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【O2-伝説3】セラミックス12CaO・7Al2O3結晶中のO2-イオン

2012-08-11 16:01:01 | ESR

 1992年、著者と山内は「素材のESR評価法」(アイピーシー)と題する単行本を発行した。その中の一章を細野先生に執筆して頂いた。その題目が3.5 セラミックスで、3.5.3が「12CaO・7Al2O3結晶中の超酸化物イオン」であった。その重要性に鑑み、その内容を紹介する。

 

12CaO・7Al2O3結晶(以下C12A7 と略記 )はアルミナセメントの主成分であること、また、その特異的構造のために、古くからセメント化学や結晶学の分野で研究されてきた。結晶構造を図1に示す。ゼオライトとと同じように格子内に空隙が存在し、66個の酸素のうち、2個は空隙内に統計的に分布すると考えられていた。

 

 

Cao7al2o3_001

 

図1 12CaO・7Al23結晶の構造模式図。O(3)が”フリー酸素。

 

 この結晶相は通常の雰囲気下では安定相で、CaCO3とAl(OH)3を量比に混合して1000~1400℃に加熱すれば容易に生成するが、乾燥した窒素下などの、酸素を含まない雰囲気下では生成しない。高純度原料を用いて、空気中で加熱することにより得られたC12A7結晶は放射線などを照射しないでも、図2のように非常にESR信号を与える。積分強度から求めたスピン濃度は1E19/gにも達する。

 

Cao7al2o3_001_6

 

図2 固相反応で合成した12CaO・7Al2O3結晶を77Kで測定したESRスペクトル。左)Xバンド、右)Kバンド。

 

 77KでESRを測定すると、図2に示したように典型的な3方異方性線形になる、単純なパウダーパターンで再現できる。複数の実験事実より、酸素関連中心O2-イオンと結論された。

 

Cao7al2o3_001_8

 

図3 ESRスペクトルの温度変化。左肩の数値は絶対温度。破線はローレンツ関数を表す。140K以上では線形はローレンツになる。結論としてフリーの酸素が還元されて、O2-イオンとして空隙内(図1 O(3)参照)に存在していると結論された。

 

 140K以上では線形はローレンツになる。結論としてフリーの酸素が還元されて、O2-イオンとして空隙内(図1O(3)参照)に存在していると結論された。

 

 C12A7は新しい局面を迎えている。セメントが燃料電池になり、しかも高温超伝導体になる!これらすべてO2-イオンに起因する。ポーリングに始まったO2-イオン伝説は再び新しい伝説を生み出す。

 

ここに、Inorg.Chem.に掲載された論文のAbstractを紹介する。

 

Inorg.Chem. 26,1192(1987):

 

Inorganic_chemhosono

 

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