福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

まさに本物! 大野和士 魂の表現者

2014-06-30 21:43:02 | コンサート




今宵のコンサートに立ち会えたことは本当によかった。まさに稀有の体験であった。

日本人であるボクが言うのも、誠におこがましい話だが、大野和士ほど日本人の指揮であることを忘れさせてはくれる人は居ない。

まず、歌心。
こんなに伸びやかに、しなやかに、美しく歌う指揮というのは有るようでなかなかない。それに卓越したリズム感やら、計算され尽くした造形美があるのだから鬼に金棒である。

しかし、何より大野和士が日本人離れしていると思わせたのは、その生み出された音楽の多層性、多様性ではなかろうか?
弦、木管、金管、打楽器、コーラスが渾然一体となりながらも、それぞれの声部、パートにそれぞれの味わいがありながら、全体としての統一も取れている、という点が素晴らしいのだ。

さらに、ただ耳がよいとか、棒が起用だとかに留まらない魂の躍動。止むに止まれぬ舞台人としての衝動を内に秘めている。
これこそ、表現者として、もっとも大事なことであり、それを目の当たりにし、客席にて高揚感を共有できたことは、幸せであった。

フランス国立リヨン歌劇場管のメンバーの個々の実力も素晴らしく、洗練され、色彩感に溢れながら、温もりのあるサウンドに酔いしれた。

コンサートのチケット代金は、S席で13,000円! ウィーンやベルリンのオーケストラのおよそ3分の1というリーズナブルな価格で、これだけ充実したプログラム、優れた演奏を味わえるのであるから、ひとつのコンサート通いの楽しみ方として、「敢えて、超メジャーは狙わない」という道もあるな、とも思った次第。

アンコールは、フォーレ「ペレアスとメリザンド」から終曲「シチルアーノ」とビゼー「アルルの女」から「ファランドール」。
その静と動、夢と躍動の対比がまた心憎いばかりであった。



この写真は、休憩時間から第二部開幕を告げる鐘。電子音やブザーに較べ、各段に趣味が良くて、気に入っている。
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いざ、初台へ!

2014-06-30 18:03:35 | コンサート


今宵は、大野和士指揮 フランス国立リヨン歌劇場管のコンサート。

オペラ「ホフマン物語」も含め、唯一スケジュールの空いていた日のプログラムが、ラヴェル「ダフニスとクロエ」全曲、「ラ・ヴァルス」ほかとは、最高の巡り合わせ。

ロザンタール、モントゥー、クリュイタンスら、往年の名演奏を聴き慣れた耳に爽やかな新風を吹き込んで欲しい!

春から続いたコンサート通いラッシュも、今宵で一区切り。

愛知祝祭のブルックナー8、スウィングロビンのセカンド・コンサート、各地のマタイ、長岡の第九、厚木のモツレクなど、自分の演奏やレッスンに集中の日々が続くのだ。
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ショルティ「リング」 アナログ vs Blu-rayオーディオ

2014-06-30 16:47:21 | レコード、オーディオ




ショルティ&ウィーン・フィルによる「リング」。

オリジナル・アナログ盤と最新のBlu-rayオーディオ・ディスクとの音質比較。

アナログの圧勝。
オリジナル・マスターテープの損傷の激しさゆえ、Blu-rayオーディオのマスターが、CD用のマスタリングというのだから、仕方ないのないところ。

おっと、もう出掛ける時刻。
後ほど、補筆訂正します。
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幻のデッカ盤 クナッパーツブッシュの「神々の黄昏」

2014-06-30 01:20:28 | コーラス、オーケストラ

 

クナッパーツブッシュの「神々の黄昏」1951年バイロイト・ライヴである。

改めて述べるまでもなく、カルショー&ウィルキンソンの黄金コンビでによって録音されながらも長らく日の目を見なかったものだ。

その幻と言われた「リング」全曲のうちの「神々の黄昏」が英テスタメントからCDとしてリリースされたのは1999年。

その後、しばらくしてアナログ盤としてもリリースされた(正確な日付は失念)。

 

このレコードはどうしようもなく素晴らしい。

スタジオ録音では聴くことの出来ない感興豊かなクナッパーツブッシュの指揮ぶりを、超優秀な録音によって生々しく体験できるからである。

残る「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」のテープは、デッカの倉庫に残っていないということだが、わたしの命のあるうちに発見されることを願ってやまない。

 

ところで、数年前、この幻の「神々の黄昏」に英デッカのテスト・プレスがオークションに出品されていたので、思い切って落札した。

ただし、全曲ではなく、片面ずつの7枚。

恐らくは、全6枚12面が完成形であるから、5面分が欠落していることになる。

序幕はまったくなし。

あるのは、第1幕は1面分のみ、第2幕はコンプリートながら、第3幕ははじめの2面半のみとなる。

これは、どういうことかというと、「夜明け」「ジークフリートのラインへの旅」「ジークフリートの葬送行進曲(その大部分)」「ブリュンヒルデの自己犠牲」といった、

単独でも聴かれるような聴きどころのナンバーが含まれないことを意味する(当然ながら、面の切り方はデッカとテスタメントでは一致しない)。

 

誰かが、そこだけ保管して、残りを放出したのか?

とも想像してみたりしたが、あながちそうとも言えない。

この7枚にはインナースリーヴに通し番号が1から7まで振ってあり、それが写真の4枚目の「4」と一致する。

ということは、少なくとも、このテスト盤の前オーナーはこの7枚をセットとして保有していたと可能性が高い。

また、正確に言うなら、「ジークフリートの葬送行進曲」ははじめの数小節だけは入っている。

音楽がここから爆発するぞ、という手前で第7面が終わるのだ。

この切り方から、これは仮のテスト盤だったということも考えられるが、切りやすい場所がここしかなかった、とも考えられる。

 

第3幕のそれ以降のみ散逸したという可能性はあるが、序幕から第1幕前半は存在しなかったことは確実である。

或いは、前オーナーが、誰かと山分けをして、その残り・・・、ということも有り得なくはないけれど、

仮にそうだとしても、それを入手できる見込みは限りなくゼロに近いだろう。

しかし、どこかには存在していて欲しい。

 

さて、その音であるが・・・。

悪いわけはない。

同年に収録された「パルジファル」の英デッカ・オリジナル盤のクオリティとほぼ同一と言ってよいだろう。

もちろん、古い盤ゆえ、バックグラウンドのノイズがあるなど、完璧な状態ではない。

しかし、やはり、「デッカの音」というメリットは大きい。

全曲でないのは残念ではあるが、この紛れもない英デッカの音と、ダイナミクス・レンジが広く、静寂性に優れた英テスタメント盤の音との両方を味わうことの出来るのは幸いなことである。

ああ、今宵も寝る時間が惜しい・・・。






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