こちら本の探偵です (ちくま文庫) 価格:¥ 735(税込) 発売日:2005-09-07 |
子どもの頃読んだ本で、今も懐かしく再読したいけど、タイトルも作者も思い出せないってことが。
私も折にふれふと心にひっかかるそういう本が何冊かありますが、そのうちの一つを、先日友達と話していて思い出しました。
きっかけは、子どもの頃の交通事故の話をしたことだったのです。
偶然、別の友達にそれぞれ1回ずつ、話のなりゆきからそんな話をしました。
小6のときで、たいして怪我もしなかったのですが、そのことを思い出すと、いつも決まって連想する物語があるのでした。
『二畳間の三人』という話です。
なんだ、タイトルは分かってるんじゃないかと思われるでしょうが、これは短編集に入っていた1編なのです。
小学校の図書館で借りた、ちょっと変わった短編集でした。何巻か、少なくとも2巻は、あったと思います。
そうして、私の記憶だと、それはプロの作家の書いたものではなく、小学校の先生たちが描いた物語を集めたものだったかと思います。
いや、プロもいたのかな?何巻目にか、灰谷健次郎氏が書いてらしたように思うので。
(でも、たしか灰谷氏も教職に就かれていたことがあったような……)
閑話休題(それはさておき)。『二畳間の三人』は、私の記憶によるとこんな話でした。
突然の事故でお父さんを失った親子三人が、それまで住んでいたところにいられなくなって、知り合いの好意で茶室に住まわせてもらうことになるのです。
お母さんと、お姉ちゃんと、弟。お姉ちゃんが、“わたし”。主人公です。
二畳間に三人が寝るのですから、それはもう大変。ハンモックを吊って、弟はそこで眠るのです。ギリギリの暮し。
でも、お母さんはとっても前向きで、不自由も面白がって、それが子どもたちにも伝染してそんな中でも楽しく暮らせるようになってきた頃、もう一つの不幸が襲います。
主人公の女の子が歩けなくなったのです。事故の後遺症でした。
お父さんが亡くなった事故は、二人で遭ったのでした。お父さんは娘をかばって亡くなり、女の子はそのときはかすり傷程度と思われていました。
ところが彼女も傷を負っており、半年もたって、後遺症が出てきたのでした。
私は事故の後、やはりかすり傷程度だったけど、その話のように後遺症がずっと後になって出たらどうしよう、と怖くなったのを覚えています。
でも、それから何十年も過ぎているので記憶もあいまいになり、探し当てるのは難しくなりました。もしかすると、記憶が全然違っているかもしれないのです。
上にあげた本の著者、赤木かん子氏は、本の探偵、と自称しており実際依頼者の記憶の断片から過去に読んだ本を探し当てる名人です。
こんな方に相談出来ればな……と思いながらそう出来るはずもなく、子どもの頃の気になる本は、いまだ幻のままなのでした。
すうがく博物誌 (美しい数学2+3) 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:1995-01 |
私の持つ唯一の森毅氏の著作であり、また大好きな本であるからです。
私はまったく数学が苦手でして、その気配はすでに小学校高学年の時にありました。
“あ、この科目、私ついていけなくなりそう”という気持ち。
その予感は当たって、中学のときには苦手科目となり、高校になると、そりゃもう酷い事に。
もともと論理的思考に欠けているところがあり、脳の構造上ついていけない学問であったのでしょう。
けれど、では数学が嫌いだったかというと心底はそうでもなく、むしろ密かな憧れがありました。
美しい学問だと思ったのです。芸術にも通じるし、天文学にも通じる。
宇宙の均衡を支えている、繊細で洗練された学問に思えました。
そうして、森毅氏は、私の考える数学者にぴったりな人でした。
もちろん知的で、ユーモアもあって、さらにひとを喰ったようなところもあって。
この本の様々なエピソード、とくにガリレオについての記述を検閲された話とか、前にも書きましたがインプット、アウトプットの説明とか、思わず軽く笑ってしまいます。
もちろんこの本を買ったのは、挿絵の安野光雅氏に魅かれたせいもあるのですが、(小学校の頃からのファンで、ことに中学から専門学校にかけては頑張って画集を買っていた)森氏のウイットに富んだ語り口がとても好きでした。
何となく数学は、星々の間に密かに響く美しい音楽、という気もします。
森氏は今、そのただ中にいらっしゃるでしょうか。
ご冥福をお祈りいたします。
食堂かたつむりの料理 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2010-01-14 |
『食堂かたつむり』は、友達が読んだと言っていたし、nodame244さんもコメントで触れてらしたので、ちょっと気になっていました。
で、この本を書架で見つけて、やはりいつものように、いそいそと借りてきたわけです。
物語の中の料理が実際に再現され、レシピと、その料理が出てくる一節も小説から引用された素敵な本。
でも、読んだり眺めたりするのはとても楽しいのですが、これはやっぱり、レシピ本というよりも小説のおまけとしての本なのかな、と思いました。
(小説と同じ、ポプラ社から出版されているし)
なにしろ、主人公が天才的な料理人で、しかも食べたお客さんに奇跡をもたらす料理ですから、いずれも難しすぎるのです。
お茶漬けやサンドイッチはまあ、作れそうだと言えないこともないですが(とはいえ、こういうシンプルな料理こそ美味しく作るのは難しい、とも言える)他の料理はまあ、手が込んでいること!
そうして、私はこの本を読んで、小さな後悔も味わいました。
こういう遊び心のある本は、実用性は低くとも実は個人的に大好きなので、喜んで読んでいました。
ところが、終わり近く、衝撃な料理が登場するのです。
披露宴のための料理。引用の文の最初の2、3行では気づかなかったのですが、あ、この料理って、と思い当たった時の驚き!
たぶん、小説でも驚きをもたらすクライマックスシーンでしょうし、また、大切なシーンであることも想像できました。
しまった、オチを先に知ってしまった、というような気持ち。
ぜひ、どちらも読んでない方は、小説の方から読むことを強くお勧めいたします!
とはいえ、ネタを割るのではっきり書けませんが、『食堂かたつむり』の芯は、人生にも、そして料理にも入っている大切なものなのだと思いました。
小説の方も、読んでみたくなりました。