Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

スラムドッグ$ミリオネア

2017-07-26 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★スラムドッグ$ミリオネア
監督:ダニー・ボイル
出演;デブ・パテル、フリーダ・ピント、マドゥル・ミッタル、他
2008/イギリス

英語名で「ボンベイ」と呼ばれていた街は、1995年に、現地語(マラーティー語)での名称にもとづく「ムンバイ」へと公式に変更された。インド最大の街であり、周辺の人口を合わせると1900万人にもなるという。多国籍企業の多くがこの街に拠点を置き、急激な経済発展をとげ、日々、変貌している街といわれる。が、街に住む人の半数近くはほぼスラム化した地域に生活しているという。とにかくインフラ整備が緊急の課題である。

インドへ行った人は必ず、この国の「混沌」について語ってくれる。この国の、「過密」というか、「濃密」さをうなされたように語ってくれる。同じアジアと一括りにされるが、ボクら「東アジア系」とは、文化の集積密度が明らかに違う。

この作品の主人公はこのスラムで生まれ、育ち、生きた男である。映画の中で描かれている「インド」は、当然、現実の社会とは違うであろうけど、びっくりするくらいの「貧困」であり、「混沌」であり、「対立」だった。

男の知識は全てが「生きた証」であり、その一つ一つの記憶が、ミリオネアの勝利へ導かれる。とても都合のいい脚本ではあるけれど、映画としては、誰にでも解りやすく、感情移入しやすい展開であり、鮮やかな救いが用意され、爽快感を与えてくれた。

ラストのダンスは、いかにもハリウッドと苦笑しながらも、いい気分に浸る事が出来た。劇場を出た時のこの「いい気分」とう感情は、相当の値打ちがある。

 


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リリィ、 はちみつ色の秘密

2017-07-25 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★リリィ、 はちみつ色の秘密
原題:The Secret Life of Bees(2008)
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド
2008/アメリカ

僕は毎朝、スプーン一杯のはちみつをいただきます。
はちみつファンです。

疲れている時は、はちみつのとろり甘さが効きます。国内産のはちみつは繊細なしっとりとした優しさを感じますが、外国産というか、欧米やオセアニア産は、濃厚な香りがして大地の優しさを感じさせます。はちみつ瓶の形やラベルもいろいろ個性的で癒し系デザインです。蜂蜜ショップはちょっとした癒し空間であり、街で出会うと、蜜に惹かれるように覗きます。

今回は「はちみつ色」というタイトルに惹かれて映画を観ました。 物語はアメリカ60年代初めの南部。有色人種の平等(ボクらアジア人も含みます)を求める公民権運動の激しい時代でした。 “「I have a dream.私には夢がある。いつか、過去の奴隷達の子孫と奴隷所有者の子孫が、一緒にすわる事ができるだろう。” これはキング牧師の有名な言葉ですが、当時は、一緒にレストランに入ったり、映画を観たりすることはできなかったという時代でした。映画の中でも、公民権を申請に行く黒人女性が暴力を受けたり、一緒に映画を観ただけで拘束されたりとちょっとびっくりするような場面があります。一瞬、キング牧師が写真で登場しました。(ありがとう!キング牧師)

映画の監督、脚本ジーナ・プリンスは黒人女性です。「公民権運動の時代」への共感を抱きながら、テーマは一人の少女の「自立」です。登場人物ひとりひとりの心情を丁寧にすくいあげていくきめ細やかな演出に心が洗われる想いでした。いつものことですが、女性監督、脚本の繊細さと母性愛表現の素晴らしさにはほとんど「ゆりかご」状態にさせられます。

物語のヒロインはもちろんリリィ役の14歳ダコダ・フャニングです。大きな黒い人たちに交じっても存在負けすることなく演技力で勝負できるのはすごいこと。表情はまだ幼さが残りますが、大女優の風格さへ漂っていました。

黒人ボートライト姉妹は「スマートさとキュートさ」ばかりか「気高さ」を感じました。オーガスト役のクィーン・ラティファの大らかさと威厳、ジューン役のアリシア・キーズのキュートな芸術性、メイ役のソフィ・オコネドーの繊細な表現力。三人の個性が際立っています。そしてメイド役のジェニフャー・ハドソンは強い意志力持つ女性。そんな彼女達がところどころでリズミカルな音楽センスをちらりと魅せてくれます。そこがこの映画の魅力の一つです。

濃厚なとろりとした大地の香りのするはちみつが恋しく想う映画でした。 みつばちが活躍するのは「花の季節」ですから、春から夏でしょうが、撮影が行われた季節は明らかに冬枯れの季節。花も緑もほとんどありません。森も枝ばかりの様子。冬の光が眩しいくらい注いでいましたが、映像は柔らかく感じ、いつかもう一度みたいなぁと思わせました。


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ウォール・ストリート

2017-07-24 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ウォール・ストリート
原題:WALL STREET:MONEY NEVER SLEEPS
監督:オリヴァー・ストーン
脚本:アラン・ローブ
キャスト:マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、キャリー・マリガン、他
2010/アメリカ


《バブルが人類の進化を促す》?

素晴らしく挑発的で刺激的な台詞である。
しかしだよ、
あれほど世界を震え上がらせた世界同時暴落を題材にしながら、
作品にはほとんど緊張感がないのである。
欲望と葛藤と落胆をもう少しえぐるような切れ味を期待したのに。

《腑抜けたホームドラマ》のような軽さだった。前作『ウォール街』(原題: Wall Street)は観ていない。制作は1987年。当時の日本はバブル崩壊へ向かってまっしぐらに踊りまくっていた。あまりの見苦しい狂乱ぶりに「こいつらアホか」と思っていたし、ましてやインサイダーで稼ぐ《ハスラー》には興味はなかった。マイケル・ダグラスはこの作品でアカデミー主演男優賞を受賞。一躍名を馳せる。

それから2年後の89年、あの《ブラック・レイン》は興奮して観た。大阪阪急梅田のちょっとレトロなあの通路を通るたびに、マイケル・ダグラスに立ち向かった松田優作の血相を変えた表情を思い出す。こんなところでバイクを飛ばすなんて、よくも思いついたもんだと呆れるくらい。大阪の経済力にまだまだ魅力があった時代である。そしてその後バブルは大きく弾け吹っ飛んだ。

さて、そしてさらにあの頃から大小いくつのバブルがはじけたのか。そのたびにバブルは人類の進化を促したというのか?


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落下の王国

2017-07-24 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★落下の王国
原題:The Fall
監督:ターセム・シン
2006インド/イギリス/アメリカ

世界遺産を舞台に石岡瑛子さんの衣装デザインが栄える。こんな美しいシーンをたっぷり観れるなんて余りにも幸せ過ぎる。万華鏡のごとく次から次へと極彩色シーンの連続。望遠レンズの解像度が高く鮮やか、透明感溢れる。あっと息を飲み込む。じーっとうっとり見つめる。場面の変わる瞬間の一コマがとても繊細に計算され、スピード感がある。

「次はどうなるの?」期待感が沸き上がる。
光と闇の扱いがとてもすばらい。病院の中は、レンブラントの怪しい光の絵画のような、フェルメールの静謐な光の絵画のような。黒の美しさはゴヤの絵画のよう。

スタントマン、ロイの憂鬱が良く解る。あり地獄のようなまさに「落下の地獄」。「落下のイメージ」が残酷で鮮やかでそして美しい。恐怖とプレッシャーと戦いながら、しかし、ラストは素晴らしい「落下の天国」へと変わる。なんとも悩ましいくらいに美しい物語。




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僕達急行 A列車で行こう

2017-07-22 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★僕達急行 A列車で行こう
監督:森田芳光
キャスト:松山ケンイチ、瑛太、貫地谷しほり、村川絵梨、ピエール瀧、星野知子、伊東ゆかり、笹野高史、伊武雅刀、西岡徳馬、松坂慶子、他
2011/日本

これは嬉しい作品です。
これぞ《適温適湿敵風》と心地よく感じ、
それにしても《絶妙に中途半端な作品やなァ》とにんまりと愉しむ。
現代的話題を扱っているんですが、
これまた《絶妙に古風な感覚》も味わせてくれます。
《昭和サラリーマン処世術物語》みたいな雰囲気も。

出てくる人皆それなりにノリがいい、
笑顔をいっぱい振りまきながら楽しそうに演じてくれる。
これはひとつの世界であると思います。
見ているこちらもそのペースに合わせやすい。
キャラが別の方を向いている松山ケンイチと翔太という妙な取り合わせに、
初めは不自然な居心地の悪さを感じたが、
終いにはそれなりに馴染んでいたようです。
これって、《シリーズ物》になりそうだけど。
でも残念です。
森田監督、面白い物を残してくれました。
ありがとうございます。


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檸檬のころ

2017-07-22 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★檸檬のころ
原作者 豊島ミホ
監督:岩田ユキ
出演: 榮倉奈々、谷村美月、柄本佑、石田法嗣、林直次郎 、他
2007/日本

登場人物それぞれの旅立ちの思いが綴られ、
重層的に物語が展開され行く。
きらきら輝く一瞬の思いが、
女性監督らしい繊細な視線で表現されていた。
十代の演技力ある人たちが、
揺れ動く感情を自分に重ね合わせるように自然に表現。
映像にもどこか柔らかなセピア色のフィルターがかかっているようで、
微妙な感情をうまく演出。
また、
監督のイラストレーターとしての経験が生きているのだろうか、
それぞれの場面場面がまさに
《映画を見ているような美しい構成》。

きらきら輝き、
苦しい思いを重ねる時代は誰にでもあるんだ。
そして「届かない思いを抱えながら大人になる。」
神経の行き届いた丁寧な作品作りだった。


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奈良美智との旅の記録

2017-07-21 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★奈良美智との旅の記録

まだ奈良さんが、海外にいるとき、彼の作品が美術雑誌で紹介された。初めて見た時は「何て孤独で、自由で、そして何て自閉的雰囲気の女の子なんだろう。」作家自身の精神状態がとても気になった。海の外に出て、このような女の子を描かなければならない理由がどこにあるんだと。ところがその後、あれよあれよと女性の人気を集め、帰国時、彼はすでにスターになっていた。

映画の中で、大作の制作過程が紹介されている。白い画面に直接平筆で描き込み。描いては消し描いては消しの作業を繰り返しながら完成させていくスタイルは、非常に絵画的であった。イラスト的作品と見えていたのだが、思考錯誤の制作過程を見ていると、彼はまさに画家なんだなと思う。映画を見て見直ししたところです。

「人との関わりの中で、優しく柔らかい表情の今の絵が描けるようになってきた。でも、以前のような絵は描けなくなった。絵としていいかどうかわからないが、常に絵は変わっていくもの」と。

「人の認知度は絶頂期かもしれないが、自分の中では、これで終わっていない。まだ、何かやれる。 一度思いっきりやりきって、そして空っぽにして、そしてまた次にむかってやる。」と
奈良さん、タバコの吸い過ぎだぞ。タバコ吸ってる姿ばかりじゃないか。スタッフも愛好者か。

宮崎あおいさんのナレーションがこの映画の雰囲気にぴったりでした。

 


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ハチミツとクローバー 

2017-07-20 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★ハチミツとクローバー 
監督:高田雅博
出演:櫻井翔、蒼井優、伊勢谷友介、加瀬亮、関めぐみ、他
2006/日本

「草原を作るには、ハチミツとクローバーが必要である」映画の冒頭に流れる素敵なフレーズです。ご存知人気コミックの実写版映画。

「私はあなたが好きです」というたったこの一言を伝えるために、何と多くの時間とドラマが必要なことか。人生はその短い一言のためにあると信じて疑わない物語です。映画の中で、中村獅童が「いいなぁ若者は」という場面があり、素直に「ほんとにいいなぁ若者は、青春は」とうなづいてしまいます。

まぁ、そういう映画です。




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クローズド・ノート

2017-07-20 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★クローズド・ノート
原作:雫井脩介
監督:行定勲

行定勲監督作品ということで、どんな手法を使うか興味を持ち見に行く。映画の中に感情移入する以前に彼の魅せ方が気になってしかたがない。瑞々しい美しい場面の継ぎはぎで物語は構成されている。そのことだけに神経が集中しているようで、コマーシャルフイルムのように感じた。この映画はほんとに彼の描きたかった映画なのだろうか。

舞台となる街に京都の風景があちこち登場し、日頃生活している景色が映画の世界として表現されると不思議な感じがする。京都の街の美しい場面をちゃっかり自分の世界に取り込んでいる。光がきらきらする季節はほんとに美しく、その中にいると、いろんなファンタジーを思い描くことが多い。時には、この映画のような物語も。

この映画はそんなファンタジーな場面のパッチワークのような作品。そこが監督の意図した表現なのだろうが、ちょっぴり鼻につく。しかし脚本はとてもしっかりしているように感じた。ミステリー仕立てなのも映像向き。この種の小説はめったに読まないが、今回は原作を読んでみたいという思いに駆られてしまった。


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ツナグ

2017-07-19 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★ツナグ
監督:平川 雄一朗
出演:松坂桃李、樹木希林、佐藤隆太、桐谷美玲、橋本愛、大野いと、遠藤憲一、別所哲也、本上まなみ、浅田美代子、八千草薫、仲代達也、他

それぞれの再会の物語が見せ所です。

一話は《親子の慈しみの物語》。
八千草薫の慈しみの表情に泣けます。

二話は《女生徒の嫉妬とライバル心メラメラの物語》。
これはちょっと怖いお話でした。
橋本愛、大野いとの二人のシーンはかなり恐怖。
二人の葛藤の様子は白眉。
林檎のかわを向くナイフの存在が緊張を高めます。
またまだまだ10代だという橋本愛の眼力ある妖艶な演技力に惹きこまれ、
この子はいったいこれからどれだけ成長するんだろうかと恐ろしくなるくらい。

三話は《恋人同志の再会の物語》。
桐谷美玲の突き抜けた笑顔が見せどころ。

オムニバスに展開するので、
それぞれの《再会の物語》を観るわけですが、
ホテルには誰一人いないという設定はやはり不気味でホラーっぽいっす。
何処で撮影したんでしょうか、
とても上品でノスタルジックなホテルでした。

再会物語はなかなか秀悦ですが、
樹木希林と松坂桃李の二人もふーと力が抜けて良いコンビでした。
食事シーンがいくつもありますが美味しそうでいいですよ。
樹木希林、あれは演技というより、普段の姿でしょうね。

見終えた後、いくつか説明不足ですので解りにくい設定もあります。
《ツナグ》という家業のこと、祖母と孫の関係等々。
原作読んでみようかと。


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西本願寺さんの「埋め木」

2017-07-18 | 散策

西本願寺へ行ってきました。


西本願寺さんの「埋め木」です。
亀裂や節穴を木片で埋めた修復跡。
国宝阿弥陀堂、御影堂の縁側や廊下で見つけることができます。
宮大工さんの遊び心でしょうか?

 

 

富士山にはびっくり。
周りの模様もすばらしい。 


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蜂蜜

2017-07-17 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★蜂蜜
原題:Bal
監督:セミフ・カプランオール監督
キャスト:ボラ・アルタシュ、エルダル・ベシクチオール、トゥリン・オゼン、他
2010/トルコ・独

第60回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品。
説明的な要素を一切つけない。
会話もほとんどなし。
風や樹々のざわめきや、靴の音など、必要最小限の音。
夢と現実の境界を曖昧にしながら、少年の自立への心の葛藤を追いかける。
少年時代は自然の音を確実に鮮やかに聞き分ける。
映画を観ながら、《ミツバチのささやき》を思い出した。
少年の表情もよく似ていたような印象。
水に映る満月のシーンが一層イメージをダブらせた。

ラスト、不覚にも、少年と一緒につい眼をつぶってしまった。
気がついたら、エンドロール。


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ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界

2017-07-17 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界
原題:Ginger & Rosa
監督:サリー・ポッター
出演:エル・ファニング、アリス・イングラート、クリスティーナ・ヘンドリックス、アネット・ベニング、アレッサンドロ・ニボラ、他
2012/イギリス・デンマーク・カナダ・クロアチア合作

原題は、《Ginger & Rosa》となっているので、二人の少女の物語ではあるが、映画は、ジンジャーの心の移ろい、成長、そして辿りついた《赦し》を見せる作品であるエル・ファニングの恐ろしいまでの演技力、素晴らしい表情に、思わず溜息がでる。この映画を撮った時が13歳というのに、ラストの《赦し》のポエムを綴るところは大女優の風格さへ漂わせている。
えらいこっちゃ!

90分という短い作品だが(
僕はこの長さが一番好きである)
ストーリィはしっかり出来ており、
興味深いモノが一杯詰まっていた。

オープニングは《広島への原爆投下シーン》。
あの不気味なきのこ雲がもくもくと出てきて、
そのシーンと時を同じくして、
ジンジャーとローザが生まれる。

時間は動き、1962年。
東西冷戦のもっともシンボリックな事件の《キューバ危機》の頃。
二人の少女は、高校時代の青春を謳歌していた。
と同時に、ラジオから流れる核戦争の危機に、
《何とかしなきゃー》
と少しづつ社会に眼を向けながら自ら成長のスピードを早める。
この時代の危機感みたいなものを上手く作品に取り入れ、
家庭の問題、親子の問題も織り交ぜ、
少女から大人へと成長する姿を
内面的に、社会的に描こうとしていている。
女性監督ならではの繊細感がよく出ている。
短い時間の中に一人の人間の葛藤をギュッと詰め込んでいるので、
泡立たしく描かれている感はするが、
ポイントを押さえているような気がした。

ラスト、友人の裏切り、父親のだらしなさに
《不安のどん底に落ちてゆく表情》が凄い。
精神の崩壊的表情をかなりアップして魅せてくれた。
この子の女優としての将来も凄いと思わせた。

ラストの《赦し》のシーン。
神の力を頼らず、自ら《赦し》へと向かう姿に、
この作品のテーマを思った。
《ジンジャーの朝》は、次への一歩への朝である。

折しも、ケネディ暗殺から50年ということで、
キューバ危機の頃に思いを馳せる。
核戦争の不安から明日への希望も確かでない頃のこと。
ジンジャーの青春の頃。

今も核の恐怖は有る。
核兵器の拡散、原発事故の事後処理、核廃棄物の処理など、課題は複雑化している。
潜在的恐怖は拡大しているのではないかとさへ思うのに、
《核未来へのポジティブ思考》が優先しているような気がするんだが。


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バーレスク

2017-07-16 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★バーレスク
監督:スティーヴ・アンティン
キャスト:クリスティーナ・アギレラ 、シェール、クリスティン・ベル、他
2010/アメリカ
    
噂のミュージカルを観てきた。
こういう映画は文句なしにたまらんくらい好きだ。
クリスティーナ・アギレラとシェールの
圧倒的迫力にとろりんこである。

ちなみに、《バーレスク》とは
バーレスク(英語および仏語: Burlesque)とは、第一義的には、シェイクスピア等先行する文芸作品をパロディ化した茶番であり、一般的には、性的な笑い(艶笑、軽い下ネタの類い)のコントや、ヌードに至らない女性のお色気を強調した踊りを含めたショーのこと。(ウィキペディアより)

映画もまさに《バーレスク》そのもの、非常に明快爽快。このエネルギッシュなスッキリ感が美しい。唄って踊って笑いがあってそしてちょっぴりお色気。これぞ「ザッツ・エンターテイメント」。

クリスティーナ・アギレラ。小柄なナイスバディにキュートな雰囲気を持つが、いざ舞台に立つと信じられないくらいのパワフルな声で観客を釘付け。グラミー賞を4回も獲得するなど歌唱力の凄さは実証済み、しかし映画の中でここまで輝くとは驚きである。デビュー以来、いろんな話題を提供する。ゲイフレンドリーとしても有名とか。実はこの映画の中でも、さりげなく援護している。しっかり笑いをとりながらもコッテリ感がなくて爽やさを印象づけ、しかし露出度もそれなりに決めてる。歌い手としては凄い経歴の持ち主だが、映画の中ではとてもフレッシュである。一児のママさん。

シュール。見覚えあるんだがなかなか引っ張り出せない。彼女の歌も凄い。「私は諦めない」執念の歌声だった。アメリカらしいサクセスストーリィだが、うっとりした心地良さを感じた。


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脳内ニューヨーク

2017-07-15 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★脳内ニューヨーク
原題:SYNECDOCHE, NEW YORK
監督:チャーリー・カウフマン
キャスト:フィリップ・シーモア・ホフマン、サマンサ・モートン、:ミシェル・ウィリアムズ、他
2008/アメリカ

最初の10分で面白い映画だとわかる。だけど見終わると混乱する。
原題を辞書で引く。もう一度観たくなる。(タナダユキ)  
脳内ニューヨークHP より

はじめから、これは少し警戒せなあかんなぁと思わせてくれました。
家族の会話が普通ではない、病理的だ
夫婦の会話が普通でない、愛がない

妻の作品は、拡大鏡で覗くスタイルです。
美術館では体験したことはありますが、
個展形式はないので、興味は大いにあります

予想通りだんだんおかしい世界に入り込んでいってしまい、見ているこちらはただつき合うしかないなと半分諦めてしまいました。劇場で見ているんだから、巻き戻しなんてできる訳でなし、ようし、こうなったら、裏の裏を読んでやるという勝負根性丸出しで、最後までつき合いました。でも結局、オチはなし。なんすかー、これは。

人間の生きることの混迷をただ混迷として描いた。混迷の終局は「死」ですが、映画は一人の男の「死」で終わりました。

自分を演じる役者さんと私生活が混同し、時間が行ったり来たり。
主人公同様、みているこちらも混乱しておろおろしてしまう。

この時間の迷路のような作品をつくった男はこの人です。
チャーリー・カウフマン

「私は、人がどんな風に作品を受け止めるかということについては考えないんだ。未知のことにチャレンジして、経験したことのないものをやっている」

「家で脚本を書いていると、とても閉鎖的で孤独で、時々、悪夢を見ているような気がする。」

彼もりっぱなアーティストです。
とにかくオリジナルなものを作ろうという意気込みはよーく伝わったよ。
おかげでいまだに混乱しています。

 


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