あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

大雪の一日

2014-02-10 23:46:15 | 日記・エッセイ・コラム

雪
価格:¥ 3,360(税込)
発売日:2006-03-30

8日の土曜日は思いがけない大雪でした。45年ぶりだとか。

土日が基本お休みでない私は、先月から申請して取った休みでしたのに、友達との夕食の予定は当然キャンセル。とっても残念でした。

でも、昼、そして夕方になってもしんしんと雪は降りやまず、もう笑うしかない状態。
この状況を面白がるしかないね、と思って手に取ったのが、長いこと文字通り積読で、読んでいなかったオルハン・パムクの『雪』でした。
“雇われ記者の主人公が訪れたトルコの地方都市カルスは、例年にない大雪で交通が遮断され、陸の孤島と化していた。彼はそこで市長殺害事件と、少女たちの謎の連続自殺事件を追うが、学生時代の憧れの女性と再会し心ときめかせ、そしてまた、イスラム過激派に対抗するクーデターに巻き込まれてゆく……”というこの話は、とにかく最初から最後までずーっと雪が降りしきっていて、こんな状況にはぴったりに思えたのです。

イスタンブール出身のノーベル文学賞作家の作品、それも彼の最初で最後の政治小説、となれば読みにくいだろうと覚悟したのですが、これがけっこうするすると入ってくるんですね。
そして、主人公はしばしば、“雪”から孤独を連想するのですが、その冷やかな寂しさが、読んでいるこちらの胸にも迫ってくるのです。
『自殺の原因はこの少女たちが非常に不幸であったこと』『しかし、不幸が自殺の真の原因だったとしたら、トルコの女たちの半数は自殺することになる』また、主人公が取材の中で絶望感を感じたのは『自殺する少女たちが自殺を邪魔されないためのプライヴァシーと時間をやっとの思いで見つけられたことだった』などの文章には、なんだかんだ言っても平穏な日本で暮らす身には打ちのめされるものがあったり。
作者自身が政治小説と言う通り、社会派のシリアスな物語なのですが、すこし不思議な部分もあるのです。詩人が本業の主人公が作中で何かの啓示にうたれたように次々に詩を書くのですが、巻末にわざわざタイトルと登場するページ数が示されているのに、詩の本体は引用されないのです。なにかの暗喩(メタファー)なのかな、と思ったり。

降りしきる圧倒的な雪の日にぴったりな、やはり手ごわい小説なのでした。

コメント (2)
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