男女の間に友情は成立するのか?をテーマに、違う人生を歩んできた4人の男女が紡ぎ出すストーリーを描く、フジテレビ系ドラマ『いちばんすきな花』(毎週木曜22:00〜)が放送開始となった。多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠ら4人が主役という豪華なキャスティングだ。
昨年大ヒットした『silent』のプロデューサー、村瀬健氏、そして脚本・生方美久氏、演出・高野舞氏のチームが再び集結するということで、期待度が高まっている。どうやら長年構想しながら企画が進まなかったらしいのだが、今までありそうでなかったテーマのドラマだ。その意味では、純愛をテーマにした『silent』とはまた大きく視点が違うドラマとしてかなり注目していた。
既に2話まで放送されたが、なかなか良い感じだ。ドラマ全体を支配する“空気感“は『silent』にとても近く、独特な心地良さがある。そしてやっぱり生方美久ならではの脚本の妙みたいなものがひしひしと伝わってくる。幼い頃からどこか同性の親友が出来ない、どこか仲間に溶け込めない”生き苦しさ”を感じていた４人が、ひょんなことで知り合いとなり、ある一軒家に集まりそれぞれ思いを語りだす。なかなか普通ではありえない展開なのだが、それでいてどこか“ありえるかも”と思えてしまうナチュラルさみたいなところが魅力だ。“２人組になるのが苦手”、“仲間に入れない”、“どこかわかってもらえない”、“同性の親友が作れない”、“異性の友達はだめなの？”など、人間誰でも感じたことがある違和感や悩みに焦点を当てているが、子役も使って、子供時代からの描写や表現方法、映像のオーバーラップなどの演出方法も見事である。
ドラマのタイトルになっている『花』だが、花は種類や色も多く、人それぞれ好きな花があると思うが、なかなかうまくドラマのテーマや人物設定に沿って象徴的に使われているのも見事だ。
男女の友情という意味では、これまでにも友情関係から恋愛に発展するパターンや、恋愛を経て、友情関係に変わっていくなどをテーマにしたドラマはあったが、今回はちょっとそれよりも複雑で繊細な捉え方になっているのではと感じるので、今後の描き方に注目したい。
『silent』では、恋愛模様を描いていたことと、聴覚障害をテーマに切ないラブストーリーとなって大きな感動を巻き起こしたが、今回はテーマとしてはそう単純な構図ではない点で、異色のドラマだ。正直どのような展開と結末になるのかまだ想像がつかないが、劇的な展開となるというよりは、それぞれが、それぞれの幸せを見つけていくささやかなハッピーエンドを目指しながら、生方美久ならではの丁寧にキャストを描いていく展開にこそこのドラマの魅力があると思っている。その意味で、このドラマは“ながら見”が出来ないドラマだ。ワンシーンごとに細かい心の機微が描かれていくので、本当に深いところまで楽しむにはじっくりと目を離さずドラマの世界観に没頭するのが一番おススメの鑑賞法だ。
僕は多部未華子が昔から結構好きで、彼女が主演するドラマは殆ど見ている。特に『ツバキ文具店』は好きだった。元々彼女は演技に定評があったが、ここ数年で特に女優としての魅力が増してキレイになったと思う。そして今田美桜は、浜辺美波、橋本環奈と並んで僕が最近最もお気に入りの若手女優で、ドラマ『悪女(わる)』もかなり面白かった。松下洸平もなかなか爽やかなで、『最愛』も記憶に新しいが、僕は朝ドラ『スカーレット』で見て以来結構好きな俳優だ。神尾楓珠も今注目の人気若手俳優で、最近では『真夏のシンデレラ』にも出演したばかり。このフレッシュで絶妙な“クアトロ主演“キャスティングがこのドラマの面白さである。しかも、同じ年代の４人というわけではなく、40代、30代の男女４人という設定も、男女の間に友情は成立するか、というテーマという意味で、年齢差なども含めてどう展開していくのかが興味深い。何人かの男女がグループで色々と胸の内を語っていくという意味では、映画『Breakfast Club』を思い出してしまったが、ある意味日本版・令和版の『Breakfast Club』と言えるのかもしれない。
『silent』でもヒゲダンが歌う主題歌『subtitle』が感動を呼び大ヒットしたが、今回は藤井風が書き下ろした『花』が素晴らしく、主題歌を歌うアーティストの選定も見事である。これから主題歌と共に、ドラマの行方を楽しみに12月まで楽しみたい！
