浦久俊彦さんの書いた『フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか』(新潮新書)を読みましたが、それが面白かったので、同じ著者による『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト パガニーニ伝』を読みました。パガニーニの伝記は、日本人が書いたものとしては初めてだそうです。
(大まかな目次)
第1章 悪魔誕生
第2章 ナポレオン一族との奇縁
第3章 喝采と栄華の日々
第4章 悪魔に魂を奪われた音楽家たち
第5章 晩年と死
第6章 パガニーニ幽霊騒動
第7章 神秘の楽器ヴァイオリン
(感 想)
パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番、第2番は大好きな曲で、パガニーニ自体にも興味があったので、一気に読み通しました。全体には簡便にまとまったパガニーニの伝記ですが、加えて、パガニーニに影響を受けた音楽家やパガニーニが収集したヴァイオリンなどにまで言及があり、幅広い内容になっています。
ドラクロワの描いたパガニーニ像は、まさに悪魔といった感じですが、著者によると、それはパガニーニの営業戦略だったようです。市民層が台頭してきた当時の社会状況を踏まえて、パガニーニが初めてコンサートで大金を得た演奏者であったことが、納得のいくように記述してありました。
パガニーニの周辺を描いた第4章と第7章が、著者の知見が出ていてとりわけ印象に残りました。ツェルニーがパガニーニの演奏に感銘を受けて2曲も作曲していたり、ショパンが『パガニーニの思い出』というピアノ変奏曲を作り、さらにシューマン、リストらロマン派の大作曲家に影響を及ぼしていてすごさが納得できます。
パガニーニの収集したストラディヴァリのヴァイオリン2挺、ヴィオラ、チェロは「パガニーニ・クヮルテット」と言われ、1994年からは日本音楽財団が所有しているそうです。現在は、オーストリアのハーゲン・クヮルテットに貸与されているそうですが、日本との不思議な縁を感じます。
【パガニーニ作品の気に入っているCD】
パガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番」。イリヤ・カーラー(vn)、スティーヴン・ガンゼンハウザー指揮ポーランド国立放送交響楽団。(NAXOS)
パガニーニ「24のカプリース」。イリヤ・カーラー(vn)。(NAXOS)