AOBATO'S PHOTO

花や鳥たちの美しさや可愛らしい仕草などを写真に修めようと奮闘中です。

猫の心意気

2013-07-11 17:18:05 | 

 

24.グッドラック

 人生って、色々あると良く聞くことがあるけれども、猫の一生も、あたいみたいに野良の場合は、とくに色々な経験をして、様々な事柄を勉強出来たと思っている。

 あたいらには、生きる目標がはっきりしているのよ。自分らの種を未来永劫に守り抜くという使命感は徹底しているのよ。そうでないと猫族はこの世界から消滅してしまうことは、あたいらの合い言葉でもあるのよ。そうならないために、生ある限り生命維持のための食料調達を日夜欠かすことは許されないのよね。野良社会では自然界、野生でそれぞれ自らで調達しなければならないのよ。おじんが難しいこと言っていたが、食物連鎖などと、そうなのよ、あたいらはいつもそのことを意識して食うか食われるかの生活を末代永劫に続けなくてはならないのよ。そのために、前にも言ったけど、野良社会はおかんから受け継いだ、ライフワークの基本を忠実に守っていれば心配はないの。

 おじんは、わしらは生きる基本が支離滅裂だと、心配していたっけ。あたいは良く思うんだけれど、おじんらは、あたいらとは脳の構造が違っていて、IQと言うのが比較にならないくらい高いらしいけれど、だったら、あたいらのとは比較にならないくらい、充実した理念が人社会に浸透しているはずだと単純に思ってしまうけどね。余計なお世話だけど。

 あたいらには、はっきりした使命感があるから、雄どもは種を残したとして勝手に見知らぬ猫になりさがるのよ。仕方ないと思っている。あたいなんかは人様みたいに贅沢や自分だけ良ければと言う社会じゃないから、人様の世界が滅亡しても、あたいらはこの世に生き残れると思っているのよ。      

 おじんがよく言っていたよ。食糧難の時代の到来とともに、我らは生存競争が激化すると。何故ならば、人様の世界は金持ちになることを使命感と勘違いしていて、質素でも良いから千年万年先の子孫のことを考えた生き方をするための守り事が、何にもなく、自分らが幸せであれば、将来も子孫も幸せだと勘違いしている。だから、外国のように千年先の環境を今から守るという考えなんかは、全く眼中になくて、近代化近代化などと目先のことばかり考えていると。

 あたいは、4年の俳諧暮らしを終えて、O牧場でお産して、時折おじんところへ出掛けるようになり、あたいの子らが、おじんちをテリトリーにし始めたものだから、ミーコらは野良の仁義を重く見て、いつの間にかおじんちを去ってしまったの。それから暫くして子らが餌取りをマスターした97年の秋の気配がする頃のことだったけれど、おじんらの様子がなんだかおかしいと思っていたら、案の定、おじんらがどこかへ転居して行ってしまったのよ。あたいらは家族と思っていたのに。おじんとおばんはその朝、生のかしわの切り身や唐揚げといつもの乳入りの猫まんまをあたいらに出してくれたのよ。おばんらもあたいらのことを、家族と思ってはいてくれたんだと思いながら、いつもは子らだけに食べさせていたけれど、かしわの切り身だけはあたいが平らげることにしたのよ。初めてのご馳走だったので、美味しかったわ。でもね、でもね、その後は残念ながら、おじんらとの付き合いは途絶えてしまったのよ。

 その後、おじんらも、なじみのないところでどんな暮らしをしているのやら、気がかりだけど。縁が有れば徘徊の途で再開できることを願っているところなのよ。それにしてもおばんの猫まんまは元気の素だったのになぁ。了