安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

高木裕著「調律師、至高の音をつくる」(朝日選書)

2018-01-09 20:02:07 | 読書

年末年始休暇用に本を数冊借りてきました。あまり読めませんでしたが、中の一冊が面白かったのでブログに掲載します。著者の高木 裕(たかぎ ゆう)さんは、ピアノの調律師で、タカギクラヴィア株式会社代表取締役社長。自社のスタインウェイをコンサート会場に持ち込むことによって、一流ピアニストのコンサートをサポートしている方です。そういった仕事に関する興味深い話が書かれています。

   

目次は次のとおりです。

第1章 名器・スタインウェイ誕生の秘密
第2章 ピアノに命を吹き込む
第3章 コンサートチューナーの仕事
第4章 調律師の舞台裏
第5章 調律師は見た!ピアニストのほんとの腕前
第6章 日本のピアノ界事情

(感想など)

第1章では、導入も兼ねてピアノの構造の話から、なぜスタインウェイが有名なメーカーになったかが明らかにされます。著者は、29歳で渡米し、スタインウェイの工房で修業を積んでいますが、それらの経験から、自分で調整したスタインウェイを、自分自身でコンサートホールなどへ運ぶというスタイルを確立します。よりよい楽器で演奏会が行えるようにした画期的なスタイルで、このことにまず驚かされ、感心しました。

第2章の「ジャズとクラシックのピアノの世界の違い」では、『クラシックに行き詰ったからジャズの世界に入ろうという人がいますが、そんな簡単なものではありません。ジャズ、クラシックとそれぞれ別の才能に恵まれた人たちの世界です。どちらの世界もトップクラスのピアニストの演奏は同じように素晴らしく、感動します。』と書いてあり、その通りだと共感しました。

第5章の「天才ヴァイオリニストから学んだ小さい音」という箇所では、ギル・シャハムのサントリーホールにおけるコンサートのリハーサルで、ヴァイオリンのピアニシモがどんどん小さい音になっていき、それに合わせるピアノをどうしたらよいのだという場面が登場し、タッチの調整と、それを乗りこなすピアニストの江口玲さんの超絶技巧のことが手に汗握るように描かれていました。

自宅で調律師による調律を見ていても、仕事の中身はよくわかりません。そういう仕事の一端や、コンサートをサポートする調律師の世界が垣間見れて、ジャンルを問わず音楽や楽器に関心のある方なら面白く読める本です。