あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

聖なるミルストー

2018-01-27 00:18:28 | 本(エッセイ・ノンフィクション他)
魔女の12ヵ月 自然を尊び、知り尽くした魔女の「暮らし」と「知恵」
飯島 都陽子
山と渓谷社



私にはクリスマスプレゼントを贈りあう友だちが二人ほどいまして、そのうちのひとりは、いつもプレゼントのなかにオススメ本を入れてくれます。
そして、私はいつも、すぐに読まずにとっておいて、一月の初めに、一年の最初に読む本として開くのです。

今年は、この本でした。

民俗学もファンタジーも好きなので、この本のテーマにはすぐに惹かれました。
装丁も、中のイラストも、素敵。
魔女の、と銘打ってはいますが、伝説や魔法のエッセンスを加えつつ、自然と共に生きる、というテーマの本だという気がします。
十二か月それぞれに、行事やその季節のハーブなど、植物や自然を紹介しています。

そして、一月の章に取り上げられていたのは、ミルストー、宿り木でした。
中世ヨーロッパの人々は、冬にもみずみずしさを失わないその植物に、永遠の命を感じていたとか。
薬や、護符にも使われて、また、その独特のかたちや、真珠のような白い実の美しさも愛されていたようです。

以前古墳公園に行ったとき、ケヤキだったでしょうか、大木の梢に宿り木があるのを見つけ、その花のような美しさに打たれたことを思い出しました。

ひと月ずつ、丁寧に読んでいきたくなる本です。
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テイスト・オブ・ブルー・シーズン

2012-03-07 21:10:53 | 本(エッセイ・ノンフィクション他)

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫) 第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)
価格:¥ 520(税込)
発売日:2011-11-23
友達に貸してもらった本です。

ピースの又吉直樹が読書好きなのはなんとなく知ってはいましたが、こういう本が出ているのは貸してもらうまで知らなかった。

変わったタイトルですが、まえがきによると“自分は書評家ではないし、作家の人が心血注いで書いたものを批評するのも怖れ多いので図書係、しかも第二図書係、補佐”という趣旨らしいのです。

そのせいか内容も、ほとんどが自分の日常や体験を綴ったもので、エッセイの最後にほんの少し、その章にとりあげた本のことが出てくる、という具合。

突然木から落ちた青い実を、自分以外たったひとり女の子が見ていたから、そのひとなら自分を分かってくれるのではと追っかけてしまったエピソードとか、かつてのチームメイトを見返そうとサッカーの練習に励んで巧くなったが、予想外の結末が待っていた思い出話とか、それぞれに印象的で、面白い。

でも思い出してみると、はて、紹介されていた本は何だったかな?と思うこともしばしば。

ただ、読んでいると人生の味、と言うほどではないにしろ、ほろ苦い彼の青春の味が感じられ、それにそれぞれの本が寄り添っているのがふいに、伝わってくるのです。

そうして、個人的な読書とは本来そうしたもの、という気持ちにもなってきます。

紹介されている本が読みたくなってくるとともに、自分の青春に寄り添っていた本は何だったかな、と思えてくるエッセイです。

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呪縛が解けるとき。

2011-05-29 01:23:27 | 本(エッセイ・ノンフィクション他)

主人公が足を踏み入れたことのないバーに行ったとき、同席することになった美しいが教養のない男の子が彼女に訊く。「白鳥の湖ってどんな話?」

彼女は答える。「娘が悪魔の呪いによって白鳥に変えられる」「真実の愛だけが、呪いを解くの」「けれど彼は他の娘を愛する」「そうして、娘は命を絶つ」

すると男の子は(たぶん適当に)訊くともなしに言う。「ハッピーエンド?」と。

もう昨日の夜になりますが、友だちとレイトショーで『ブラック・スワン』を観てきました。

(以下、物語の核心に触れています。まだご覧になっていない方は、僭越ですがご注意ください)

心理サスペンスであろう、とは思っていましたが、想像以上に怖い映画でした。目をそむけるようなシーンもあり、正直途中まではどうしようかと思ったほど。

ストーリーは、真面目で努力家の主人公が夢にまでみた『白鳥の湖』の主役に選ばれたものの、清純で臆病な白鳥はハマり役だが奔放で官能的な黒鳥が演じ切れず、次第に追い詰められてゆく彼女の心の中を追ったもの……と一口に言ってしまえばそういうことですが、そのナタリー・ポートマン演じるニナの内的世界の怖ろしいこと!

次第に妄想に浸食され他ならぬ自分の影におびえるさまは、グロテスクな描写もあって凄まじいの一言でした。

けれど、クライマックスにさしかかり、彼女が黒鳥を踊るシーンになると、ニナに感情移入して脳内アドレナリンが出たのか、妙に高揚して気分がよくなって。

まわりすべてがきらきらし、降るような喝采とスタンディング・オベーション。多幸感というか万能感というか、身体がふわりと持ちあがるような気持ちでした。

そうしてラストシーンでは、不思議な満足感を感じ、たとえ命を賭けたとしても凡百の人間には芸術の高みへは辿りつけないのだし、これはやはりハッピーエンドなのではないか、と思ったのでした。

ことに、当然我こそはという気持ちも妬みもある仲間のバレーリーナたちが心からの賞賛を贈るシーンでは、それはその芸術が本物であるが故で、自分が本物だと思えることはなんと素晴らしいのかと思わずにはいられませんでした。

演出家は何度となくニナに「自分を解放するんだ」と囁きますが、彼女が解放されるにはそれしかなかったのかと切なさも感じます。けれど、本来芸術家に霊感を与える詩神(ミューズ)はその代償に生命を取り上げる死神に他ならないのだと、妙に腑に落ちた映画でした。

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紳士の偏食。

2011-05-18 18:20:08 | 本(エッセイ・ノンフィクション他)

寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫) 寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2007-02-01
俳優の児玉清氏が亡くなられたというニュースは、少しショックなものでした。

クイズショー『アタック25』の司会としてもなじみ深い方ですし、『白い巨塔』や、最近では『龍馬伝』などのドラマも印象的ですが、私はなによりも氏の海外ミステリなどの書評のファンだったので。

そうして、私が氏に強い印象を持ったのは、EQ(エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン日本版)に載ったエッセイにおける一言でした。

もう二十年も前に読んだものなので記憶が曖昧で間違いがあるかもしれませんが、こんな一文だったと思います。

《私は、クリスティーとクイーンの作品を、ひとつも読んだことがない》

え?と思いました。私もそうだったのですが、だいたい海外ミステリファンというものは、ドイル、クリスティー、クイーンから入り、三種の神器のごとく外せないものだと思っていたのです。

もちろん、いずれ別のジャンルや作家に興味が移ったりもするのですが、でも、クリスティーの『そしてだれもいなくなった』とか『アクロイド殺人事件』とか、クイーンの『エジプト十字架の秘密』とか『Yの悲劇』などを一冊も読まないなんて!と衝撃でした。

もっとも児玉氏の愛する作家は、フランシスとかグリシャムとかデミルとかクランシーとかであったので、骨太タイプの海外ミステリが好きなのかなぁ、という印象でした。

失礼ながら、少し趣味が偏っているのかも、と小娘の私は生意気にも思ったものです。

けれど、そのエッセイに反発したかと言うとそうではなく、逆に、“なんだかカッコイイ!”と思いました。多数派はこうかもしれないけど俺はこうだ的な文章が新鮮で、たしか当時ロス・トーマスとかも推してらしたような気がするのですが、思わず買ってしまいました。思うツボです(笑)。

もっとも、私は当時、ミステリ専門誌ではEQよりハヤカワ・ミステリマガジン派だったので、氏のエッセイはたまにしか読めなくて残念でした。

でも、EQが廃刊(休刊?)してからはハヤカワの方にも書かれるようになり、嬉しかったのを覚えています。

今になって思えば、氏は日本作家の作品も幅広く読んでいらっしゃって、偏食、と思ったのは私の誤解かとも思うのですが、そのキャッチーな一言と、自分の大好きな海外ミステリを、《こんなに面白い!》と強く推していたエネルギーは、本当に印象深いものでした。

知的で、紳士で、ダンディな方なのに、そんなときは自分の大好きなもののことを話す少年みたい。

もっと、おススメ作品を知りたかったです。

ご冥福を、心からお祈り申し上げます。

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胸の奥が熱くなる本。 その1

2011-02-03 00:15:08 | 本(エッセイ・ノンフィクション他)

おべんとうの時間 おべんとうの時間
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2010-03-30
ちょっと恥ずかしめの表題ですが、ストレートにそう言いたくなる本です。

去年のクリスマスに、友だちがプレゼントしてくれました。

カメラマンのご主人と、ライターの奥さんのご夫婦が、さまざまな職業の人にインタビューして、その方の普段食べているあたりまえのお弁当をのせた本。

ただ、それだけなのですが、お弁当というのはこんなにその人の人生に密着しているものか、と、新鮮な驚きを感じる本でした。

お弁当の本は元々好きでして、クウネルの『わたしたちのお弁当』とか、『かえる食堂のお弁当』とか持っているので、最初読みはじめたときは、「あ、インタビューと写真だけなんだ。レシピ無いんだね~」と意外な思いでした。

けれど、だんだんに、勧めてくれた友達の“自分も頑張ろう、っていう気になる”という思いが分かってきました。なんでもない普通の人の生活とお弁当、そしてそこに寄り添っている人生がじわじわと心にしみてくるのです。

最初に魅かれたエピソードは、砂丘の馬車の馬牽きをやっている、立花夏希さんのもの。激務を真摯にこなす、その一生懸命さ健気さがいじらしかった。

可愛いエピソードもありました。猿まわしの方が、奥様に恋人時代に作ってもらったお弁当の話。自分に作ってくれた三段弁当の豪華さもさることながら、猿の勘平ちゃんのための、ちっちゃなお弁当もあったとか。皮をむいた(リンゴだけはウサギちゃんになってた)フルーツが入ったそのお弁当を、勘平ちゃんがじっと見てた、という話には、思わず笑ってしまった。

でも、ことさら印象に残ったのは、秋元正次さんのエピソードでしょうか。幼い子供連れのインタビューで、充分話が聞けなかったので、3年半後再度インタビューを申し込んで快く受け入れられたものの、もうその方のお昼ご飯はお弁当ではなくなっていた。奥様が体調を崩されていたのです。

小さなお弁当箱に入っているものは、心尽くしの料理とそれに寄り添う、ささやかな日々の幸せなのだと思わされました。

そして。自分のためのお弁当しか作ったことがなく、それが気楽だと思っていた私ですが、誰かのために作るお弁当、というのはまた別の喜びがあるのではないかと思ったのです。

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