Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

それでも恋するバルセロナ

2017-05-29 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★それでも恋するバルセロナ

ウディ・アレン監督によるラブ・ストーリー。画家の元妻を演じたペネロペ・クルスが第81回アカデミー賞で助演女優賞を獲得。

映画の中に男と女、二人の画家が登場します。アトリエでちらちらと見せる作品スタイルは、タピエスのような、アクションペインティング風です。茶褐色を主体にした色彩はいかにもスペインの土のようでいい感じで情熱的ですが、感情だけがほとばしる分裂気味絵画でした。(笑)

この二人の画家を演じるのは、スペインが世界に誇るペネロペ・クルスと、ハビエル・バルデム。このふたり、マジで演技やっているのかよくわからないような不思議な二人。

映画の前半はほぼ観光気分ですが、ペネロペさん登場したとたん、映画はがらりと濃厚なカオス状態の世界へと入り込み俄然緊迫度が増してきます。このペネロペの虜になってしまいました。すごすぎる!

ハビエル・バルデムさん、地元の気楽さでしょうか、酔っぱらっているような、ふらふらした眼で女を口説く表情は、ボヘミアン的で、いかにもいいかげんなアーティスト。いいですね。

スカーレット・ヨハンソン、レベッカ・ホールの女ふたり、魅力的な表情をたっぷり魅せてくれますが、バルセロナの街の空気が一層彼女たちを情熱的女性に変えてくれます。

せっかく、大人のファンタジーをたっぷり楽しませてくれるのに、時々挿入される、しわがれ声の男のナレーションが耳障りでした。なんでこの声なのでしょう。ウディ・アレンさんに詳しく説明してほしいくらいで、ボクの感覚では、NGです!

おいしそうなワインと情熱的な音楽。一夏の夢話としてみるぐらいにしないと大変です。飛行場での二人の女の表情はまだ夢から覚め切らないどこかボーとした顔が印象的でした。

 


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ブロンド少女は過激に美しく

2017-05-28 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ブロンド少女は過激に美しく
原題:SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA
原作:エサ・デ・ケイロス
監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
キャスト:リカルド・トレパ、カタリナ・ヴァレンシュタイン、ディオゴ・ドリア、他
2009/ポルトガル・フランス・スペイン

《妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし・・・》と、秘密めいた話だが、それはなんともお粗末な顛末で、これでは暇つぶしに他人に語るよりしかたがない。できるだけ優雅に、できるだけ謎めいて。それで結局、《過激に美しい》彼女は何者だったんだろうか。どうでもいい話だったが、その一点がとても気になった。原作者 エサ・デ・ケイロス(1845-1900)の本を読むよりしかたがないが、さて、日本で翻訳が出ているのかどうか。それくらい無名の短編小説である。タイトルだけが独り歩きしそうな恐ろしく美しい文学的タイトルである。

パソコンのキーボードがあったので、現代の話ではあるが、現在と過去が入り乱れ時間が歪みながら、しだいに感情までが揺らぎ始め、ドビッシーの「アラベスク」がハープの音色で流れた辺りから、迷宮の世界へと入り込む。そもそもドビッシーをハープで聞いたのは初めてである。夕暮れの街の景色は一層魔術的世界を演出し、時間を溶かしぐにゃりぐにゃり。ダリの絵画のような世界に落とし込められた。これが100歳を迎えた監督の夢物語である。私のような若輩者には解りようがない甘美で魔術的世界である。

ダイヤの指輪のシーンで「えっ、まさか」と思ったが、その「まさか」で夢物語は突然苦々しく終わった。余りにもこのオチは呆気無い。彼女はいったい何者だったのか?

 


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ル・アーブルの靴みがき

2017-05-27 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ル・アーブルの靴みがき
原題:LE HAVRE
監督:アキ・カウリスマキ
撮影:ティモ・サルミネン 
出演:アンドレ・ウィルム カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン ブロンダン・ミゲル、他
2011/フィンランド=フランス=ドイツ

《港町ル・アーブル》と聞けば、モネの《印象・日の出》である。つまり、僕は《タイトルが醸し出すイメージに惹かれて》観たようなわけで、多くを期待した訳ではないが、予想以上に《豊かで幸福なイメージ》を感じさせてもらった。カウリスマキ監督の仕掛けた《メタファーな世界》に完璧に引き込まれた。

物語は、《不法移民の少年をかくまい、イギリスへの脱出に向けて力を尽くす、この世のものとはおもえないような善意ある人たちのお話》である。一組の夫婦とその仲間たち、少年と追いかける警視、まるで《大人の童話》のような作りである。監督は饒舌に物語を説明するでなく、監督は俳優に喜怒哀楽を噴出させるでなく、むしろ極力感情を押さえ、極力簡素な表現の中に、より《深い慈しみ》を表現しようとする。これは癖になる。

ラストの展開は意外ではあったが、《天使のような少年を救う》という《メルヘン》からすれば、あの《奇跡》は落ち着きどころだったのかもしれない。

ちなみに、警視の名前は《モネ》。
えっと苦笑い。
《世界はメタファー》である。


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コロンブス 永遠の海

2017-05-25 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★コロンブス 永遠の海
原題:CRISTOVAO COLOMBO O ENIGMA
監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
2007/ポルトガル=フランス

大航海時代のコロンブスの軌跡と謎を追いかけながら、
監督マノエル・デ・オリヴェイラが海への憧れと郷愁を描く。
何と100歳を越えてなお現役の監督なのである。
ここまで来るともう神秘の世界観である。
夫婦そろっての出演がなんとも微笑ましい。

100歳ともなるとこんな凄い作品が作れるんだと思い、
ようし僕も100まで生きようと決意した。
年には関係ないんでしょうが、
長生きすれば、
感じるもの、
見えるもの、
聴こえるものが違うのでしょう。
きっと違うんでしょう、
その世界を味わいたい。

で、この作品の気に入った所。

1・・・音の臨場感がリアル。風の音、波の音、旗のなびき、そして靴音。アカデミックな音の拾い方だろうけど、見事に新鮮に聴こえた。耳を澄ませば聴こえる音なんだけど、なかなか聴こえない。意識して作らないと聴こえない詩的な音だ。

2・・・全編ずっと波の音。しまいに眠くなるけどね。でも永遠の音である。

3・・・登場人物たちが何か可笑しいと思ったら、それもそのはずで、監督自身であったり、自分の妻であったり、孫であったり。ほんとに幸せそうな笑顔で微笑ましい。

4・・・《郷愁の詩》(ほんとのタイトルはわからない)がいい、なんでこんな泣ける詩なんだ、ゆりかごに揺られるような心地よさ。遠くから聴こえるマザーの歌声。“郷愁”という言葉 この言葉を紡ぎ出した人よ 初めて呟いたその時 涙をながしたことでしょう

5・・・眠くなった頃に、作品は終了。この時間がちょうどいい。これは計ったように凄い。

生きる事への勇気と希望を与えてくれる映画だった。
僕の大発見、コロンブスはポルトガル人だったこと。
交通信号は“赤と青”ではなく“赤と緑”だったこと。



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アーティスト

2017-05-21 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★アーティスト
原題:The Artist
監督:ミシェル・アザナビシウス
撮影:ギョーム・シフマン
音楽:ルドビック・ブールス
キャスト:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル、ペネロープ・アン・ミラー、マルコム・マクダウェル、他
2011/フランス

《アカデミー俳優犬賞》?に輝く作品。
このワンちゃんがいなかったら、いったいどんな事になっていたのでしょうか?
と思い、これは何処かで、何とか賞を頂いているにちがいないと調べてみると、
『第1回ゴールデン・カラー賞(金の首輪賞)』において、《最優秀“俳優犬”賞》を受賞とのことでした。他にも、いろいろ、この種の受賞があるのでは。

多くの人々を魅了し、数々の賞に輝く。
この作品の魅力は、
ピュアーでシンプルなラブロマンス
無声映画のアップ映像にも耐えうる俳優さんの表情の豊かさ
利発なワンちゃんの愛くるしいまでの演技
《映画作り》へ作り手と役者の情熱
そして、現代の最高の編集技術
《不必要なもんは何もない》という、ほんとに完璧なほどの美しさ。

ジャン・デュジャルダン、《あれっ、何処かで観たな》と遠い記憶を引っ張りだすと、
《クラーク・ゲーブル》にたどり着きました。見る角度によってほんとにそっくり。
《ノスタルジーたっぷり》



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モリエール 恋こそ喜劇

2017-05-21 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★モリエール 恋こそ喜劇
英題:MOLIERE
監督:ロラン・ティラール
2007・フランス

フランス喜劇はやはり底が深い。
華やかな衣装に目を奪われる。

17世紀初頭にタイムスリップしたような、鮮やかな世界。まだモリエールが有名になる前の若かりし頃の、借金抱えて劇団解散かと追いつめられた頃の、愉快で素敵な物語である。もちろんフィクションではあるが、モリエールの戯曲に出てくるお話を繋ぎ合わせたような喜劇の連続。まさに喜劇王モリエールの物語である。


《石膏モリエール》の柔らかい髪と堂々とした胸を思い出した。



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3時10分、決断のとき

2017-05-19 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★3時10分、決断のとき
原題:3:10 to Yuma
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベール、ローガン・ラーマン、ベン・フォスター、ピーター・フォンダ、他
2007/アメリカ

この作品は、50年代の「決断の3時10分」のリメイク作品です。ポスターから西部劇だとわかりましたが、果たしてどんな物語かわからず、ましてや誰が出ているのかも。途中から、この映画は昔観たことあるなと思いましたが、全く思い出せずでした。アリゾナの強い陽射しと黒い影が美しいほどに強烈で、荒野に生きる人間の視線もギラギラ鋭く輝くようで、しだいに濃密な世界にすっぽり引き込まれました。

西部劇の定番シーンは揃っています。果てしなく続く荒野、小さな牧場、土地をめぐる嫌がらせ、駅馬車を狙う悪党たち、お尋ね者と賞金稼ぎ、小さな街の酒場と女、保安官、凄い早腕拳銃、そしてライフル、アパッチ族などなど。お楽しみ西部劇の全てのパーツが揃えてありますが、物語はいわゆる勧善懲悪ではありません。

西部劇の出来は、最後の戦いのシーンとその結末具合、そしてラスト映像の消え行く印象で決まると思っています。ボクがみた思い出の西部劇はほぼ間違いなくこの手順を壮絶に劇的にそして感動的に描いています。この作品も全ての西部劇パーツを完璧と言えるほどみごとに再生していました。美しくあり、懐かしくもあり、哀しくもありです。

映画を観ながら体が震えた体験は久しぶりです。この作品には、胸の奥から揺さぶるような、理屈を越えたものが描かれています。男が香る映画です。上等なバーボンを飲んだ気分で酔いましょう。クリスチャン・ベイルとラッセル・クロウの二人の男の演技にはどこか「あうん」の呼吸みたいなものを感じさせます。

《1日2ドルの稼ぎ 》
一日2ドルの稼ぎを要求。ついでに息子の分も要求しています。この映画の時代は南北戦争直後ですから、2ドルというのはどれだけの貨幣価値があるのでしょうか。

極悪犯の護送報償は200ドル。この額もいかほどのものか、まったく検討がつきませんが、家族を守るためにこの200ドルを求めて物語は展開するわけです。

さらにお金では買えないもの、お金以上のプライスとは何か。追いつめられてこそラストに決断した男のプレミアムパフォーマンス。そして、そこに共感した悪党の行動。
一攫千金の功利的行動に流れやすい時代の愛おしい物語でした。


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喜多川歌麿女絵草紙

2017-05-18 | 

 

本を読んだ。

★喜多川歌麿女絵草紙 (文春文庫)
著者:藤沢周平


何気なく選んだ文庫本。
予想外に良かったー、さすが藤沢周平。


哥麿は江戸の謎の絵師の一人。
多彩な絵師、戦略的な絵師。
浮世絵絵師は、時にエロ絵師みたいなイメージさえがつきまとうが
藤沢周平によって僕の喜多川哥麿観が完全に変わった。

物悲しい心境の哥麿像が描かれる。
まさに
沁みるなぁ
特に、女弟子千代との関係が、情感深く描かれ、秀悦。
しっとり。

謎の絵師写楽や馬琴なども登場し、
江戸の浮世絵世界へ一瞬にワープ。 


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西本願寺の飛雲閣

2017-05-16 | 散策

 

西本願寺へ行ってきました。
飛雲閣を観てきました。
伝灯奉告法要期間中の特別公開です。


初めて観ました。
優雅ですねぇ。

ぜひ観たかった、《日本のお宝》です。
感激です。

国宝の書院や、重文の能舞台も公開しています。
ああ美しい、ああ美しい、、、。

内部は写真撮影は禁止です。

 


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台北カフェ・ストーリー

2017-05-13 | chinema(アジア系映画)

映画を観た。

★台北カフェ・ストーリー
原題:第36個故事
監督:シャオ・ヤーチュアン
製作総指揮: ホウ・シャオシェン
キャスト:グイ・ルンメイ、リン・チェンシー、チャン・ハン、中孝介、他
2010/台湾

まったくといってほど、《感情の起伏》を感じさせず、ただ《ゆったりと時間が流れる》という感覚。物理的に《時間が流れる》ということはないと思うが、でも《流れる》という感じでした。そして《静か》です。これはいったい何でしょうか?

《一眼カメラでしっかりとらえた写真をパラパラめくっている》という想い。
グイ・ルンメイ (ドゥアル役)とリン・チェンシー(チャンアル役)は本当の姉妹のように見えた。この作品の最大の魅力ポイント。
《懐かしい台湾ニューシネマの匂い》がほんのり。
《どこか未完成のような余韻》を漂わせています。

監督・脚本のシアオ・ヤーチュアン (蕭雅全)は短編映画やCM制作で活躍とか。製作総指揮のホウ・シャオシェン(侯 孝賢)は、あの『悲情城市』(僕が台湾映画に関心を持つきっかけとなった作品)でヴェネツィア国際映画祭グランプリを受賞した監督。侯孝賢は小津安二郎を敬愛しているとか。


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ガラスの街

2017-05-12 | 

本を読んだ。

★ガラスの街(文庫本)
著者:ポール・オースター
訳者:柴田元幸
出版社:新潮社 (2013/8/28)

表紙のデザインに惹かれた。
「そもそものはじまりは間違い電話だった」。
深夜の電話をきっかけに主人公は、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。
ニューヨークを徘徊する物語なんで
この街の様子が分かってたらたぶん興味が膨らんだと思う。
が、残念ながら全くわからないので、惜しい。

全体のトーンは憂鬱。
憂鬱な心情が繰り返し述べられる。
映像化したら、流れる音楽はサティが似合いそうだ。

限りない孤独が描かれる。
そしてさらに、存在そのものが不確かになり、限りなく透明へ。
そしてさらに、限りなくゼロへ。
こういう心情は厄介である。

自分の存在をここまで隠す、透明化するのは、
アメリカらしくない。
少なくても僕が思うアメリカではない。
《知的な孤独》

別の本も読んでみよう。
と、、、。


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シルビアのいる街で

2017-05-01 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★シルビアのいる街で
仏題:DANS LA VILLE DE SYLVIA
英題:IN THE CITY OF SYLVIA
監督・脚本:ホセ・ルイス・ゲリン
撮影:ナターシャ・ブライエ
キャスト:グザヴィエ・ラフィット,ピラール・ロペス・デ・アジャラ
2007/スペイン/フランス

呆然と映画を見つめ続け、そして果てしなく彼方を彷徨した。
こういう映像作品を見せつけられると、
小さな平面の世界でごちゃごちゃやってる事自体がつまらない仕事のように感じたが、
表現スタイルが違えば狙う獲物は当然違うのだという確信も得た。
映画は「如何に感情を揺らすか」であり、平面は「如何に感情を定着させるか」である。
そしていずれも最も大切なものは「時間の弁証法」である。
「過去と現在を繋ぐ感情」をどう表現するかである。

この作品では、「時間を繋ぐ感情」が唖然とするシンプルさで表現されていた。
余計なイメージは全てといっていいくらいカットされ、
本来は偶然の産物である光と影までコントロールされたような合理的映像。
計算しつくされた街のノイズの演出。
しかし生み出される感情は繊細でしかもトリッキーな感覚。

僕の大好きなビクトル・エリセは、
ホセ・ルイス・ゲリン監督を「現代スペインで最も優れた映画作家」と評している。
「映画作家」としたところがいいではないか。


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