、11曲の『Yes』は、このアルバムで唯一、シンセを使った魅力的なファンキープリンスサウンド。どこかミックジャガーとデビッドボウイのデュエット曲『Dancing in the Street』にも似たノリの曲で面白い。これは完全な想像だが、曲風としては『20Ten』に収録されていてもおかしくないので、『20Ten』と同じタイミングで制作された曲だろうと感じた。



アルバム全体を聴いた印象として、“実に心地良いサウンド、高いクオリティー、そして見事な統一感に満ちたアルバムだなあ~”、というのが率直な感想。プリンスらしいこんな素晴らしいニューアルバムにまた出会うことが出来て本当に幸せだし、改めて天才を亡くしてしまった音楽業界の大きな損失を痛感せずにはいられない。

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