23.我慢暮らし
どこかで聞くことがあったけれど、人の世界ではシングルマザーとかバツ1やバツ2などと父親のいないうちが増えているそうだけど、あたいらはそれが当たり前なのよ。一人での子育ては、苦労が付きものだけれど、初手から旦那のいない暮らしが当たり前のあたいらは、子育てが暮らしを脅かすことは無いけれど、人はそうはいかないのよね。それはね、あたいらが暮らすのにお金がいらないということよ。そんなややこしいことあたいらには、縁がないのよね。やったり貰ったりする風習などいらないから野良暮らしが出来るのよ。やったり貰ったりは、あたいらの場合はルールを守って愛有る子育てをすることなのよ。それ以上のことなど有りようがないのよ。
でもいいよね、シングルマザーのお母ちゃんたちは。だって鼻付き合わせて相手を確認する必要もなく、太郎君とか花子などと名前を呼んで、自分の意志を確実に告げられるんだものね。言葉があるんだから。それに年々生活環境は、ライフラインであったり福祉や教育など充実しているし、生活し易くなっていると聞くことがあるのよね。
あたいらみたいに、欲を出さず、普通に暮らせるなら、楽な生き方出来ると思うわ。大体近頃は、一寸したことでも我慢が出来ないらしいね。我慢したら、時代に遅れるなんて、大きな勘違いをしているらしいのよね。我慢することで、経費を節減できたり、我慢した末の大願成就などは、人生を左右するくらいの喜びを味わえるのにね。何にもマイナスのことなどないのよ。
おじんが子供の頃の話しをしてくれたが、隣の子が子供自転車買って貰ったので、自分にも買ってほしてと親父にねだると、「よしわかった。今度子牛を売ったら買ってやるからね」と言われ、仕方ないとそれまで待つことにしたというの。ところが、子牛はまだ母牛のお腹に宿っていなくて、それから妊娠させて、子牛が生まれるのは10ヶ月後、やっとの思いで生まれても、子牛を市場に出すには、それからまだ10ヶ月後のことであったというのよ。おじんらはそんな我慢をしながら育ったそうなのよ。自転車買って貰った時は、それはうれしかったそうなの。あたいにもよくわかるわ。
あたいの我慢と言えば、生んだ子らに野良社会での生活力を付けてやるんだけど、そのカリキュラムの全てを習熟してくれるまで、繰り返し繰り返し鍛錬させることなのよ。やがて全部の子らに合格証を授与した時は、あたいも子らも、それまでの苦労など素晴らしい達成感が得られ、それはもう興奮のるつぼにはまっちゃのよ。