幕末掃苔屋 公式ブログ

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猫の島の東京巡査(前編)

2011年04月06日 | 侍たちの警視庁

山口県柳井市の南約20キロの伊予灘に浮かぶ平群島(へいぐんとう)に行ってきました。
平群島は、鎌倉時代に木曽義仲の子・平栗丸(へぐりまる)が落ち延び、幼くして亡くなったことからそう名付けられたと伝えられています。
平群島にはタコやミカンなどの特産品がありますが、これといった観光名所もなく、古き良き雰囲気が残る小さな島です。

柳井港よりフェリー「へぐり」に乗り、出港します。
平群島を訪れた目的は、西南戦争で殉職した警視官の掃苔です。
平群島に警視官の墓があるということは、数年前にインターネットで知りました。
しかし掲載されていたのは「平群島に東京巡査の墓がある」という情報のみで、「東京巡査」がいつ頃の何者なのかはわかりませんでした。
「東京巡査」という呼ばれかたからして西南戦争時の警視庁巡査ではないかと予想しましたが、「柳井市平群島史」や「柳井市史」を調べてみてもわからず、そのまま数年間放置していました。
しかしこの度急に気になりだし柳井市に問い合わせてみたところ、平群島の歴史に詳しい伊藤先生を紹介してもらいました。
さっそく伊藤先生に「東京巡査」について電話でお尋ねしたところ、予想した通り西南戦争で殉職した警視官であることがわかりました。
その後、伊藤先生が送ってくださった史料のおかげで、「東京巡査」の氏名が長井能道といい、西南戦争では別働第三旅団警視局所属三等巡査として出征し、鹿児島県大隅曽於郡荒磯岳で殉職したことがわかりました。
私は大の墓好きですが離島好きでもあり、平群島の「東京巡査」こと長井能道を掃苔したい気持ちは日に日に高まりました。
そしてこの度、念願だった平群島を訪れることができました。

柳井港を出港して約一時間で平群西に到着しました。
船を降りるなり、目の前にのっそりと猫が現れました。
猫の多い島だとは聞いていましたが、船着き場を見渡すといたるところに猫がいます。
フェリーが去り波の治まった静かな港では、茶飲み話をしているおばあちゃんたちの笑い声と猫の鳴き声とウミネコの鳴き声だけが聞こえます。
「東京巡査」こと長井能道の墓がある墓地は港から徒歩10分ほどですが、その道のりで二十頭近くの猫を見かけました。
猫は逃げもしませんし、寄ってくることもありません。
皆、自由気ままに行動しています。
のどかとはこういう処のことをいうものかと感じました。

伊藤先生から墓の形を教えてもらっていたため、墓地に着いてすぐに目指す墓を見つけることができました。
石柵に囲まれた立派な墓で、正面には「東京三等巡査 長井能道墓」と彫られています。
墓の周りにはスイセンの花がたくさん咲いていて、良い香りがしました。

つづく

※写真は平群島で出会った猫