ダニー(リバー・フェニックス)の両親は反戦運動の活動家で、15年間もテロリストとしてFBIに指名手配されている。
半年ごとに髪の色と名前を変え、家族はアメリカ各地を転々とする。
ダニーが17歳になったとき家族はニュージャージーの田舎町に滞在することになる。
ダニーはそこで音楽教師のフィリップスにピアノの才能を見出され、フィリップスの娘ローナ(マーサ・プリンプトン)と恋に落ちる。
両親に言い出せないままフィリップスの薦めるジュリアード音楽院のオーディションを受けるダニー。
オーディションは成功したもののそれでも両親には言い出せない。
大学に進学するということは指名手配中の両親と離れ離れになってもう2度と会えなくなるからなのだ。
ダニーの苦悩を知った母のアニー(クリスティン・ラーチ)は15年間会うことのなかった自分の両親にダニーを託す決心をする。
大反対する父親(ジャド・ハーシュ)。
一家の中に重苦しい空気が流れる。
そんな矢先、一家に危機が訪れ慌しく町を去らなければならなくなる。
特殊な環境ではあるけど愛に満ち溢れた家族。
外の世界とは交わってはならないから、その愛情はより濃く繋がりは強く、成長していくダニーを縛りつけようとする。
その愛情が分かるから、自分の本心を言い出せずに悩むダニー。
出口はどこにも無い。
そして母のアニーはかつて自分が両親に味わわせてしまった辛さを、今度は自分が味わうことになるのだ。
かなり昔、子供のお昼寝時間に観た映画だった。
世間的には立派な大人で、「おかあさん」と呼ばれる立場にはなったものの
いつまでたっても自分の「おかあさん」という立場に慣れることが出来ずに、
毎日がいっぱいいっぱいの頃だった。
ダニーのどこにも属さない、これからなににでもなれる若さと可能性が羨ましかった。
その時隣の部屋で眠っていた息子はダニーの年頃になり、
今の私は母のアニーに想いを重ねる。
必ず来る子供の旅立ちの時、それは遠いものではないはずだ。
そしてそれは延々と順番に繰り返され、そのたびにひとつの家族の新しい旅立ちが始まるのだろう。
映画の中のリバーを見るとき、なぜこんなに胸が痛くなるのだろう。
自分が「青春」という時期に感じていた、漠然とした不安や希望や苛立ちや喜びや、そういうものの気配がリバーの中にある。
そしてそんな気配をまとったまま時間を止めてしまったリバーは、現れるたびに遠く過ぎ去ってしまった「青春」の時の想いをほろ苦さとともに思い出させるのだ。
リバーの生い立ちと驚くほど似ているストーリー。
恋人との共演。
つい余計なことも気になったりするのだが、
映画の中のリバーはそんな勝手な思いなどはねつけて、強い輝きを放っている。
その輝きはいつまでも強く美しい。