Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

無常という名の病

2017-04-25 | 

本を読んだ。

★無常という名の病

山折さんのお話は京都では2〜3回聴いています。宗教学者が語る美については非常に関心がありました。僕自身が浄土教の世界で育ちましたので、僕にとってはほんとに親しみやすいものです。

この本は、山折さんの講演集みたいなものです。眼の前には聴衆がいますから、飽きないように、時には少しオーバー気味に話を展開しながら、自説を述べています。九つの講演を載せていますが、貫かれているのは、「共生と共死の思想」。連綿として受け継がれてきたとされる自然観や死生感の底に流れる無常観。

寂寥の感覚を早くから知り、まさに放蕩すること、美を享楽することが人生の最大の夢と思った瞬間から僕の混沌がはじまりました。そのことの説明を自分ではうまく語れなかったことが、さらに混沌に拍車をかけての現在です。

山折さんはうまく説明しています。少しずつながら自分の思いと重ねてまとめてみたくなりました。混沌にそれなりのメドをつけたいと思い始めました。

宗教学者山折さんは語る「叙情について」

詩歌とは、呪うべき寂寥の中で生み出されるものだ、まさにそういう孤独地獄の中で紡ぎ出される文学と思うようになり、そのような伝統の中にこそ、叙情性の源流が潜んでいるんいるのではないか。と同時に、そういう孤独な人間を救済する仏教の思想との葛藤のなかにおいても、それは存在するのではないか、つまり、文学と宗教の葛藤の中で生み出されるドラマ、その中にもう一つの叙情性の流れというものが宿るのではないか。

前半部分は自分の中では理解していたが、仏教思想との葛藤という考え方は、僕には新鮮だった。

山折さんが語る「人の評価について」

一つは知性です。インテリジェンス。
二番目はやくざ精神つまり冒険精神。
三番目は、恥じらいを知る心、含羞。
その三つの基準にどのくらいのパーセンテージを割り当てるか。

なるほど、もっともです。
話の中で紹介している句が面白い。良寛さんの二句。
かたみとて 何か残さん 春は花   
うらを見せ、おもてを見せて、散るもみじ  

仙崖さんの
古池や、芭蕉飛び込む 水の音

これもいいですよ、高浜虚子さんの
虚子ひとり 銀河の中を 西へ行く

うーむ、ある程度は気持ちがすっきりしました。


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セカイからもっと近くに 現実から切り離された文学の諸問題

2017-04-23 | 

本を読んだ。

★セカイからもっと近くに 現実から切り離された文学の諸問題
著者:東浩紀
出版社:東京創元社 (2013/12)

ぼくたちはどうやら、想像力と現実、虚構と現実、、文学と社会が切り離された時代に生きています。文学が社会に与える影響はかってなく小さく、逆に社会が文学に影響を与える影響もかってなく少ない。(略) 本書は、以上のような状況認識のもとで、それでも想像力と現実を、あるいは文学と社会を、それぞれの方法で再縫合しようと試みてしまっている四人の作家を選び、主要作品の読解を試みた本です(「はじめに」より)

第一章 新井素子と家族の問題
第二章 法月綸太郎と恋愛の問題
第三章 押井守とループの問題
第四章 小松左京と未来の問題

押井守と小松左京に関する評論は非情に興味があった。
そもそもこの二人を文学評論として取り上げること自体が驚きである。
押井守はアニメ映像作家であるし、
小松左京は今はほとんど読まれない忘れ去られたSF作家である。
現代作家論から、この二人に辿り着くという設定は、
多少無理のある言葉遊び的要素もないではないが、
簡潔明瞭で読んで面白い。
面白いということは意味のあることだ。
東浩紀は小説家に転身したらしいので、彼の文学も読んでみよう。


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世界征服は可能か?

2017-04-22 | 

本を読んだ。

★世界征服は可能か?
著者:岡田斗司夫
出版社:筑摩書房

論理の展開がちょっとめちゃくちゃではあるが、読んでいて面白い。世の中には面白い視点を持っている人がいるもんだ。「世界征服」なんて、めんどくさいことだとわかっているから、僕は考えもしないが、仮にそのような野望を抱いた場合、どんなめんどいことやリスクを背負うかを真面目に検証している。読んでいるうちに、やっぱりめんどいことだと確信する。

ヒットラーがあまりにも能力がありすぎ、全てを自分でこなすタイプだったそうな。おかげで働きすぎて過労死寸前だったらしいとか。
織田信長の経済自由化政策により、灯油が自由に売買され、安土城下の町は、夜でも灯油の灯で明るく、信長は天守閣に上り明るい城下の町を眺望したであろうとか。男の野望者はハーレムを作りたがるようだが、女の野望者の場合は、多数より一人の男にこだわるのではないかとか。などなど、結構、豆知識がちりばめられている。

でも、結局、「世界征服」は思ったよりは楽しいことでなく、苦労とリスクが多すぎるということらしい。また、仮に成就しても体制維持に莫大な費用と知恵と労力が必要であり、心労が絶えない馬鹿馬鹿しいことだということになる。でもその野望を抱いた者は歴史上次から次と登場してきたわけだから、「世界征服」は果てしないロマンの一つである。???。

 


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クリムト

2017-04-18 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★クリムト
原題:Klimt
監督:ラウル・ルイス
キャスト:ジョン・マルコビッチ、ベロニカ・フェレ、サフロン・バロウズ、スティーブン・ディレイン、他
2006/イギリス・オーストリア・フランス合作

公開時に劇場で観ている。
夢幻のような迷宮世界をもう一度覗いてみようとDVDで観る。

まずは作品内容解説。
Movie Walkerのお力を拝借
 ラウル・ルイス監督の「クリムト」は、グスタフ・クリムトを題材にしているが、この画家の生涯が時系列に沿って描かれるような伝記映画ではない。映画の導入部でクリムトは死の床にあり、彼の脳裏には過去の出来事が奇妙な夢のように甦ってくる。ウィーン社交界の花形としてたくさんの女たちに囲まれるクリムトは、パリ万博で“宿命の女”レアに出会い、クリムトの絵の背景に描かれた死神を想起させる謎の男に導かれるように、美しい女優の幻影に溺れていく。
 この映画では、鏡のイメージにルイスのこだわりが表れている。鏡は過去への入口となる。クリムトは、映像作家メリエスが作った偽のニュース映画で最初にレアと出会い、虚構を模倣するように生身のレアと対面する。そしてその晩、ある屋敷で彼女と再会する時には、マジックミラーの向こう側で彼自身がクリムトを演じ、途中で入れ替わる女たちの中にレアという幻影を追い求めている。
 鏡のイメージが作り上げる迷宮のなかでは、現実と幻想、本物と偽物が入れ替わり、その境界が消え去り、現実や本物は意味を失う。クリムトは、自己のアイデンティティすら揺らぐ迷宮を彷徨い、本物の解放としての死に至るのだ。

ということで、この映画はクリムトという画家の伝記物ではない。
人物伝というより、《クリムトの画風》を映画化したもの。
甘美で優美で退廃でそして難解で限りなく美しい。

冒頭、エゴンシーレが病床のクリムトを見舞いに来る。
説明しなくても、顔をみれば《シーレである》。
雰囲気、動作、全てに可笑しいくらい《シーレである》。

シーレとクリムトが共同でデッサンをするシーンがある。
クリムト、《まず私が書き始めよう》。
そこへシーレが描き加える。
ゾクっ!

アトリエで描くクリムトが写される。
魅惑的なヌードのモデル3〜4人が行ったり来たり。
もちろんこのくらいは無修正である。
目映いくらいに美しい、よって+15作品。
彼はモデルたちと一緒に暮らしていたようだ。
子ども達が生まれ、十数人一緒に暮らしていたこともあったようだ。
制作と私生活が混沌。
《愛と性と生と死》が混沌。
クリムトの絵画は自らの生活そのものである。

ラスト、弟子のシーレに看取られながら、生を終える。
迷宮世界に決着をつけるかのように。


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永遠の僕たち

2017-04-17 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★永遠の僕たち
原題:Restless
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ジェイソン・リュウ
撮影:ハリス・サビデス
音楽:ダニー・エルフマン
キャスト: ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、シュイラー・フィスク、ジェーン・アダムス、ルシア・ストラス、チン・ハン、他
2010/アメリカ

《生と死》について、若者たちに向けたメッセージ。
けっして遅すぎるわけではないが、できれば、
もっともっと若い時代に観たかった。
絶対に記念碑的な作品になったことだろう。
完璧に練られた完璧に美しい作品である。
ガス・ヴァン・サントの演出は繊細で、
ハリス・サヴィデスの撮影する自然光は美しく、
そしてダニー・エルフマンの音楽がアコースティックでロマン的。
そして何より、
ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮の3人の姿が瑞々しく描かれている。
アメリカでこういう映画がつくられたこと自体が不思議にさえ思う。

臨死体験の若い男と余命幾ばくもない若い女の切ない恋のお話。
ここに突然登場するのが、カミカゼ飛行士の加瀬くんの幽霊。
そして、ナガサキ原爆投下。
何の説明もないので、《あれまぁ、摩訶不思議?》と考えだすと、
このフィクションの世界に入り込めない。

しかし、幸せなことに、僕はすんなり受け入れることができた。
これは素晴らしい、よく考えたよく練られた物語だと感覚的に受け入れられた。

人にはそれぞれの生き方があるように、
人にはそれぞれの《死》に対する捉え方がある。
《死》はそれまで続いてきた《生》が突然停止したもの、続きは何も無い。

とは言いつつも、映画の中では、何かがあるような曖昧さで突然停止した。
その《曖昧さがビビッド》。
あの世のことは、所詮、誰にも伝えられないのです。

《この世に生きた証だけが永遠に残る》


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はじまりのうた

2017-04-16 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★はじまりのうた

『ONCE ダブリンの街角で』 のスタッフ制作という事で
ちょっと期待したのです。
思った感覚とは違いましたね。
よくもわるくもアメリカ映画でした。

ストリート音楽に対するナイーブな感覚はさすがでした。

 


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ドラゴン・タトゥーの女

2017-04-15 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ドラゴン・タトゥーの女
原題:The Girl with the Dragon Tattoo
原作:スティーグ・ラーソン
監督:デビッド・フィンチャー
撮影:ジェフ・クローネンウェス
音楽:トレント・レズナー、アティカス・ロス
キャスト:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、他
2011/アメリカ

原作《ミレニアム》とも、スウエーデン版《ミレニアム》とも違う、明らかに違う。フィンチャー監督のこの作品は、《ドラゴン・タトゥーの女》であって、タイトルには《ミレニアム》はつかない。原作の持つ《ミレニアム》の世界はほとんど描かず、ルーニー・マーラの《ドラゴン・タトゥーの女》に関心のほとんどを集中しているようでした。監督は《犯人探しの装置》を使いながら、ダニエル・クレイグの力を借り、ルーニー・マーラの輝きを少しずつ増すように演出する。それはそれは練りに練った編集力である。妥協を許さない表現意欲が美しい映像を生む。

敢えて、もう一度言おう、これは、スティーグ・ラーソンが描いた《ミレニアム》の《ドラゴン・タトゥーの女》ではなく、《デビッド・フィンチャーの女》である。それが《可愛い、妙に女の子っぽい》
このシーンがよかったぁ。(猟銃で撃たれた傷を手縫いするところ)
いたァー、けどいいなァー、(二人は互いに補完し合うことを覚える)

原作《ミレニアム》はやたら登場人物が多く、話があちこち飛びまくり、多彩な世界が描かれている。が、筆者スティーグ・ラーソンの狙いはまっすぐ《女性に対するDVの告発》《非道な闇の力の告発》に向けられていた。社会派雑誌ミレニアムに働くミカエルとDVの中生き抜いた天才ハッカーであるリスベットの二人の繋がりを軸に物語は展開するが、フィクションなのかノンなのかよくわからない、仕事中毒者スティーグ・ラーソンの真摯な手垢がいっぱい詰まり、非常にリアル感を感じるアナログ世界である。その世界を見事にビジュアル化したのが、スウェーデン版と言われる三部作の映画。ノオミ・ラパス演じるリスベットの風貌は衝撃的でした。そして今回の作品では、今までの物語をそっくり引き継ぎながらも、原作の持つ《社会派》小説、前作映画の《アナログ的》という映画作りに対抗して、編集に編集を重ねた徹底したそぎ落としの《デジタル化》映像という、《フィンチャー化》に魅力がある。フィンチャーという男は、《アナログ的な人間の営み》にはほとんど関心がないような気がする。必然的に人間の表情は《エイリアン化》する。

面白かった。物語は、新しい作者によって只今進行中。映画の次回作が待ち遠しい。

 


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台北ストーリー

2017-04-14 | chinema(アジア系映画)

 

★台北ストーリー
原題:青梅竹馬
監督:エドワード・ヤン
出演:ツァイ・チン、ホウ・シャオシェン、ウー・ニェンチェン、他
1985/台湾

エドワード・ヤン監督生誕70年(没後10年)というアニバーサリーで
デジタル修復で日本初公開。
その時に劇場で観た。

印象的なシーンの一部は観たことがある。
が、初めて観る作品だった。

80年代の台湾の状況の一端、
そうあくまで一端が映し出されている。
状況はこんなにも暗かったのだろうか?
男と女の焦燥感が妙にノスタルジックだった。

戒厳令解除前夜の台北の夜(1987年解除)の暗闇。
パソコンやスマホなどのデジタル機器のない時代の
今で言うアナログ時代の生活空気。
富士フイルムの電飾が暗闇に妖しく映える。

フイルム全盛の時代だった。


台北には2度行ったことがあるが、
夜の台北は日本の街と同じような雰囲気を感じさせる。

ぶらぶら散歩した。
また行きたくなった。


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ウォールフラワー

2017-04-14 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ウォールフラワー
原題:The Perks of Being a Wallflower
監督:スティーヴン・チョボスキー
出演:ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、メイ・ホイットマン、ディラン・マクダーモット、他
2012/アメリカ

スティーヴン・チョボスキー自らの原作(1999年にアメリカで発刊)を、脚本、監督として映画化したもの。この映画作品には、正直、感激しましたね。

映画作品として、ほぼ完璧に仕上がっていた。
成功の原因は、2つ。
まずは、監督が、文学的に成功した自らの原作を基に、映像化に向けて物語をシンプルに、テーマをわかりやすく、そしてここが肝心だが、年齢制限を受けないように脚本を練り上げたこと。原作の持つナイーブな雰囲気を損なわずエンタメに作り変え青春映画に仕上げたこと。それぞれのシーンがとても印象的に撮っている。映像的に美しいだけでなく、登場人物一人ひとりの台詞、表情を大事に捕まえ、しっかりした存在感を与え、映画世界にリアル感を感じさせてくれた。

2つ目は、3人のキャスティングが見事にハマったこと。この役のために3人は現れたような奇跡に近い自然さを感じさせた。3人それぞれが精神的に問題を抱えているが、個人の問題ではなく、それが誰にも見受けられる普遍的な若者の姿として自然に描かれていた。同世代として通じ合う、互いにリスペクトしあう、そんな3人の姿が映画の全てだといっていいくらい。

●ローガン・ラーマン。
《3時10分、決断の時》以来注目。あの時の子役よかったよなぁ。順調に成長している。
●エマ・ワトソン。
ようやくハリポタの呪縛から抜けだせそうか。チラチラ見せなくても大丈夫。次作も期待するぞ。
●エズラ・ミラー。
性格俳優としてこれからの注目株。
3人に共通するのは、それぞれに《独特の眼力》を持っていること。

《青春とは何だ》と言えば、
それはすなわち、「世界は無限だ」と感じる時間のこと。
荷台に立ったサムは、両手を広げる。
その姿を見ながらチャーリーは、「無限を感じる」とつぶやく。
いつか自分も体感したい。

そして、ラスト、チャーリーも、ピックアップトラックの荷台に立ち、両手を広げ、自ら《無限を感じる》と。
本当の自分を見つけた瞬間。


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アンジェリカの微笑み 

2017-04-10 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★アンジェリカの微笑み

アンジェリカが眼をパチッと開いた瞬間、
ドキッ。
ちょっと怖い展開になりそうだと身構えたんですが、
ある意味想定内の青年の恋話。
しかしなんとも魅惑な怪奇ロマン。
100歳を越えてなおロマンスですから、、、。
恐れいります。
監督は106歳で永眠したマノエル・ド・オリヴェイラ。
オリヴェイラ監督、101歳時の作品です。
死を目前にした彼のメッセージは、

《甘美な死への誘い》であり、
《現代文明への憂い》でした。

老人の魔法にかけられたような気分。
さて、
あの謎の微笑みを魅せてくれたのは、ピラール・ロペス・デ・アジャラ。
《シルビアのいる街で》でも謎の美女を演じていました。


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猫語の教科書

2017-04-10 | 

本を読んだ。

★猫語の教科書(ちくま文庫)
著者:ポール ギャリコ
訳者:灰島 かり
出版社:筑摩書房 (1998/12)

ある日、編集者のもとへ不思議な原稿が届けられた。文字と記号がいりまじった、暗号のような文章。“£YE SUK@NT MUWOQ”相談を受けたポール・ギャリコは、それを解読してもっと驚くはめになる。原稿はなんと、猫の手になる、全国の猫のためのマニュアルだった。「快適な生活を確保するために、人間をどうしつけるか」ひょっとしてうちの猫も?描き下ろしマンガ(大島弓子)も収録。 (「BOOK」データベースより)

とうとう買って読んでしまいました。
読みながら、《うん、うん、そうだね、うん、うん。》

人間の家の乗っ取り方がそれはそれは詳しく理詰めに書かれてます。
基本スタイルは《猫の方が人間より進化し高等な生き物である》ということ。
笑ってしまいほんとに無力感を感じるくらい真実です。

しかもこの本の素晴らしいところは人間観察が鋭いところ。
猫の観察力は可笑しいくらいズバリ。

シニカルな観察眼を紹介
「少しでも人間を知った猫なら、人間が自分の所有物に関してどんなに神経を尖らせているか知っているでしょう?だって、人間のことばの中でいちばん重要なのは《私の》ということばなんですからね。《自分の》物だとみなした物がおびやかされそうにになったら、信じられないような残虐な行為をしかねないのが人間というものです」

人間というのは所有欲の塊みたいなものなんですね。
(僕もその一人ですが)

ユーモラスな人間観察の視点が随所にみられニンマリとしながら読んでしまいました。
猫のための猫語による解説書です。
日本語に翻訳してあります。


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シング・ストリート 未来へのうた

2017-04-08 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★シング・ストリート 未来へのうた
原題:Sing Street
監督:ジョン・カーニー
キャスト:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボーイントン、ジャック・レイナー、他

かって、イギリスは《ロックの聖地》だった。
多くの才能が集まり、火花が散り、新しい音楽が生まれた。
80年代のロンドンは若者の希望の地だった。
そんな時代があったよなぁ。
と、取り戻せない時間に揺さぶられた。

この映画は、そのイギリスのおとなりのダブリンが舞台。
監督はジョン・カーニー。
『ONCE ダブリンの街角で』 、『はじまりのうた』に次ぐ3作目。
音楽と愛をピュアーに描く。
80年代のブリティッシュ・ロック炸裂ということで、
久しぶりにノッチャイましたね。
当時のカルチャーをたっぷり楽しませてもらった。

この《シング・ストリート》バンド
ポール・マッカトニーとジョン・レノンに似てない?

ひきこもりのお兄ちゃん役でジャック・レイナーが出ていた。
二作続けて観たが
自分の世界に引き込む演技力はさすがです。

ラスト、めちゃくちゃポジティブになるんです。
ロンドン目指して出航と
余韻を残しての終わり方もあるんでしょうが、
とにかく突然、雨、風、嵐。
それでも未来に向けて突き進む二人。

監督は、ぜひやりたかったんでしょうね。


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美術館を手玉に取った男

2017-04-07 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★美術館を手玉に取った男
原題:Art and Craft
制作:アメリカ(2014年)

贋作作家マーク・ランディスを描いたドキュメンタリー。
何と、全米46もの美術館を騙し続けた、その本人が堂々と全編登場する。
そして心情を語る。
俳優の演技でなく、作家その本人がカメラの前で日常の姿を見せる。
何が真で何が虚なのかわからなくなってしまった。

作品には、全て元ネタがある。
これは言い得て妙な言葉。

贋作を描き、無償で美術館に送ることが《彼の人生》である。
その贋作技術たるや、公文書のサインまで見事に写し描く。
そしてついに、《贋作作品の個展》

見に来た観客が、
《彼は彼の作品を描くべき》と驚きの声を上げる。
しかし彼は平然と。
《これが私の作品だ》
現代アートそのもの。


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