Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

「無所属の時間で生きる 」城山三郎

2015-05-11 | 

本を読んだ。
★無所属の時間で生きる
著者:城山三郎
出版社: 新潮社

 

 

この本のタイトル「無所属の時間で生きる」は、以前、新聞の書評欄で読んだ事があり、気に留めていた。本屋さんでもよく目にしていたので、今回、ひょいと手にして、読んでみた。といっても実は、城山さんの文章をまとめて読むのは初めてである。

とっつきにくいような先入観で今まで避けていたが、かなり読みやすい、というより、とても素直に自分の普段の思いをさらけ出した文章である。あのテレビに出ていた顔が好爺(失礼ですが)として思い出される。

「無所属の時間に生きる」という意味は非常によくわかる。組織に頼らず、筆一本で生き、生活を支えた向こう意気の強さは時々見えるものの、むしろ多くは、不安と焦燥と、そして、支えてくれた多くの仲間への感謝の気持ちが綴られている。「無所属」だからこそできたこと、考えたこと。そしてさらに、老いてゆく時間の中で、充実した豊かな時間の過ごし方として、「無所属の時間を生きる」という境地を述べている。

さらに城山さんは、生きる時間の残り少なくなった自分に言い聞かせる。

一日に一つでも、爽快だ、愉快だと思えることがあれば、それで「この日、この私は、生きた」と自ら慰めることができるのではないか。つまり、これは私の造語なのだが、「一日一快」でよしとしなければ。それでも、どう見ても快いことがないというならば、奥の手がある。「珊瑚の時間」つまり、晩餐後に、寝そべって好きな本を読む事である。短時間でもよい、好きな時間だけ読み、眠りに落ちる。

自分の時間を大切にしたいと想う。


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図書館戦争

2015-05-11 | chinema(日本映画)

映画を観た。

★図書館戦争
原作:有川 浩
監督:佐藤信介
キャスト:岡田准一、榮倉奈々、田中圭、福士蒼汰、石坂浩二、他
2013/日本映画

物語の全ての始まりは
《頭ナデナデ》
女の子でなくても、この感覚はわかります。
これは人の成長にとってとても大事だ!
ハチャメチャな想像力はこんなちょっとした幸せから大きく膨らむ。
原作者有川さんは、そんな一瞬を捉え、物語化する。

物語の人気の秘密は3ポイント。
身につまされる感覚のパラレルワールド、
ベタ甘の恋愛感情、
そして止めのないポジティーブ新感覚。

映画では、特に、《図書隊と良化隊の戦いをどう描くか》興味深いところだったが、
できるだけ血を流さず、陣取り合戦のごとく互いに戦うゲーム戦争を展開し、
原作の世界をさらにパワーアップさせていた。
実写ものは迫力で勝負である。

児玉清さんが写真で登場しているが、彼は有川さんのファンだったようで、
文庫本のラストに掲載された対談の中で、有川本の魅力について、
《有川さんの本を読むと、心が正されるんですよ。人間のあったかさを、感じ直す事ができる》と。

映画もベタベタ甘ではあるが、心地良いポジティーブな感情を湧き上がらせてくれた。


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空中散策の自由・・・マン・オン・ワイヤー/MAN ON WIRE

2015-05-10 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★空中散策の自由・・・マン・オン・ワイヤー/MAN ON WIRE

夢を信じるアートか、美し過ぎる犯罪か。
空に、近づきたかった。
夢に近づきたかった。 
30年以上も前の1974年のパフォマンス(もしくは敢えて作品)。
犯罪性を含むからこそ、
美しいスリリングなアバンギャルドへと変身する。

「なぜ、あんなことをしたのか?」プティが誰からも聞かれる質問だそうです。それに対してプティの答えはいつも「理由なんてない。」フィリップ・プティのパフォーマンスが「美しい」と感じさせるのは、この「理由なんてない」という反逆精神があるからでしょうか。

プティが夢を持って立ち向かったのは、あのWTCでした。今から思えば歴史の皮肉と残虐性を感じましたが、ジェーム・ズマーシュ監督は、敢えて2001年 9月11日の同時多発テロには触れていません。70年代の時代性と人間の行為のみを記録したかったのでしょう。美しさへの憧れが凝縮した映像でした。

なお、余談ですが、
WTCは、公共建築や大型ビルを建てる際はその建設費の1%をパブリック・アートに使うという条例を適用した先駆的なビルでした。美術館ができるほどの数と質のいい美術品があったと思われますが、同時多発テロによって、多くの命と一緒にその美術品の全ても同時に失われました。

ドキュメント映像の美しさと緊張とそして穏やかな余韻を与えてくれているのが、ナイマンの音楽です。あの「ピアノ・レッスン」はもちろんエリック・サティの「ジムノペディ」も静謐感を与えてくれます。

イチ押しの完璧な五つ星アート作品です。
命を賭けるからアバンギャルドです。

 


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先を読む頭脳

2015-05-02 | 

 

★先を読む頭脳(新潮文庫)
(伊藤毅志と松原仁)が、羽生善治氏へのインタビュー
出版社: 新潮社

おなじみのポーズは羽生善治。この人は言うなれば至極普通の人であり、特にずば抜けた知能を持っている人という訳ではありませんが、将棋の世界ではずば抜けた「先を読む頭脳」の持ち主です。7冠達成の新聞特集は我が家では大切に保管されています。彼のサインももらいにいったこともあるくらいの大ファンです。

将棋の世界で、いかに彼はこれほどの高い勝率を保ち続けることができるのか。羽生善治が話す、勉強法、対局で大事にしていることなど興味深いことがいっぱい詰まっています。へぇーと驚くより、うんうんとうなづくことが多いお話です。

「持ち時間と思考」の中で、
《どんなに時間があっても、読みきれないものは読みきれません。ですから、仮に持ち時間が何十時間あっても結局、残りが一時間とか三十分にならないと踏ん切りがつかないのです。変な言い方ですが、時間はなくならないと意味がないのです》

絶妙な言い回しです。
名人ならではの言い方です。


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