京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

下水のSars-CoV-2ウィルス検出がCovid-19の流行予測に役立つ!

2020年06月10日 | 環境と健康

  米イェール大学のJordan Pecciaらは、人口約20万人の下水を処理する米コネチカット州ニューヘイブンの下水処理場で下水汚泥試料を毎日採取し、新型コロナウイルスのRNAを抽出・分析し、その地域でのCOVID-19感染者出現のデータと比較した(medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.05.19.20105999.。彼らは下水汚泥に含まれる新型コロナウイルスのRNA濃度と、この地域で確認された新型コロナウイルスの感染者数と入院患者数との比較を行った。その結果、SARS-CoV-2 RNA濃度は、COVID-19の感染者よりも7日間、入院患者数より3日間先行する優れた指標になるという(図1参照)。

 

図1.COVID-19の新規陽性者数(黒線)と、下水汚泥1mL中のウイルスRNAの量(赤線)(参考論文より引用転載)。

 

   Sars-CoV-2は感染者の糞尿中に排出されるので、下水をモニターすれば、市中感染のサーベイになると考えられ各国で調査が行われていた。環境DNAと違って、環境中のRNAは不安定で分解しやすいので、どれだけ定量的に分析ができるかが、ポイントであった。

この報告の結果が信頼できるとすれば、下水Sars-CoV-2の検出はCovid-19の発生・流行に関する有力な予測指標になりそうだ。サンプルの採集地点を細かく選ぶことによって、保菌者が集中する地域も特定できる可能性もある(例えばビル毎とか)。

 

参考論文:

Jordan Peccia et al., (2020) SARS-CoV-2 RNA concentrations in primary municipal sewage sludge as a leading indicator of COVID-19 outbreak dynamics . medRxiv preprint. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.05.19.20105999v1#disqus_thread 未査読論文 (Medrxivは、健康科学に関する未発表の原稿を配布するインターネットサイト)

松岡由希子 『下水が新型コロナ早期警戒システムになる?』Newsweek日本版(2020年5月28日)

 

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