あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

やっぱりね、と少し思った。 『小生物語』

2010-03-14 23:13:19 | 本(エッセイ・ノンフィクション他)

小生物語 小生物語
価格:¥ 900(税込)
発売日:2004-07

これは図書館に行ったとき、“本日返却された本”のカートにあった一冊でした。

ちょっと面白そうかも、と思って借りてみました。

普通の(?)ウェブ日記かと思ったのでちょっと印象は違いましたが、奇妙なテイストの面白い本でした。

あとがきに、“フランケンシュタイン博士が死体を使って人間を創造したように、わたしは「小生」という呼び方を使って、記述上だけに存在する「私ではない日記の書き手」を創造しようと考えた”と書いているように、このネットの日記をまとめた本は、虚実が混在しているのです。

それは読者の混乱を引き起こし、そのことから“変な人”と思われてしまったことに、作者も困惑したようでした。

けれど、私はあまり混乱しなかった……というか、ちょっとこの本は、私の考えていた作家の日記に近いものでした。

もちろん、本当に体験した出来事だけを書いている日記やエッセイも多いと思います。

でも、全くプライベートなものならともかく、読者に読ませることを前提に書いているものは、当然読者を楽しませたいわけで、ちょっと話に色をつけたり、出来事の順番を入れ替えたり、ということはあるのじゃないかな、と思っていました。

ときには、“すべて創作では?”と疑ったこともあります。

たとえば、片岡義男氏のエッセイで、友達の家(アメリカ)で留守番をしたとき、テレビのニュースを見て、不倫相手を射殺した女性が、なぜかその男の家の冷蔵庫の中にあった複数のスイカも全部、撃っていたのに興味を持った、という記述がありました。

そして、その後読んだ片岡氏の短編に、そのままのシチュエーションを使ったものがあったのです。

普通に考えれば、そのニュースからヒントを得て短編小説を書いた、ということなのでしょうが、いや、そのニュースも創作かも……いや、留守番したこと自体も、フィクションなのかも……とつい、考えてしまうのです。

でも、白黒つけたいわけではないんです。どっちなのかな、と考えること自体が楽しいというか、その宙ぶらりん感が嫌いじゃない。

この本も、日常雑記かと思っていたのが、ふわぁ、っと不思議な世界に入り込んでしまうような日記が時々あり、それがなんとなく、楽しかったのでした。

そうして、“やっぱりね。作家って、嘘つきだわ”と、ちょっと微笑みたくなった本でした。

コメント
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