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Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

頚椎症1

2019-06-10 | 頚椎神経根症

 「頚椎症(Cervical Spondylosis:サービカル・スポンディローシス)」は、「頚椎脊髄症(CSM:Cervical Spondylotic Myelopathy:サービカル・スポンディロティック・ミエロパシー)」と「頚椎神経根症(CSR:Cervical Spondylotic Radiculopathy)」に分類されます。

 2005年に日本整形外科学会は、「頚椎脊髄症診療ガイドライン」を作成しました。これは、「Mindsガイドラインセンター」で読むことができます。

Mindsガイドラインセンター
http://minds.jcqhc.or.jp/n/

 「代替医療(鍼,灸,マッサージ,整体,カイロ)は有効か」という問いに対して「Grade I :代替医療が有効である科学的根拠はない」という見解が掲載されています。これは「頚椎脊髄症(CSM)」なので当然です。

頚椎症性脊髄症の診療ガイドライン
田中 雅人 et al.『岡山医学会雑誌』
Vol. 122 (2010) No. 1 P 67-71
https://www.jstage.jst.go.jp/article/joma/122/1/122_1_67/_pdf

2010年の『岡山医学会雑誌』論文は、わずか4ページの「頚椎脊髄症診療ガイドライン」のダイジェスト版なので読み易いです。

 本当に難しいのは、適応か不適応かの鑑別だと思います。最近の海外の文献では、要注意の「レッド・フラッグ(Red flag)」の徴候が明記されているので、まだ、わかりやすいです。

Cervical SpondylosisのRed Flags
http://patient.info/doctor/cervical-spondylosis-pro

【レッド・フラッグ】
両手指のしびれ
歩行障害(Gait disturbance)
手の巧緻性障害(clumsy hands)
性機能・膀胱直腸障害(Loss of sexual, bladder or bowel function)
進行性の症状(Insidious progression)
難治性の夜間痛(Intractable night pain)
複数のミオトームの弱さ(Weakness in more than one myotome)
複数のデルマトームの感覚消失(Sensory loss in more than one dermatome)
などがあります。

【頚椎症性脊髄症(CSM)の鑑別】
鍼灸師が頚椎性脊髄症(CSM)の診療で出来ると望ましい手技は以下になります。
足では、バビンスキー反射(Babinski reflex)、足クローヌス(Ankle Clonus)の手技。
失調性歩行では、ロンベルク徴候(Romberg's test)。
手では、ホフマン反射と「10秒テスト(ten second test)」、「フィンガー・エスケープ・サイン(FES:Finger Escape Sign)」の手技。
ケルニッヒ徴候(Kernig's sign) 、
ブルジンスキー徴候(Brudzinski's sign)、
バルサルバ・テスト(Valsalva test)、
レルミッテ徴候(Lhermitte sign)


【頚椎症性神経根症(CSR)の鑑別】
各C5-T1のデルマトームに沿った知覚検査。
各C5-T1の支配する筋肉の徒手筋力検査法(MMT:Manual Muscle Testing)
深部腱反射(Deep Tendon Reflex)では、上腕二頭筋反射(Biceps reflex)、腕橈骨筋反射(Brachioradialis reflex)、上腕三頭筋反射(Triceps reflex)の手技。
振動覚(Pallesthesia)の検査。
「スパーリングテスト(Spurling test)」:スパーリングテストの感度(Sensitivity)は95%、特異度(specificity)は94%なので、科学的根拠があります(※1)。

【頚椎症の神経根症と脊髄症の手術のシステマティックレビュー】
2010年の「コクランシステマティックレビュー」
「頚椎神経根症や頚椎脊髄症の手術」
Surgery for cervical radiculopathy or myelopathy
Ioannis Nikolaidis
Cochrane Back Group Published Online: 20 JAN 2010
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD001466.pub3/abstract

「頚椎神経根症の手術は、理学療法や頚椎カラーよりは痛みから開放されるという質の低い証拠がある。しかし、これは、長期的には、わずかか、ほとんど無いと言ってよい差異である」
There is low quality evidence that surgery may provide pain relief faster than physiotherapy or hard collar immobilization in patients with cervical radiculopathy; but there is little or no difference in the long-term.

今回のリサーチで一番、収穫なのは、「頚椎神経根症の手術療法は、痛みに対して、長期的には効果はわずかか、ほとんど無い」という結果でした。

※1:
The correlation between Spurling test and imaging studies in detecting cervical radiculopathy.
Shabat S, Leitner Y, David R, Folman Y.
J Neuroimaging. 2012 Oct;22(4):375-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21883627


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