Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

ウォールフラワー

2019-07-10 | 

 

★ウォールフラワー(文庫本)
著者:スティーブン・チョボスキー
訳者:田内志文
出版社:集英社

1999年にアメリカで刊行された
《The Perks of Being a Wallflower》の全訳である。
以前にも翻訳され刊行されているようだが
(小西未来訳、アーティストハウス)
今回は、新訳となる。

アメリカでは、青春小説のベストセラーとして、
サリンジャーの《ライ麦畑でつかまえて》と比較されているようだ。
ある学校では必読書として推薦され、
またある学校では禁書として扱われる問題作といわれるとか。

 


読んでみた。
15歳高校一年生チャーリーが見知らぬ誰かに手紙を書きながら、
なかなか人に言えぬ感情を発散させるというスタイル。
書簡体小説にしたことによって、
この年令の少年が抱くナイーブな心情が一層引き出されていた。
手紙というより、日記みたい。

主人公は幼い頃に性的虐待を受け、
それがもとで精神の問題を抱え、
幻覚に悩まされている。
そしてさらに、友人の自殺などもあり、孤独な日々。
高校生になっても、誰にも相手にされない日々。
パーティに行っても、仲間に入れず、
まさに《ウォールフラワー》(壁の花という意味)
そんなチャーリーを仲間として受け入れたのは、
やはり心の中に問題を抱えるパトリックとサム。
小説はこの3人の物語。
日付は、1991年8月25日から、翌年の8月23日まで。


車、喫煙、薬物の乱用、同性愛、セックスなど
ティーンエイジャーの関心事が盛りだくさん。
アメリカの高校生の実態はほとんど知らないので、
日本の高校生とははずいぶんと違う、
そのことにびっくりする。
アメリカ高校生の実態を写すものならば、
かなりショッキングな内容だと思う。


体験の苦しさ、傷の重さに比例するかのように、
人への優しさ、理解の感情が育っていく。
繊細な感情の語り口は、
小説全体に優しさを与えていた。


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