ビター☆チョコ

店じまい後も変わらずご訪問ありがとう。
新居をかまえましたので
お近くにお越しの際はお寄りくださいませ。

ヒストリー オブ バイオレンス

2006-10-12 | 洋画【は】行



トム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)は弁護士の妻エディ(マリア・ベロ)と二人の子供とささやかだが幸せな毎日を送っていた。
ある日、トムが経営するダイナーに二人組みの強盗が押し入る。
従業員と客を守るために、トムは強盗の銃を奪い二人を射殺してしまう。
この事件がテレビで大々的に放送され、トムは一躍町のヒーローになってしまう。
そんなトムを訪ねて怪しげな男(エド・ハリス)がやってくる。
フォガティと名乗る男はトムをジョーイと呼び、トムの暗い過去を匂わせるような話をする。
執拗に付きまとうフォガティから、子供と夫を守ろうとするエディに
「どうしてあんなに人を殺すのがうまいのか、ジョーイに聞いてみろ。」とフォガティは言うのだった。


驚くほど淡々と日常生活のように行われる暴力。
思わず目を背けたくなるような暴力。
暴力は連鎖し、新たな暴力を生んでいく。

人はどんな時に暴力を使うのだろう。
自分を守るため。誰かを守るため。相手が憎かったから。
いろいろな場合があるだろう。やむにやまれず暴力に走るということもあるだろう。
でももし、その暴力を自分の夫が過去に仕事にしていたらどうだろう。
夫の過去を知ったとき、妻や子供は受け入れることが出来るのだろうか。

子供と夫婦では違うのだろうと思う。
子供はやはり「血」で繋がってるから、父の過去に恐れを抱きつつも受け入れることが出来る・・というか受け入れざるをえないのではないだろうか。
夫婦は元々は他人。
一瞬でも信頼が崩れたら、やり直すことは難しいのではないだろうか。
しかも夫の暴力がほんの少しでも自分に向けられた瞬間があったとしたら、その恐怖がずっと頭から離れないような気がする。

家庭を守るために避けられない戦いに挑んだトムは、戦いに勝ち抜いて家に戻ってくる。
疲れきって帰ってきたトムの表情は静かだけど、元の田舎のダイナーの店主。には見えない。
ドアを開けて部屋に入ってきたトムを見つめるエディの目も、ガラス越しに他人を見ているような冷たさを感じる。
どんな暴力シーンよりも緊張した瞬間だった。

このあと家族はどうなるのか。
すべて観客に委ねられた形で終わってしまう。


1時間半という短い時間にいろんなことを考えさせられた映画だった。
無駄がなく密度の濃い1時間半だった。
「暴力」を描いてはいたけれど、その底には「夫婦の信頼」についても考えさせるものがあったと思う。

トムはアラゴルンと同じぐらい無口だったけど、絶対アラゴルンより強い。
強すぎる夫は家庭の中では脅威になる。