あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

チョコレートとダークワールド

2010-10-23 23:29:18 | 本(SF・ファンタジー)

The Best of Marion Zimmer Bradley (Daw science fiction) The Best of Marion Zimmer Bradley (Daw science fiction)
価格:¥ 358(税込)
発売日:1988-04-05
このあいだ、自分の部屋の樹海をさすがにちょっと片付けようと掘っていたら、思いがけないものを発掘しました

もう15年以上も前、自分が訳したたどたどしい訳文です。『The Best Of Marion Zimmer Bradley』というペーパーバックのイントロダクション部分でした。

なぜそんな文を書いたか、いきさつはこうです。高校の時の後輩で、マリオン・ジマー・ブラッドリーの作品が好きな人がいて、その人にこの本をプレゼントし、序文と、最も短くてタイトルの気に入った短編を訳した文を添えたのです。

今から思えば、迷惑だったと思います。誰もがお気に入り作家の未訳作品を、苦労して外国語を訳してまで、読みたいわけではないからです。

それに、私が素人訳した作品は、未訳でも無かった訳しているうちに気づきました。SFの短編集に入っていて、なおかつ読んだことのある作品だったことに。(たしか、『たんぽぽ娘』という短編集に入っている、『風の人々』という作品だったかと……)

でもその序文部分、読んでいて懐かしかったし、まさに物語を書くことになったきっかけというものに触れていて、興味深かったのです。

書き出しの文はまあまあの部分もあり、こっちも参考にできる訳文があったのかな、とも思いましたが、中ほどは失速してたどたどしくなるので、やっぱり自分で全部訳したのかしら、と思ったり。(もはや覚えていない……)

“ことのはじまりがどんなだったか、以前に話したことがあるかもしれない。あの日私はニューヨーク州のウォータータウンから、レンセルの田舎の家族の元へ帰る旅の途中で、乗り換え駅はウティカだった。そこで私は自分のために一箱のチョコレートと、そしてほとんど生まれてはじめて、自分自身で選んだ雑誌を買ったのだ。”

そうして、『スタートリング・ストーリーズ』という雑誌を買い、その中のカットナーの『ザ・ダーク・ワールド』という作品に魅せられ、それが作家になるきっかけとなったことが語られます。

(余談ですが、“それがヘンリー・カットナーの名義ではあったが、本当はキャサリン・ムーア・カットナーの作品であることは後に知った”とあり、それに、“『シャンブロウ』のC・L・ムーアか?”と私のメモがありました)

“振り返ってみて、私のそれまでの人生も決して波乱のないものではなかった。けれどあのとき、黄昏をゆく汽車の中で読んだ、カットナーのすばらしく神話的な世界を変えた人間の物語、正直言ってあれほどに輝くような喜びを与えてくれたものは、それまでになかった”

“その旅が終わる頃にはもうわかっていた。私は将来作家になって小説を書いていきたいけれど、でもそれはただの小説じゃない。私の書きたいのはサイエンス・フィクションなのだ”

こんな文章を再読(まったく覚えていませんでしたが)して、物語の種というものに興味のある私は嬉しくなり、また、その最初のきっかけとなった雑誌が、なにげなく一箱のチョコレートとともに買われたのも味わい深い気がして、掘り出してよかった、と思いました。

けれど。まだ二十代の頃、学生時代英語がかなり苦手だったにもかかわらず、お気に入り作家の未訳作品が読みたいばっかりにペーパーバックに手を出した私ではありましたが、最近はそんな情熱はほとんど無くなってしまった

遠いところにきたなぁ、とも思いました。

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猫たちはみんな、探してる。 『夏への扉』

2010-02-03 17:39:01 | 本(SF・ファンタジー)
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345)) 夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))
価格:¥ 756(税込)
発売日:1979-05

このところスッキリ晴れなくて猫がご機嫌ななめです。

午前中、母の部屋に陽が少し差し込むのですが、そこで日向ぼっこをするのが、ウチの老猫あやの、ささやかな楽しみなのです。

向かいのお家が増築してから、ウチはあんまり日が当らなくなってしまいまして、差し込む陽は幅が狭く、太陽が動くに従って(厳密にいえば動いているのは地球ですけど)、陽のあたるところも移り変わります。

母のベッドの上に丸くなっているあやを、母や私が、陽のあたるところへ抱き上げて少しづつ移動させるわけです。

(過保護でスミマセン老猫なので)

ところが曇っていると、当然陽は当たりません。あやはそれを確かめてすごすごと居間に戻るのですが、しばらくするとまた確かめに行きます。あきらめるまで、4、5回それを繰り返します

私はそれを見るといつも、『夏への扉』というSF小説を思い出すのです。この小説の主人公の愛猫ピート君は、冬のさなか、どこかに夏へと通じる扉があるはずだと、家じゅうのドアを主人公に開けさせます。

あー、猫ってこういうところあるよねー、と思うし、妙に愛おしい

最近、なんだか小説の方も、読み返したくなりました

なんかこういう懐かしい、なおかつスッキリするSFが読みたい気がします。

あと、『アバター』を観たとき、なぜかこの本を思い出したのですが、

人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫SF) 人間の手がまだ触れない (ハヤカワ文庫SF)
価格:¥ 840(税込)
発売日:2007-01

どんな小説だったか(短編なのは覚えてる)忘れてしまったので、これもちょっと読み返したくなりました。

私、ブログのタイトルにもしていますが、積読本山ほどありまして、それを減らすのが目下の課題ですが、“懐かし本”というのも、ついつい手に取りたくなったりして

いけないですねところでだいぶ猫から話題はズレましたが、いまあやは私の膝でぐっすり眠っています

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星新一は中学生のツボ?

2009-08-16 23:28:14 | 本(SF・ファンタジー)

ボッコちゃん (新潮文庫) ボッコちゃん (新潮文庫)
価格:¥ 500(税込)
発売日:1971-05

図書館に行くと、大人向けのほか、子ども室も必ずチェックします。

児童文学結構好きだし、実用書も、大人向けより分かりやすく、ビジュアル中心で見やすいので。

こないだ小さな男の子(4,5歳くらい)が、大型本の怪獣図鑑のようなものを書棚に収めようとしていたのですが、その棚の他の本も大きくて、本を押さえることができず苦心してました。

なので、黙って他の本を押さえてスペースを作ったら、その子も黙って本を入れて、その後、ものすごーく小さな声で「ありがとうございます」と言いました。私も、ごく小さい声で、「どういたしまして」と答えました。

閑話休題(それはさておき)。そんな子ども室の全集本の棚に、ジュニア向けの星新一全集があって、懐かしくなりました。

私も、中学生の頃読んだから。今でも、小学校高学年から中学生くらいの子が読むのではないでしょうか。

でも、私は当時は『ノックの音が』という本がお気に入りだったのですが、今この年になってみると、『ボッコちゃん』という話が、ちょっと思い出されて気になります。

かわいいタイトルだけど、これって哀切な話ですよね。

ボッコちゃんは人間そっくりに作られた美女ロボット。見た目は人間と区別がつかなくとも、人工頭脳はあまり優秀でなく、相手が言ったことをおうむ返しに、あるいはせいぜい、ちょっとアレンジして答えるだけ。

バーのホステスとして使われますが、美人なのですぐ人気に。会話でぼろが出そうになると、マスターが巧みに客の話を逸らします。

ところが、ひとりの青年が彼女を思いつめるあまり、悲劇が……。と、いう話だったと思いますが、青年とボッコちゃんの会話が絶妙。

「僕のことが好きかい?」「あなたのことが好きよ」「ほんとは僕のことを、愛していないんだろう」「あなたのことを、愛してはいないわ」「君ほど冷たいひとはいないよ」「私ほど、冷たいひとはいないのよ」……記憶をたよりに書いているので、違っていたらすみません(>_<)

でも、おうむ返しのセリフをつかって、こんな切ない会話が書けるとは!

余談ですが、筒井康隆の『座敷ぼっこ』も、これとはテイストの違う切なさで、好きでした。

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まぎらわしいのは自分のせい……。

2009-08-14 23:19:01 | 本(SF・ファンタジー)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫) 果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
価格:¥ 840(税込)
発売日:1997-12

うまく表現できないけど、故事が元になった比喩的表現とか、象徴的表現とかって、ありますよね。

いや、書いてて、自分でもなんのこっちゃと思いましたけれど(^_^;)

例えば、“カルネアデスの舟板”とか、“アリアドネの糸”とかです。あと、“ダモクレスの剣”とか。

それが、最近それぞれの意味が解らなくなったり、どれがどれやらごっちゃになったりしてしまうのです。

若い頃から、頭はあんまり鋭い方ではなかった(+_+)けれど、記憶力の方は人並みより少し良い、と自負していたのです。

でも最近はすぐ物忘れしちゃうし、人の名前は出てこないし……。たしかにアラフォーだけど、まだそこまで老け込む年齢じゃないのに!

と、思ってて、ふと、そういえば樹海(私の部屋の本の山のことです)の積読本の中に、小松左京氏の『ゴルディアスの結び目』があったよな、と思ったのです。

もともとこのブログを始めた動機のひとつは、積読本を読んで、そのうえで手元に置かなくてもいい、と思った本を整理しよう、と思ったことですから、この機会に読もう、と思い立って探してみました。

ところが!本棚から取り出した本を見て、私はぎょっとしました。

それは『ゴルディアスの結び目』ではなく、『果てしなき流れの果に』だったのです!

まったく違うじゃん……(・_・;)記憶力がいい、と思っていたこと自体が記憶違いかも、と思った一瞬でした。

仕方がないのでそれを、今読んでいます。

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気のまよいの英語 リーディング編その3

2009-08-13 23:29:47 | 本(SF・ファンタジー)

Delirium's Mistress: A Novel of the Flat Earth (Flat Earth Series) Delirium's Mistress: A Novel of the Flat Earth (Flat Earth Series)
価格:¥ 404(税込)
発売日:1986-06-04

私が最初に読みとおしたペーパーバックは、『ドラゴン・イン・デンジャー』という童話でした。

表紙に七歳以上、と書いてありました(^_^;)

そのあと、もう少し上の年齢向けのヤングアダルトもので、『ホーンテッド・ワン』というのをなんとか読みました。

これはホラー、なのかな。主人公は高校生で、泳ぎが得意なので海水浴場の監視員のバイトをしていて、そこで出会った女の子とほのかな恋をするんですね。ところがうっかり監視を怠って、あろうことかその少女を死なせてしまう。親友や、主人公に思いを寄せる幼なじみの支えで、ようやくその傷が癒えた頃、死んだはずの少女から電話がかかってくる……。

という先が気になる展開なので、なんとか読みとおすことができました。

それで調子に乗って、その頃好きだったファンタジー作家の未訳作品なぞ取り寄せましたが、それは私にはレベルが高すぎた(T_T)それに、今より取り寄せに時間がかかったので、本が届く頃には翻訳が出ちゃったりしました。

私が二十歳くらいの頃、ちょっとファンタジーブームがありまして。どこを切っても暗いマイクル・ムアコックなんかも読んだけど、私のお気に入りはタニス・リーでした。

一番好きだった作品は、小品だけど、『冬物語』。それと、“平たい地球シリーズ”ですね。彼女のエロティックすぎる作品は苦手だけど、このシリーズは作風とあってる気がする。

この、『熱夢の女王』、私にはハードル高すぎたので、翻訳と照らし合わせながらお気に入りの場面やセリフのみ読んだけど、そうすると翻訳家の方の力、って分かりますね。

ファンタジーだから、ちょっと美文調というか、ムードのある文になっていたりするのだけど、原文はけっこうシンプルだったりして。私が好きなこの作品は、この翻訳あってこそ?!とか思ったりしました。

でも、結局、買うのはけっこう買ったけど、読んだのはわずかで、それもいつのまにか読まなくなってしまいました。(もう何年も……っていうか、十年以上?)

これを機会にまた少しづつ読むかな……。(また川に流されたりして^_^;)

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