みくに龍翔館を探している時に、通り掛かった、旧森田銀行本店。

1920年(T9)に建てられました。
北前船で財を成した豪商、森田三郎衛門が、
廻船業の衰退を察知して、森田銀行を創業して建てました。

ヨーロッパの古典主義様式的な外観は、実は赤レンガではなく、
タイルが貼られています。

森田銀行の看板は、大理石が使われています。

窓格子やヒサシは、アルミ鋳物で復元されています。
お隣の富山県、アルミ産業が多いからでしょうか。

内部は、日本人の職人さん、大工さんの技術の高さに
感激してしまうほど。

設計は、山田七五郎氏、大工の棟梁は地元福井の四折豊氏。
設計者は、横浜の開港記念会館や、長崎の県庁も
設計しています。

このカウンターに載せられているエンタシスの円柱、
一見、大理石を加工しているように見えますが、
実は、マーブル加工した漆喰によるものなんです。

ヨーロッパの建築に多く見られる、石膏のモールディング。
明治、大正時代の洋風建築に、取り入れられていますが、
これは、日本人、左官職人がコテで作り上げたものなのです。

この天井装飾も、漆喰です。
型で作ったものを貼りつけるのではなく、
左官職人が、漆喰をこねて、作り上げています。
気が遠くなりそうな作業です。

ドアにはめ込まれているガラス、
今では作ることが出来ないそうです。
細かな凹凸があって、ユラユラとした、
優しい雰囲気を醸し出すガラスです。

1階の元重役室。和のテイストです。

中は、とてもクラッシック♪

象眼の施されたカーテンボックス、
刺繍やフリンジの施されたバランス・・・

引き戸式の棚の内張りの布、当時のモノだそうです。
把手は、七宝焼きです


和風な引き戸の上には、こんなガーランドが・・・手が込んでいますね
さりげなく、漆喰で、エッグ(&ダーツ)ノットも。


階段の装飾も、部分的にスズランをモチーフにしたものが。

2階の会議室は、床も家具もすべて当時のものが残されています。
銀行ということで、あまり優美な装飾ではありませんが、
腰板にも象嵌が施されていたり、
バランスにも、大きなフリンジが付いていて 、本当に素敵

こういう空間でお仕事していたら、人間味のある、
いいお仕事できそうですね~

この時代の古い建築、もちろん洋風だけでなく、和の建築もそうですが、
コンピューターなどで、設計したのではなく、
人間が定規などを使って線を引き、人間の目で見て確認しながら
作っていくので、どうしても、歪みが生じるのだそうです。
もちろん、目で見える何センチも傾いたりするズレではありませんが。
人間の体は、天然で、左右にズレがあります。
なので、この時代の建物の、微妙な歪みが、
逆に人間に安心感、を感じさせ、リラックス出来る、
と、聞いたことがあります。
音楽でも、以前、モーツァルトの音楽には、
揺らぎの旋律が組み込まれているので、癒されると言われていましたよね。
こういう近代建築に入るたびに、そんなことを感じます。
コンピューターで設計したような、直線だらけ、歪みの無い、空間は
知らないうちに、疲れてしまうのかな・・・って。

この近くには、こんな存在感のある和建築もありました。
窓ガラスの嵌め込み方など、なかなか凝っています♪
