福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

カルミナ・クァルテットを海老名で聴く

2015-11-29 01:21:09 | コンサート
今日の午後、海老名市文化会館小ホールにて、カルミナ・クァルテットを聴いた。4人の息の合った素晴らしいアンサンブルであったが、特にヴィオラのウェンディ・チャンプニーの慈母のように深々とした情感に打たれた。

本編も良かったが、アンコールのモーツァルト「不協和音」第2楽章こそは絶品。
彼らの「ハイドン・セット」全曲を聴いてみたいと思わせた。

ラヴェルの弦楽四重奏曲は、一昨日、王子ホールにてモディリアーニ・クァルテットで聴いたばかり。中1日で二度もこの名曲の生演奏に触れる機会もそうそうあるものではなかろう。両クァルテットの資質の違いが興味深かったが、今宵は労力を惜しみ書かないでおく。

開演前、別室で行われた40名限定のハイドン「皇帝」のレクチャーは、第1ヴァイオリンのマティアス・エンデルレ氏と上記のチャンプニー女史の深い教養と温かなお人柄の滲み出た素晴らしいものであった。ハイドンの創作に於ける職人技を演奏を交えながら、分かりやすい言葉で解説してくれたのは有り難い。
本来、チケット完売であったのを、当日にキャンセルが入り聴講することのできたのは、まことに幸運であった。
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カラヤン&フィルハーモニア管によるベートーヴェン交響曲全集を国内初期盤で聴く

2015-11-25 09:24:09 | レコード、オーディオ



昨日、エリー・アメリング女史マスタークラス午前の部の後、2時間ほどの自由時間ができた。京都の紅葉見物をするには寸法が足らないので、開店間もないディスクユニオン梅田店を訪ねることにした。我が大阪フィル合唱団指揮者の就任に合わせたようなタイミングでの出店・・・。困ったものだ。

時間潰しの冷やかし程度のつもりで伺ったものの、よい収穫があった。その筆頭がカラヤン&フィルハーモニア管によるベートーヴェン交響曲全集の国内初期盤、日本コロムビアによる9枚組ボックスである。



言わずと知れたカラヤン初のベートーヴェン交響曲全集、1951~55年のモノーラル録音。この国内盤セットの発売が1962年頃といえば、ボクとほぼ同い年。ブックレットには、村田武雄と小澤征爾による「カラヤンをめぐって」という対談も収められている。



手始めに5番と7番を聴いたが、心から愉しんだ。後に音楽界の頂点へと登り詰めた男だけがなし得る憎らしいほどまでに自信に満ちた音。弦の調べには艶やかな色香が立ち上り、そこここに、はち切れんばかりのエネルギーが沸き立っている。

アナログ時代のベートーヴェン交響曲全集といえば、7枚組が標準だったと記憶する。即ち、#1 #2 #4 #5 #8に各1面、#3 #6 #7 に各2面、#9に3面を割り当てた計14面である。

ところが、この国内盤ボックスセット。カラヤンの颯爽としたテンポにソナタ形式の提示部をリピートしないというスタイル(第5を除く)にも関わらず、9つの交響曲と3つの序曲とアリアに9枚のレコードを費やすという贅沢なカッティング。例えば、「運命」を片面に収めるのが普通だった時代に、第1面は第1、2楽章、第2面に第3、4楽章とシュヴァルツコップの歌うアリアという余裕を見せるのだ。


この姿勢は音質に反映されて当然であり、英オリジナル盤は未聴ながら、これはこれで、素晴らしく音楽的に鳴ってくれている。上に述べた弦の艶やかな色香もCDでは再現できないものだろう。

新装発売された当全集のCDボックスには、#8 #9のステレオ・バージョンも収められているという。実験的に別マイクで収録されたもののようだが、一度聴いてみたい気がする。

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大原美術館 ~ エリー・アメリング女史マスタークラス

2015-11-23 22:48:54 | コーラス、オーケストラ


女声合唱団 KIBIの本番翌日の今日、久し振りに大原美術館を訪ねた。これだけ毎月、倉敷に通っていれば、いくらでも訪ねる機会がありそうなものだが、そうでもない。

土曜日は午前のヴォイス2001のレッスンを終えてから倉敷に向かうため、到着したら間もなくレッスン開始。日曜日のレッスンが終わると真っ直ぐ帰宅する。仮にもう一泊滞在を伸ばしたとしても翌日の月曜日は、大原美術館の休館日なのである。

と、書きながら、日曜日の朝一番なら可能と気付いた。次の機会には早起きに挑戦してみるか・・。

大原美術館の印象は素晴らしいものであった。収蔵品の充実ぶりは目も眩むほどだが、ミレー、ミロ、ピカソ、ルノアール、ルソー、ルオーなどの西洋の作品以上に、青木繁、岸田劉生、児島虎次郎などの日本の作品に魂の懐かしさを覚えたのは、「海道東征」によって日本人のDNAが揺り起こされたこともあるのだろうか?

その後、エリー・アメリング女史のマスタークラス(公開レッスン)を聴講するため新幹線を新大阪で下車し、芦屋のアマックホールへ。

アメリング女史の言葉には重みがある。日本人には把握し難い西洋音楽の核となるもの、根幹に関わることがスッと語られる。それが何であるかは、もう少し自分の中で熟成させるまで述べないことにするが、得るものは大きかった。

昨日から始まったマスタークラスは明日の午前、午後のレッスン後、夕刻には受講生によるコンサートが行われるが、わたしは明日の午前の部を聴講した後、富士ベートーヴェンコーラスに向かうこととする。

このような意義深いマスタークラスを企画、運営してくれているメゾソプラノ歌手にして友人の廣澤敦子さんに心から感謝するとともに、この偉業を讃えたい。

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女声合唱団 KIBI コンサート無事終了

2015-11-22 23:23:37 | コーラス、オーケストラ


お蔭様で女声合唱団 KIBI 第2回定期演奏会は無事に終了しました。

特に信長貴富先生の「くちびるに歌を」の4曲(とりわけ、後半の2曲「秋」「くちびるに歌を」)は、女声合唱団 KIBIとしてのベストパフォーマンスだったと言えましょう。

アンコールは、やはり信長先生の「空の名前」より「夕焼け」。
「世界が平和なら、夕焼けはバラ色」「夕焼けが火の色に、血の色に見えることなど、ありませんように」という作品の平和を願うメッセージがジワジワと聴衆の心に伝播していくことを、感じての幕となりました。

多くの方より、第1回に較べ、合唱団として大きく成長した、とのご感想を頂戴できたのは嬉しいことです。

さて、ボクが驚いたのは、打ち上げの席で、次に取り組む作品の楽譜と音取りCDが配布されていたことと。この前向きさが、女声合唱団 KIBIの真骨頂ですね。

なお、上掲のリハーサル中(コチャール作曲 第2のミサ)の写真は、愛すべきステマネHさんの撮影のものです。
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いよいよ本番 女声合唱団 KIBI

2015-11-22 00:10:44 | コーラス、オーケストラ


女声合唱団 KIBI ゲネプロは恙無く終了。新倉敷の玉島市民交流センター「玉島湊ホール」は、とても響きがよく歌いやすいホール。

よいパフォーマンスをお聴かせできることと思います。

皆様のご来場をお待ちしております。



♪バスでお越しの方は、新倉敷南口より玉島中央町行きに乗り「文化センター入口」(約5分)にて下車してください。
12時40分、または13時40分発です。

お友だちとタクシーご利用もオススメします。宜しくお願いします。


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我が「海道東征」終わる ~ 難波から吉備へ

2015-11-21 08:36:07 | コンサート

昨夜、大阪フィルによる「海道東征」公演は大盛況のうちに終わった。終曲では、感動のあまり涙を堪えきれないお客様も少なくなかったという。かくいうわたしも、信時潔の音楽の優しい美しさ、虚飾のない力強さに改めて胸打たれたひとりである。

今回、大阪フィル合唱団とともに目指したものは、「マエストロを超えよう」というもの。本番直前の舞台裏では、コーラスの志気を高めるため、マエストロの指揮に従うだけでなく、これまでに育て、積み上げてきた自分たちの「海道東征」を思い切りぶつけていこうと檄を飛ばしたものである。

その目標は大いに達せられ、大阪フィル合唱団は、その想いを自分たちの声とハーモニーで歌いきってくれた。また、今回は、オーケストラとの連帯感も前回のドヴォルザーク「スターバト・マーテル」のとき以上に強まったことを感じられたのも嬉しかった。

さて、本来なら明日、22日(日)の追加公演にも立ち会うべきところだが、大事な先約があり叶わない。その先約とは1年前から決まっていた女声合唱団 KIBIの第2回定期演奏会である。神武天皇とは逆コースで、難波から吉備に向かうという寸法である。

明日の海道東征のチケットは完売なので、お時間のある方は是非とも倉敷まで足を運んでほしい。

それにしても、「海道東征」とお別れするのは名残惜しい。本公演、追加公演ともに即日完売。さらに演奏もこれだけ好評だったのだから再演のあることを期待したいと思う。「海道東征」を聴くなら大阪フィル、と全国の音楽ファンに集って頂ける存在になれれば嬉しいではないか。



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伎芸天に再会 ~「海道東征」オケ合わせ2日目を前に

2015-11-20 00:01:53 | コーラス、オーケストラ


明日(20日)の「海道東征」本番を控え、昨日、今日とオーケストラ合わせのため大阪に連泊。ひとところに滞在するということは、日頃、東京~富士~長岡~大阪~東京~倉敷・・などとムチャな移動のつづく日常の中にあって、まるでオアシス。新幹線に乗らずに過ごすことが、こんなにも心身に楽なのかとホッとしているところ。

今日も夕刻の稽古開始まで時間があるということで、思い立って奈良・佐保路の秋篠寺を訪ねることにした。お目当ては、もちろん、「衆生の吉祥と芸能を主宰者する天女」であるところの伎芸天である。

音大受験の折にお世話になったK先生に「是非とも見てきなさい」と言われ、はじめてこの寺を訪れたのは、大学在学中のこと。朝比奈先生&大阪フィルのコンサート鑑賞と絡めて予定を組んだ記憶がある。聴いたのは、ザ・シンフォニーホールにおけるブラームスの交響曲第1番&ピアノ協奏曲第1番という魅惑のプログラムで、ソリストは内田光子であった。





その後何度か当寺を訪れたものの、今回の訪問はなんと25年ぶり。歳を重ねた分、感銘の質や度合いは違っていた。境内の静かな佇まい、一切の無駄のない潔さなどに胸打たれる、などということは、かつてにはなかったことである。

それにしても、伎芸天のたおやかな美しさは言葉にならない。その優しいお顔立ち、そして、色香すら漂う腰部の曲線美! その下にしばし佇み、「マタイ受難曲」の成功をお祈りした次第(海道東征でなくてスミマセン・笑)。



音楽家としての初心に立ち帰るためにも、度々訪れることとしよう。

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信時潔「海道東征」オーケストラ合わせと京都散策

2015-11-19 00:02:34 | コーラス、オーケストラ


今宵は北原幸男先生による信時潔「海道東征」のオーケストラ合わせ。「海道東征」は神武天皇の瑞穂の国より大和を目指す東征を題にした交声曲である。

この作品を大阪フィルと合唱団が演奏することは、わたしの合唱指揮者就任前に決まっていたことだが、指導するための資料として入手したSP録音の復刻CDを聴いて、作品の持つ素朴さと大らかな力強さに忽ち魅了されたものである。

信時潔の熟達のオーケストレーションを、間近に体験できたことは貴重な体験であった。

と、ここで、演奏会の宣伝をするのが常道なのだが、今回ばかりはそれは叶わない。20日(金)の公演、22日(日)の追加公演ともにチケットが即日完売されたためである。演奏機会の少ない「海道東征」を実演で聴きたい、という方がこんなにもいらしたのか、と驚くばかり。そのご期待に応えるコーラスとしなくては!



ところで、そのオーケストラ合わせを控えた日中、心身を清めるため、京都を訪ねた。今回選んだ場所は、嵯峨である。

目的地は、嵯峨釈迦堂、即ち清涼寺の近くの紅葉の穴場、厭離案であったが、ここはまだ紅葉には早く、「血の色のよう」と形容される絶景とは程遠いものであった。



そこで、清涼寺にとって返し、参詣したわけだが、雨振る中、たいへんに清々しい気に満ちた時間と空間を楽しむことができた。





その後はさらに、白河天皇開設と言われる宝筐院を訪ね、庭の美しさを満喫。と言いたいところだが、次々に団体さんがやってきては大騒ぎで興を殺がれてしまった。この庭には静寂が似合うと思うのだが・・。

また別の機会に再訪しようと心に決めた次第。





そして、締めは栗ぜんざい。散策のあとは甘味に限る。

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町田市合唱祭 荒谷俊治先生に元気を頂く

2015-11-16 00:33:51 | コーラス、オーケストラ

もう日付は跨いでしまったが、今日は年に一度の町田市合唱祭であった。

かつて、ウィーンの「第九」でご一緒させて頂いた荒谷俊治先生、85歳とのことだがハイドン「四季」を矍鑠と振られていた。

打ち上げの席でも、席に着かれることなく、立ち通しで、次々と訪れる人々と歓談されていた。まさに町田市の宝。

ボクが「大阪フィルハーモニー合唱団の指揮者に就任しました」とご報告すると、「朝比奈先生の創設された合唱団の指揮者就任とは素晴らしい」と我がことのように喜んでくださった。

お元気な荒谷先生にあやかってボクも頑張らなければと、心に誓った次第。

さて、ボクは、例によってHANAヴォーカルとスウィングロビンの指揮で登場。

ことしは、両コーラス共に、昨年までとは別の次元での演奏ができたことを、歓んでいるところ。

木下牧子の「月の角笛」から5曲を歌ったHANAヴォーカルも声に無駄がなくなり、ハーモニーやアンサンブルが様になってきたし、

寺嶋陸也&木下牧子の難曲に挑んだスウィングロビンは、従来の「本番で見せる爆発力」だけではなく積み重ねてきた本当の力で歌いきってくれた。

聴衆からの反響や講師の先生方からの講評のトーンも、これまでとは違っていたように感じたのは気のせいではないと思う。

大仰に聞こえるかも知れないが、これまで四半世紀にわたって追求してきた発声指導や音楽づぐりが、ようやく花開いたという深い感慨を持った。

その意味で、今日という日はボクにとって大きな意味のある1日であった。

 

 

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トスカニーニの「胡桃割り人形」に痺れる

2015-11-14 00:43:20 | レコード、オーディオ

大阪から東京に戻り、東京ジングフェライン「マタイ」稽古までの空き時間、例によって都内の中古レコードショップで時間を潰していたところ、店内のBGMになんとも剛毅な「胡桃割り人形」組曲が流れていて忽ち魅了されてしまった。

その音質からヒストリカルのライヴものであることは分かったが、その正体を探ってみると、なんとトスカニーニの伊メロドラム盤ではないか!

1951年11月17日、RCAの正規盤の2日前の演奏の記録だ。

男気溢れる怒濤のアンサンブル! 火を噴くカンタービレ! この優美な作品で血沸き肉踊るというのもどうかと思うけど、堪らなく良い。久々にトスカニーニに萌えたなぁ。

もちろん、この2枚組のチャイコフスキー・アルバムのメインは、ホロヴィッツとのピアノ協奏曲第1番と「悲愴」交響曲にあるのだろうけれど、「胡桃割り人形」もクナ盤につづく我が愛聴盤となることは間違いない。

音質も非正規盤として上々ではないかな?

調べてみたところ、アンドロメダ・レーベルの3枚組CDでも聴けるようだ。

 

 

※因みにRCA盤は未架蔵のため比較はできず。CDでは持っているかも知れない。発掘してみよう・・。
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