N の 祝祭日

映画、読書などのメモ

アンドリュー・ワイエス-創造への道程ー

2009-02-05 | 展覧会

 

 

★アンドリュー・ワイエス-創造への道程
愛知県美術館

 

 

愛知県美術館へワイエスに会いに行く。

ここしばらく、まったく気にかけなかったワイエスだったが、
一月に、亡くなったという新聞記事を読んだ時、
かつてのワイエスブームを思い出した。
とても新鮮でありそれなりに「感染」はしたが、
ベクトルが違うので、いわゆる真似るということはなかった。
しかし、ワイエスの水彩やデッサンは大好きである。
いわゆる切れ味が鋭い。

今回の展示のコンセプトは
「テンペラ作品に対応する、水彩や素描を中心として、ワイエスの作品の創造プロセスに焦点を合わせる」というもの。
展覧会企画当時は、ワイエスはまだ元気に制作を続ける現役作家であり、
日本のファンに熱いメッセージを送る狙いがあった。
が、この展覧会中に亡くなった。
91歳。

水彩やデッサンは作家の関心のあり方、意識の動きがよく読み取れて、観ていて非常に楽しい。
テンペラの完成作品に向けて、ワイエスが描こうとした感情の激しさがよく出ていた。
こんなにも激しい人だったのかと今回初めて知る。
ブラマンクのフォーブのような激しささえ感じた。
筆の走り、絵の具の飛び散り、時に抽象絵画的でもある。

水彩作品は、カメラでいえば、対象物を一点スポット測光的に描く。
描きたい物だけを描く。
当たり前といえば当たり前だが、捉え方は極めてシンプルであり、鮮烈である。
この研ぎすまされたような感覚が好きだ。

ワイエスは、秋から冬の風景を好んで描いている。
いわゆる冬枯れの風景であったり、
雪景色であったり、
木枯らし風景であったり、
時に嵐のような風景であったり。
孤独に耐えながら、自分の身の回りの風景のざわめきに耳をこらしている。
何故この季節の景色ばかり狙うのか。
季節の張りつめた空気感がワイエス絵画の魅力でもある。

冬は生まれ故郷のスタジオでの生活、
夏は自宅での生活という二つの空間を持っている。
この二重生活がワイエス絵画に大きな広がりを与えているのではないかとも想像した。

会場内にビデオコーナーがあり、インタビュー映像が流れている。
かわいいおじいさんワイエスが語る。
「約束事があったら、アートは面白くない」と笑っていた。
黙祷。

知り合いのアメリカ人に「メイン州ってどんなとこ?」と尋ねた。
彼は顔をしかめて「東海岸の一番北。とにかく寒いよー。
雪もたくさんつもるし」と教えてくれた。
ワイエスの制作スタジオがあった所である。 

コメント
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