京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

ミツバチヘギイタダニとアカリンダリ

2021年05月06日 | ミニ里山記録

 

 

  セイヨウミツバチ (Apis mellifera)に寄生するミツバチヘギイタダニ (Varroa destructor)の被害が世界でひろがったのは、20世紀の初めといわれている。このダニは、本来トウヨウミツバチ (Apis cerana)に寄生していたが、セイヨウミツバチを使う養蜂の拡大によって感染した。 ヘギイタダニが感染したコロニーを無闇に流通させたことも拡散に預かった。このダニは栄養寄生するだけでなく、チジレバネウィルスを媒介してミツバチを殺す。トーマス・シーリーは、その著『野生ミツバチの知られざる生活』において、1990年代にアメリカの一部の地区では、ダニのせいでそれまで見られたミツバチの姿がすっかり見れなくなったと述べている。野生コロニーを調査すると、ミツバチヘギイタダニが確認された。ただその数は飼育個体群よりも少なく、野外ではなんらかの防御のシステムがあるのではないかと述べている。

一方、日本ではこの数年ニホンミツバチ (Apis cerana japonica)に外来のアカリンダリ (Acarapis woodi)が寄生し、これが広範囲にひろがり、個体群の減少をもたらしている(拙ブログ:https://blog.goo.ne.jp/apisceran/e/edc1a5e4d8a0c788f1dd2e4ef73c5d2e)。アカリンダニは本来はヨーロッパのセイヨウミツバチの寄生ダニだったのが、トウヨミツバチの一亜種であるニホンミツバチに寄生したものである。ようするに西洋と東洋でダニの交換をおこなったようなものである。コロナ禍と同様に生物界では本来あり得ぬ人類による交通交易がそれぞれのパンデミックを引き起こしているのだ。アカリンダリに感染するとKウイング(羽根)、徘徊が起こり、冬ー春にかけてコロニーが死滅する確率が高い。メントールなどを巣に入れて予防する。

 

参考図書・文献

トーマス・シーリー著 『野生ミツバチの知られざる生活』青土社 2021

前田太郎ら『ミツバチに寄生するアカリンダニ 分類,生態から対策まで—』日本応用動物昆虫学会誌59 巻 第 3 号: 109–126 (2015) :この総説はアカリンダニに関する圧巻の著である。詳しく知りたい人は必読。安易なニホンミツバチのコロニーの国内移動がこのダニの感染拡大を広める可能性を指摘している。


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