元々は、“チーコ”という名前でした。
小さかったから、というか、未熟児でした。くっちが生んだ雄猫でしたが、本当にちっちゃくて、子猫というより、ネズミみたいだった。
それが、まさかすくすく育って、6キロ近い固太りの大猫になるとは!
チーコ、という名が似合わなくなって、“チゴ”と濁るようになり、あげくに、“チゴりん”とおまけまでつけて呼ぶようになりました。
この3番目の猫は、2番目のくっちの息子だったので、似てるところもたくさんありました。
おとなしいところ、決して牙も爪も使わないところ。
でも、性格を一言で表すと“淡白”。よくいえばおおらかで穏やかでしたが、わるくいえば面白みがなかった。
この子も噛まれたり引っ掻かれたりした記憶がないのですが、それ以前に、じゃれないのです!おおげさじゃなく、この猫がじゃれたのは子猫の頃の、それも1ヶ月弱程の時間で、テンションは常に低め安定でした。
でも、その頃は“面白くない猫”と思っていましたが、今になると、この子も優しかったのだなぁ、としみじみ思います。“俺は漢(おとこ)だ。だから暴力なんか振るわないのだ”という感じの子でした。
どんなにおとなしい猫でも、暗い廊下なんかでうっかり尻尾を踏みつけたとき(チゴはいわゆるくつしたねこで、脚先と顔、胸以外はすべて黒かった)は、ギャッと叫ぶくらいはするのですが、この猫はそれもなく、ただ黙って耐えていました。
この子がいるうちにあやは家に来たのでしたが、押しかけ猫のあやにも優しかったのはありがたかったです。
ただ、唯一の天敵は父。父のことだけは大嫌いで、このおとなしい猫が、そばを通っただけで、父の脚に噛みつこうとするのです。雄猫で顎がごつかったので、牙と牙がぶつかるガツン、という音が聞こえるくらいの勢いでした。
でも、私が驚いてチゴに触れると、そういう興奮しているときはおとなしい猫でも手を出すと危ないものですが、手が触れた途端、憑きものが落ちたようになって、“ハッ、今僕は何を?”という顔になるのが可笑しかった。
この子も7歳ほどで、外で悪いものを口に入れたか、農薬が撒かれたところを歩いて身体についたのを舐めたかしたらしく、急に具合が悪くなってあっけなく逝ってしまったのが、当時かなりショックでした。