あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

聞いたことのない、不思議な声。

2011-01-18 00:32:06 | 本(ミステリ・アンソロジー、その他)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫) 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2008-12-25
友だちが、“絶対好きだと思う”と言って貸してくれた本です。

確かに好きなタイプのストーリーでした。でも、思った以上に変わってる!

過去直木賞の候補にノミネートされたりしているし、話題の作家なので読んだことはなくとも、少しはこの作家の作品についての知識はありました。

ファンタジー、に属する話なのかな、ということ。そして、独自の個性と文体を持っているということ。

でも、想像していた以上でした。ちょっとへんてこりんというのかな。突然、不思議な世界に入るというのか……。

しかも、大人になってしまうと子どもの頃のようには物語世界に入りきれないものですけれど、不思議にふいっと入りこんでしまって、連れ回されるというような……。

しかも文体も、独自の色というのか、自分の声というのか、とにかく、出会ったことのない感じなのです。

耳を澄ますと、それだけで頭がくらくらしそう。

そうして、“先輩”と“乙女”とともにあれよあれよと引きまわされ、最後はすとん、と(文字通り)着地します。

もちろんクスリ、と微笑まされる部分も随所にあって、すこしふわあ、っと、体が軽くなるような物語です。

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猫と虎。

2010-11-23 00:05:15 | 本(ミステリ・アンソロジー、その他)

最近新聞で、猫の優雅な水の飲み方についての記事を読みました。

犬はガブガブと飲むけれど、猫はちょっと舌の先を水につけて、すばやく舌を引っ込める。

そうして水柱が立ったところをパクッと飲むのだと。

それを知って、連想したのがこの本。

砂絵くずし―なめくじ長屋捕物さわぎ傑作選 (中公文庫 つ 7-4)
価格:¥ 357(税込)
発売日:1979-01

都筑道夫氏の、時代ミステリー短編集です。江戸時代の下町を舞台に、大道芸人たちが事件解決に活躍する。

探偵役は、“砂絵のセンセー”こと、色とりどりの砂で路上に絵を描く芸人。元は武士だった、とのうわさもある謎めいた人物。

このセンセーが、様々な謎を論理的にすっぱり解くわけですが、私が連想した一編は、人喰い虎の話。

それも、屏風に描かれた虎が、その絵を描いた絵師を喰い殺した、という不可解な事件。

あんまり書くとネタを割ってしまうのですが、その謎ときに、ちょっと猫の水の飲み方がかかわっています。

これを読んだのはもう20年も前ですが、鮮やかに思い出しました。

この短編シリーズは、『くらやみ砂絵』とか『ちみどろ砂絵』とかのタイトルで数冊のシリーズになっているのですが、その中からえりすぐったこの短編集はおすすめです。

時代小説で、もののけが起こしたような不可解な事件が出てくるけれど、それをきちんと論理的に解くのがミソ。

でも、ひとつ気になりました。最近高速撮影でわかったことのあらましが、どうして砂絵のセンセーたちには分かっていたのかな……

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番外編が嬉しい 『ミステリ・ジョッキー①』

2009-12-04 23:16:08 | 本(ミステリ・アンソロジー、その他)

綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(1) 綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(1)
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2008-07-25
これも、いつものパターンで、図書館で借りた本です。

しかも返却期間に読み終わらず、もう借りたの3回目。

4章ならぬ、4回、と分けられたこの本の、やっと4回の途中まで行きましたので、なるべく読みあげて、あす返却したいな、と思っている次第です。

さて、余談はさておきこの本ですが、有栖川有栖氏と綾辻行人氏が対談の合間に短編ミステリーを挟みこんで、作品とミステリの魅力について語り合うというもの。

ディスク・ジョッキー形式で、ラジオ番組ならここで一曲……、となるところを、かわりに短編小説を紹介する、という趣向が面白いし軽い感じでいいな、と思い、読んでみました。

第1回が、《それぞれの“ふるさと”》のタイトルで、紹介された短編は、『技師の親指』コナン・ドイル、『赤い部屋』江戸川乱歩。

以下、

 第2回 《早くも番外編》    『恐怖』 竹本健治

                   『開いた窓』『踊る細胞』 江坂遊

                   『残されていた文字』 井上雅彦

 第3回 《ミステリとマジック》 『新透明人間』 ディクスン・カー

                   『ヨギ ガンジーの予言』 泡坂妻夫

 第4回 《ミステリとパズル》 『黒い九月の手』 南條範夫

                   『ガラスの丸天井付き時計の冒険』

                   エラリー・クイーン

どれも面白い(ホームズものなんか、懐かしいやら、改めて読むと結構面白いわ、と感心したり)のですが、私が一番嬉しかったのは、第2回《早くも番外編》ですね。

江坂遊氏の作品は初めて読みましたが、竹本健治氏と、井上雅彦氏の作品は、一時結構好きだったので。

(竹本氏は、“ゲーム殺人事件”シリーズとか、ウロボロスとか匣とか好きでしたが、SF大丈夫な方なので“パーミリオンのネコ”シリーズも好きでした。井上氏は、前も書いたと思うけれど、“よけいなものが”というショートショート好きだった!)

泡坂氏の“ヨギ ガンジー”が取り上げられていたのも嬉しかったな。どの短編も面白いですし、有栖川、綾辻両氏の解説がつくとまた、2倍楽しいです。

これは①ですが、②も出ているようで、読みたい!と思いました。

図書館にあるかな……それとも買うべきか……

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さばさばと、のユーモアとせつなさと。

2009-07-17 00:34:33 | 本(ミステリ・アンソロジー、その他)

月の砂漠をさばさばと (新潮文庫) 月の砂漠をさばさばと (新潮文庫)
価格:¥ 540(税込)
発売日:2002-06

ようやく、というのも変ですけれど、北村薫氏が、直木賞を受賞されましたね。

なんだかしみじみ嬉しいです。

とはいえ、私は北村氏の作品は、エッセイやアンソロジー(北村氏自身の作品ではなく、氏の愛好する作品を集めたもの)はけっこう読んでいるのですが、あんまり小説の方を読んでいないのですね(^^ゞ

だからというのでもないのですが、私の愛する北村作品はこの、『月の砂漠をさばさばと』

本当は、児童書に分類される作品なのでしょうね。

小学生のさきちゃんと、“お話を書くひと”であるお母さん。ふたりは、ふたりだけの家族。

そのなにげない日常を綴った小さな話をあつめた短編集で、言いまちがいの話とか、思わず笑ってしまうような話やかわいい話がいっぱい。

でも、そのなかにふと、胸を締めつけられるような切ないエピソードもあったりして。

最後まで読みとおすと、“月の砂漠をさばさばと”という、ちょっと変わった、楽しいタイトルが、そこはかとなく憂愁を秘めたものにも感じられるのです。

ひろい砂漠をどこまでもゆくのは、なにも駱駝に乗った二人連ればかりではないなぁ、と思ったりして。

日常のさりげない謎を取り上げる視線はこの作品にも活きていて、大人の方でも楽しめるのでは、と思います。

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つなわたりの人々

2009-06-05 00:17:27 | 本(ミステリ・アンソロジー、その他)

招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫) 招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:1990-03

『夜光の階段』のドラマは、そろそろ終盤になってきましたが、原作未読なのでどう収束するか、興味のあるところです。

私はもともとピカレスクロマン、というのがわりと好きなのですが、それは多分、自分にないものに対する憧れなのではないかと自己分析しています。

私は小心者なので、基本、平然と悪事はできないと思うので。

が、逆に、“この犯罪者の気持ち、わかる!私もやりそう!”というのもあります。

たとえば、私はシェークスピア作品では『マクベス』が一番好きで、というかシェークスピアというくくりがなくてもこの物語はたまらなく好きなのですが、主人公マクベスはけして悪人ではないですよね。

それどころか、彼をそそのかす彼の妻もまた、悪女であるとは私は、思えない。

けれど、マクベスは予言に惑わされ、主君を暗殺し、それから次々に周りの人間を殺すことになり、最後は自滅する。

でも、私にはわかる気がするんです。ごく普通の、むしろ善人が悪を行う気持ち。その、もう後には引けない、という思いつめた感情。

この、ブランドの短編集の解説に、そんな不器用な、けして悪人ではない犯罪者の心持について、実に的を射た表現がありました。

彼らは、綱渡りの綱の上にいるのだと。

もう後戻りはできない。ちょっとでもためらったら落ちてしまう。そんなぎりぎりの、追い詰められたような感情が、私は共感できる気がします。

この中の1つの短編のラストで、コックリル警部が犯罪者の腕をつかんだとき、自分が掴まれたような気がしましたもの。

あと、善人の転落の物語でお気に入りなのは、ウイリアム・アイリッシュの『私が死んだ夜』。これもたまらなく好きだった。

そういえば余談ですが、アイリッシュといえば、『夜光の階段』の主人公を演じている藤木直人氏が、『喪服のランデブー』の主人公を演じたこともありましたっけ。

松本清張もいいけれど、アイリッシュの哀切な作品も、忘れがたい魅力がありました。

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