風のささやき 俳句のblog

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春の雨に 【詩】

2020年04月16日 | 
「春の雨に」

暖かくなり過ぎた街を
少し冷やそうとする
通り雨が一頻り降った

僕は鞄の中からそっと傘を取り出して
君との間にそっとかざす

小さすぎる傘の間からは
君の肩を濡らす一粒の雨
思った以上に冷たい雨に
君が首をすくめて僕と顔を見合わせる

その雨はある意味で幸せだ
君に気づいてもらえたから

たくさんの雨は傘にはじかれて
アスファルトの水溜りにたどり着く
それを押しつぶして走る車の群れは闇雲に急いで

ビルは高いところから濡れている
若葉を芽吹く街路樹の肌が艶やかになる
僕の靴も爪先の方から心細く冷たくなり
コーヒーを飲みながら窓の外を見上げる人々も
言葉を少し休めている

一頻りの雨が街にしっとり沁みこむ様に
僕の気持ちも何故だか潤い落ち着いて
ほっと君に気づかれぬほどの吐息をついている

早すぎる春の歩調を遅らせようとする
冷たい一頻りの雨に僕の心も濡れ
足元に咲く小さなタンポポに
気がついたりしている