Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

ラースと、その彼女

2018-01-20 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ラースと、その彼女
監督:クレイグ・ガレスピー
キャスト:ライアン・ゴズリング、エミリー・モーティマー、パトリシア・クラークソン、他
2007/アメリカ

イマージネーションを豊かに動かせば、いろんなことを考えさせてくれる映画だった。物語はほとんど知らないので(予告編で観ただけ)、前半のコミカルな会話や人物の表情は、愉快で軽快だった。初めは芝居かなと思っていたリアルドールのビアンカ紹介辺りまでは笑えたが、「あれ、精神が病んでる?」と思い始めたとたん、不安と恐怖と哀しみがジワーと沁み出てくる。

兄夫婦、会社の同僚、思いを寄せる女、教会の人、小さな街の人全て皆いい人ばかり。笑えるくらい、やり過ぎだよと思えるくらいいい人ばかり。しかししだいに笑うに笑えないシリアスな心の問題に迫っていく。物語の最終着地点はある程度想像できたが、ビアンカに想いを寄せ、自分の心の闇を覗く男の哀しみはボクには恐怖であり、不気味であり。

ラースの作り出した世界は何だったのか。ビアンカに求めたものは何だったのか。「ぬくもりのない人間」。しだいに狂気が混迷が深まるが、周りの人の支えの中から、ラースの眼に力強い表情が生まれていく。自分の作り出した世界からあらたに旅立つための儀式。自分の存在を全てさらけ出す勇気。

リアルドールの恋人?ダッチワイフを抱え込むのはそれなりに理解できても、兄弟が、周りのみんながラースの世界を生活の中に受け入れるのは、単なる優しさだけでは乗り越えられないものがある。優しさを突き抜けてさらに奥にあるものはなんだろう。

「救う」「救われる」
「謝る」「許す」
「受け入れる」「肯定する」
といったような、お互いの信頼と愛情があって成立するような人の繋がり方。
ある意味では宗教的世界のような気がした。

精神科医の説得力ある言葉がいい、
彼女の鋭く観察する視線がいい。
「全てをありのまま受け入れなさい。」

こんな素敵な言葉はない。

ライアン・ゴズリング、最近大活躍だなぁ。


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