十二ヶ月―栗本薫バラエティ劇場 (新潮文庫) 価格:¥ 530(税込) 発売日:1985-12 |
先日、栗本薫氏の訃報があった。
まだ、それほどの年齢ではなかったで驚いた。
以前、婦人科系の癌を患ったんじゃなかったっけ……パワフルな人だったからそれを感じさせなかったけど、身体、きつかったのかな、とも思った。
それから、ファンの大多数の人もそうだと思うけれど、気になったのは、あの日本一の(世界一の?)大長編『グイン・サーガ』はどうなってしまうのか、ということ。
かの巨大長編の第1巻が発行されたのはちょうど私が高校に入った頃で、友達に借りて最初の何巻かは読んだけれど、当時から、“百巻完結か、大長編苦手だし、私にはついて行くの無理だな……”と思った。
予想は当たって、その後パタリと読まなくなってしまった。けれど、専門学校生の時本屋でバイトしていたのだが、当時はかなり売れ筋の本で、平積みの山が瞬く間に無くなっていく様子は気持ちいいくらいだった。
『僕らの時代』などのミステリーや、エッセイも何冊か読んだ。が、どれも面白くはあったが、正直、好きになれないところもあった。
けれど、大変な早書きで、また一気呵成に書いて、書き直しをほとんどしない、という話を聞いていたので、“現代のシェーラザードだな、掛け値なしの天才かも”とも、思っていた。
そうして、十代の私がこれだけは本当に好きだった、という作品は、実は地味な短編集の、これ。
1月から12月まで、それぞれの月をテーマに書かれた、さまざまなジャンルの物語。(ミステリーもあれば時代小説も、ファンタジーもあり。『グイン・サーガ』の外伝もあった)
彼女の作品の中では、マイナーな小品、というところかもしれないが、忘れられない一冊だ。
突然去った現代のシェーラザードの、冥福を祈りたい。