京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

病気の定義について

2020年05月11日 | 環境と健康

新型コロナウィルス感染症 (COVID-19)のウイルス保持者の80%ほどは、自覚症状がないか軽症ですむ。自覚症状のない不顕感染者は、はたして「病人」といえるのかどうか。

COVID-19の治療現場の報告によると、まったく自覚症状のないPCR陽性感染者の胸部CTをとると、肺がスリガラス状に映る肺炎にかかっているケースがあったそうだ。その患者は安静治療だけで回復した。このケースの人は、PCR検査も受けずCTも取らないでおれば、自分がSARS-CoV-2に感染したことさえ認識せずすごしていたであろう。あるいは、ちょっと身体がだるかったので「風邪でも引いたか」位ですんだいたのではないか。こういった例は、COVID-19が蔓延する前から普通にある話しだ。

この人はPCRを受けるまでは何の不都合もなく元気にくらしている。ところが、現在、日本ではPCR検査でSARS-CoV-2が陽性と出た時から、その人は指定伝染病COVID-19に罹った「病人」として扱われている。しかし、医療崩壊寸前の医者にとって、こんなピンピンした人が入院されては困る。しかし、念のためにとおもって取ったCTで肺炎をみつけた途端に、これは立派な病人でベッドに固定しないと駄目だとなる。ようするに情報と状況によって病気判定が変わってしまう。

 

まず人の病気をその原因からカテゴリーに分けると次の様になる。

A1)外的要因による生理機能のかく乱。

 外的要因としては物理的、化学的、生物的、栄養(食事)的、社会的環境がある。社会的環境には精神的(メンタル)なものを含む。中毒症状は化学物質による事が多い。放射線も急性および晩発性の障害を引きこす物理的環境要因である。感染症は細菌、ウィルス、原虫などが体内に侵入して病気を起こす。

A2)老化にともなう身体機能の不全。

 心筋梗塞、消化器不全、骨粗そう症、認知症などである。老眼や難聴も一種の老化病である。

A3)悪性新生物(悪性腫瘍)による身体機能の破綻。

 ガン細胞の転移と増殖による。良性腫瘍は経過観察ですむが、悪性腫瘍は処理が必要となる。

A4)遺伝子欠質による生理的機能の低下ないし欠落。

 パーキンソン病、ハンチントン病やフェニルケトン症などがある。マラリア抵抗性の鎌状赤血球遺伝子は貧血症を起こす。

  これらの原因による病気の症状は千差万別であるが、多くは熱や痛み、咳、嘔吐、下痢、悪寒などを伴う。これらは、病気に対する防御作用であって、病気そのそのものではない。たとえば、発熱は体内の病原微生物の増殖を防止するための生理応答である。火事に例えると、大元の災害(病気)は火事(ウィルスの増殖)であって、消火活動の水(体温の上昇)ではない。火事が大きければ放水量が多いように、病気も猖獗を極める状態では発熱も高くなる。

SARS-Co-2ウィルスは、ヒトにとって生物的環境A1)であるが、感染からエピデミックまでのプロセスには生態的仕組みがある。このウィルスはA2-4)の条件下で相乗的に病状を悪化させる傾向がある。

 

感染症の確定に関しては以下の4つのカテゴリーの状態を考える事ができる。

C1) 病原菌(ウィルス)に感染せず、症状もない。

C2) 病原菌(ウィルス)に感染しているが、症状はない。

C3) 病原菌(ウィルス)に感染しており、症状がある。

C4) 病原菌(ウィルス)に感染してないのに、症状がある。

感染症の病気としての確定は便宜的な事が多く、それほど単純ではない。神戸大学医学部の岩田健太郎氏は、どのように医者が病を規定するかによって変わると述べている。C3)がCOVID-19の感染確定=病気とされるが、「感染している」を検査するPCRは、大抵「症状がある」の後でなされる。4日ぐらいの微熱 (37.5度)が続かないと、厚生省の検査の基準に合格しない(最近やっと方針を変えたようだが)。COVID-19に認定してもらうのも大変なのだ。

 

一般的に人の病気は医療とのかかわり合いで4つに分類される。

 B1)医者がかかわらなくても自然治癒する病気。

 B2 )医者がかかわることによってはじめて治癒する病気。

 B3)医者がかかわってもかかわらなくても治癒しない病気。

 B4)医者がかかわると治癒しない病気。

普通は1)~3)までがよく記載されているが、4)はあえて庵主が付け加えたカテゴリーである。日本ではCOVID-19の感染者(PCR陽性者)について、B1)が80%ぐらい、B2)が16%、B3)が4%と計算される。ただ、市中感染者でPCR未受験者が多数いるので、実際はB1)が90%台で、B2)、3)はこの値よりづつと少ないはずだ。

B4)は本来ウィルスフリーの人がPCR擬陽性で間違って入院させられ、不運な事に院内感染したあげく死亡するという仮想的な例である。これは、調べようがないので統計には出てこないが、絶対ありえない事ではない。

 

 

 

 

参考図書(書評)

岩田健太郎『感染症は実存しない』インターナショナル新書 052, 集英社

 岩田健太郎さんは2月に横浜港のクルーズ船「ダイアモンド・プリンセス号」に乗り込み、ずさんな防疫内情を告発した人である。この書は病気というものの多くは、医者(医師会)が恣意的な基準をもうけて作った操作概念にすぎないとしている。その例として、潜伏結核(世界人口の1/3)はいままでは病気としては認めていなかったのに、アメリカではこれを病気として根絶しようとしていることをあげている。ところが途中で筆者に混乱がおこり物の実在論になってしまい、話が迷走し始める。哲学のマッハ主義に陥り頭が混乱している。池田清彦氏のような構造生物主義者の影響を受けたせいである。惜しい話しだ。

 病気、たとえば結核を「もの」ではなく「こと」と考えるべきであるというのが筆者の主張である。しかし、そうではなく、結核は結核菌という「もの」によって支配された「こと」であると言うべきである。この「こと」は結核菌の保持者によって多様なので、病気の判定が難しいというだけの話しである。身体に「もの」が存在するだけで病気とするのか「こと」が起こってから病気とするかは、医者の恣意的な判断によらざるを得ないというだけの話しだ。要するに医学(厚労省)はいまだいいかげんだという事である。

COVID-19の場合は「もの」(ウィルス)の存在(PCP陽性)によって病気として隔離される。これは本人の生命維持のためと感染防止の為である。AIDSの場合はHIV保持者だからといって、隔離されることはない。そうすると差別になる。

 

 

 

 

 


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