福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

シモーネ・ヤングの「アルプス交響曲」を堪能!

2017-06-27 00:32:56 | コーラス、オーケストラ

24日土曜日の夕は、東京芸術劇場にてシモーネ・ヤング指揮読売日本交響楽団によるリヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」を聴いた。

シモーネ・ヤングさんとは、昨年の大阪フィル定期でブラームス「運命の歌」で共演した折(写真)のオーケストラ・リハーサル、合唱リハーサルと通して、その音楽性の高さや表現力の豊かさと共に抜群のトレーナー能力に感服したことも記憶に新しい。そして、今回は聴衆のひとりとして、シモーネさんの指揮姿に接して、ますます惚れ込んだところである。

まず、なんと言ってもオーケストラの鳴りっぷりが見事。神経質な負の要素とは無縁、つねに大らかで豪快な響きのしているのが、なんとも爽快で心地よい。少なくともその点に於いては、朝比奈やクナに通ずるものがあると言えるだろう。

しかし、朝比奈のような「楽譜にフォルテとあればフォルテ」といった無手勝流とは別物だ。シモーネさんの音楽には、常に弦の弓の扱いや管の息の具合までにまで意思が通い、バランスにも細心の注意が払われている。そのことに気付かねばならない。自らの考えを楽員に伝えるにかけての意思の強靱さは、大阪フィルのリハーサルで何度も目撃したものだ。シモーネさんの辞書には妥協という文字はないのである。今回は、シモーネさんの強靱でありながらもきめ細やかな要求に応え、ともに高みに至ろうという読響のハングリー精神には目を瞠るものがあった。弦の厚み、艶、ダイナミックレンジの広さ(後方のプルトに至るまでの全力のボーイング!)、管楽器群のピッチとアンサンブルの良さなどのお蔭で、職人リヒァルト・シュトラウスのオーケストレーションの醍醐味を堪能することができたのは歓びであった。

わたしの座席は、1階席中央やや右寄りの前から3列目。バランスやブレンドされた響きを知るには不利ではあったが、シモーネさんから発せられるエネルギーを間近で享受できたのはよかった。もともと東京芸術劇場はどの席で聴いても満足することがないので、「指揮者のエネルギーを身近に感じる」ことを一義とする座席の選択も許される。事実、3階席の友人には大人しい演奏に聴こえたらしいが、それは多分にホールの貧しい音響が影響していたに違いない。

ところで、シモーネさんとはこの12月にウィーンで再会することになった。

わたしが、ウィーンのシュテファン大聖堂でモーツァルト「レクイエム」を振るのがモーツァルトの命日12月5日であるが、ちょうど、その前後、シモーネさんは国立歌劇場でシュトラウス「ダフネ」を振ることになっているのだ。そこで、「アルプス交響曲」への賛辞に添えて、我がコンサートにご招待したい旨をメールで伝えると、「それは興味深い!。聴きに行きます」とのお返事が! その時期は、チューリヒでの「フィデリオ」指揮もあり、ふたつの都市を4往復する忙しさだという。その合間を縫って来て下さるというのだから嬉しいではないか! わたしはわたしで、「ダフネ」12月7日公演のチケットは獲得済み。シモーネさんのシュトラウスが格別であることが分かっただけに大いに楽しみだ。それにしても、敬愛するシモーネさんと同じ時期にウィーンに居られるなんて、なんという粋な神の配剤。なんという僥倖だろう。

さて、プログラムの前半はアブドゥライモフ独奏のプロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番。マガロフ&マタチッチ指揮フランス国立管によるライヴ盤で愛聴している魅惑の作品だ。

アブドゥライモフは1990年ウズベキスタン生まれの俊英。先に書いた座席ゆえに、目の前にドカンと蓋全開のスタインウェイのフルコンサート・ピアノが置かれれば、指揮者も見えなければ、オーケストラの音もマスクされてよく聴こえない。しかし、その分、ピアノの音色のクリアーなこと! これはこれで、息をのむような体験で実に楽しかった。テクニックは抜群で音色も美しく、何より音楽的な呼吸が自然なのがよい。アンコールは、チャイコフスキー「6つの小品」から第4番「ノクターン」。こちらも歌心満点でよかったが、やや情に溺れるところがあり、もっと客観的であった方が感銘が深かったであろう。

読売日本交響楽団 第569回定期演奏会

2017年6月24日(土) 18:00開演 会場:東京芸術劇場

指揮=シモーネ・ヤング
ピアノ=ベフゾド・アブドゥライモフ

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 作品26
R.シュトラウス:アルプス交響曲 作品64

 

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速報・ウィーンのモツレク 2日連続公演決定! 

2017-06-21 23:28:36 | コーラス、オーケストラ
ウィーン・シュテファン大聖堂に於ける全演奏会をマネージメントするK und Kの清水様よりのビッグニュースが舞い込みました!!

12月5日(火)モーツァルトの命日に捧げるシュテファン大聖堂でのレクイエム公演の翌日=12月6日(水)、ハプスブルク家のご先祖を祀るカプツィーナ教会にて、オルガン版のモツレクを演奏することが本日正式に決定しました。
ツアーへのご参加は、まだ間に合います(経験者、しっかり歌える方に限る)。どうぞご検討ください。



以下、清水様よりのメッセージを転載します。


福島章恭先生指揮により
モーツァルト「レクイエム」を
2日間連続で演奏して頂くことになりました。
   
12月5日夜中0時より
シュテファン大聖堂にて
モーツァルトの魂へ
レクイエムを捧げて頂きます。
   
そして、12月6日夕刻から、
カプチーナ教会にて
小沢 さち先生のオルガンにて
ハプスブルグ家の魂へ
レクイエムを捧げて頂きます。
    
カプツィーナ教会には、
ハプスブルグ家の12人の皇帝、
18人の皇后、138体の亡骸が
納められた棺が安置されています。
 
この15年間、各大聖堂にて様々な
演奏会を企画してまいりましたが、
2日間連続で
モーツァルト「レクイエム」の
演奏会を行うのは初めての試みです。
    
2公演とも、ウィーン市長と
シュテファン大聖堂が
バックアップしてくださいます。
      
弊社は、
今秋からカプチーナ教会での演奏会も
シュテファン大聖堂演奏会と並行して
企画させて頂くことになりました。
    
この夏に新しいパイプオルガンが
設置されるれることになり、
演奏会の収益金全額を
パイプオルガン設置費用及び
教会修復費用に寄付させて頂きます。
    
カプチーナ教会にて
今回歌って頂く皆様には、
感謝の気持ちとして、
マリアテレジア女帝の棺の他に、
一般公開されていない
神聖な場所など、私自ら
ご案内させて頂きたいと思います。
    
レクイエムの日本国内合唱練習は、
まだ始まったばかりです。
大阪、名古屋、東京、仙台にて
毎週練習を行っております。
     
東京オペラシティ公演・11月16日(木)
についてのコーラス席は女声の募集は
一杯となり締切られたそうですが、
男声については、
まだ募集しているそうです。
    
ウィーンへお越しにならなくとも、
合唱練習だけでも見学へ、
是非訪れてみてください。
   
1791年、今から226年前に
作曲され未完に終わった 
モーツァルト「レクイエム」の
存在は、
貴方がどれだけ心を開いて
歌っているかを映し出す作品、
貴方に貴方自身の真の存在を
想い出させてくれる鏡なのです。 
  
音は静寂の中から生まれ、
静寂の中へ消えていきます。
     
貴方の真の本質も、
静寂から生まれています。    
   
静寂の状態で
レクイエムを歌うことによって、
道が示され、恩寵の扉が開かれます。   
    
そして、気づくと作品と一つになり、
真の自己への入り口に立ち、
貴方は、まさに真の自己になろうとしているのです。  
  
歌っている最中に、
覚醒が起こる方もいらっしゃると思います。  
    
これがレクイエムを歌うという
本来の姿であり、
モーツァルトが教会音楽に求めたことなのです。
         
すべてはあるがままです。        
            
Das Herz adelt den Menschen.
1781,Wien W.A.Mozart        
    
モーツァルトファンの皆様、
シュテファン大聖堂、
カプチーナ教会へ
レクイエムを歌いに
是非お越し下さい。 
   
音楽の神様からたくさんのインスピレーションが与えられますように….
 
写真は、12月にお越しになった際、
クリスマスマーケットが開かれている
シュテファン大聖堂の様子です。 
 
モツレクの合唱練習が終わって、
シュテファン大聖堂の外に出ると
最高の雰囲気が広がっています。 
  
誠に有難うございます。
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プログラム解説執筆中

2017-06-17 01:12:30 | コーラス、オーケストラ

スウィング ロビンのためのプログラム解説を執筆中だが、このまま続けると朝になってしまう。

明日というか今日の大阪フィル合唱団は、バーンスタイン「ミサ曲」のマエストロ初稽古であるし、日曜日は女声合唱団 KIBIの70回岡山県合唱フェスティバルへの出演もある。

文章が次々に湧き出てきているときに中断するのは辛いことだが、大事な土日のため、この辺で一旦断ち切ろう。

そう、一昔前のように無理の利かない肉体ともなってしまっていることだし。

しかし、プログラムの全曲を3,000字に収めることは困難だ。

シュトローバッハ「聖母マリアのためのミサ曲」だけで1,800字となりそうなところを、1400字まで切り詰めたところ。

これ以上、どこを削ったらよいのか・・・。

もう少し文字数を増やして貰おうかな。

しまった。合唱フェスティバルのための衣裳の準備がまだであった。これから急がねば。

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女声合唱団スウィング ロビン The 3rd concert(その1)木下牧子「自然と愛と孤独と」

2017-06-14 07:42:35 | コーラス、オーケストラ

町田市の女声合唱団スウィング ロビンの3回目のコンサートのお知らせです。

過去2回はクリスマスの時期の開催でしたが、今年は真夏の山の日に開催します。

女声合唱団 スウィング ロビン The 3rd Concert

日時:2017年8月11日(金・祝) 14:00開演

会場:杜のホールはしもと
(JR横浜線、京王多摩線 橋本駅にて下車、ミウィ橋本7F)

入場料:1,000円(全席自由)

プログラム
⚫木下牧子作曲 女声合唱曲集「自然と愛と孤独と」
⚫寺嶋陸也作曲 「二月から十一月への愛のうた」
⚫ロクサンナ・パヌフニク作曲「アヴェ・マリア」
⚫ジークフリート・シュトローバッハ作曲「聖母マリアのためのミサ曲」

指揮:福島章恭 
ピアノ・オルガン:古門由美子

2007年、PTAコーラスのOB団としてスタートしたスウィング ロビン。早くも結成10周年!
発足当初より、センスの良さ、チームワークや舞台度胸などに光るものはありましたが、今回は、発声に磨きを掛け、アンサンブルにも精緻さを加えることで、前2回までとは全く別の次元でのステージとなりそうです。

木下牧子先生の「自然と愛と孤独と」は、19世紀アメリカの詩人エミリ・ディキンスン女史の繊細な詩(中島完・訳)から選り抜かれた6つの詩による曲集。 ディキンスンは後半生の殆どを自宅とその周辺にて過ごしたという孤独の詩人ですが、言葉の美しさ、洞察力の深さと想像力の豊かさに於いて、まさに第一級の詩人と呼べましょう。

原詩のみならず、訳詩を朗読するだけでも、そこに完全なる美を見いだせますが、その言葉に寄り添い、心まで降りてゆかれた木下先生の音楽によって、もうひとつ別の新しい世界の創造されていることは驚くべきことです。この曲集を演奏することの団員とわたしの歓びは、客席にもお届けできるに違いありません。

普段、オーケストラ、室内楽、器楽曲などを中心に聴かれている音楽愛好家(もちろん、他のジャンルも)の皆様にも合唱の、女声合唱の素晴らしさを発見して頂けるでしょう。

チケットのお申し込み、お問い合わせは、チラシの電話番号の他、下記「女声合唱団スウィング ロビン」ブログ頁の左上「メッセージを送る」にて受け付けております。

ブログ:http://blog.goo.ne.jp/swing-robin/e/97fb73488eaca95e8b1f190b87a0a298

どうぞ、宜しくお願いします。

 

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大阪フィル合唱団「水のいのち」臨時団員募集!

2017-06-04 08:05:00 | コーラス、オーケストラ


いよいよ、福島章恭がライフワークのひとつ「水のいのち」を大阪フィル合唱団とともに演奏する日がやってきました。

それに伴い、臨時団員を募集致します。髙田三郎先生を敬い、「水のいのち」を愛する皆様、どうぞお集まりください。

オーディションあり。バーンスタイン「ミサ曲」本番が終わるまで着手できないため、練習回数は僅か。ゆえに経験者に限ります。

髙田留奈子先生(御年98歳!)からも熱い激励のメッセージを頂戴致しました。13年前、髙田江里先生とともにウィーン、ザルツブルクにご一緒したことを懐かしく思い出しますが、あのとき既に85歳でいらしたことに、改めて驚いているところです。
※髙田江里先生とは、その後、プラハのスメタナ・ホールにて「水のいのち」を共演しました。

以下、大阪フィル合唱団のホームページより転載します。

http://www.osaka-phil.com/chorus/recruit.php


大阪クラシック ≪水のいのち≫ 臨時団員募集

今年12回目を迎える大阪のメインストリート御堂筋界隈で行われる『大阪クラシック』、大阪フィルハーモニー合唱団はその初日に、全篇が豊かな抒情性で貫かれ、多くの人々に親しまれている名曲、髙田三郎「水のいのち」で出演することが決定。

そして指揮は、2015年に大フィル合唱団の指揮者に就任した福島章恭。

2004年にウィーン楽友協会大ホールで「水のいのち」を現地初演した際、髙田留奈子夫人から「これこそが、主人が思い描いた水のいのち!」と絶賛され、ご高齢にも関わらず、今回も「ぜひ聴きに行きたい」と仰られるほど。

大フィル合唱団では、この演奏会に向けた臨時団員募集のためのオーディションを行います。団費やチケットノルマ等はなく、演奏会後に正団員となることも可能。貴方もこの機会に大フィル合唱団で歌ってみませんか!

申込期限は 6月27日 。詳細は、募集要領をダウンロードしてご覧ください。


【髙田留奈子夫人からのメッセージ】

聴く人のすべてを空の高みへ…
夫の真の願いを見事に表現した「水のいのち」

髙田留奈子 

福島章恭さんと初めてお会いしたのは、夫の帰天後2年ほどのこと、ウィーンとザルツブルクで「水のいのち」を演奏なさるとのことで私の家を訪ねてこられた時でした。お話の中で「水のいのち」はモーツァルトの作品と比べることの出来る曲であると思うこと、少年時代に初めてこの曲を聴かれて、指揮者になりたいとの夢を持たれたことなどを伺い、その思い入れの深さに感動いたしました。

2004年6月、オーストリアでの2回のコンサートは大成功でしたが、特に最終部「のぼれ、のぼりゆけ・・・」以後の指揮は今も忘れることが出来ません。この曲を愛し、優れた知性と感性により探求された福島さんならばこそ、聴く人のすべてを空の高みへ導くような、この作品に込めた夫の真の願いを見事に表現されたのだと思います。

13年後の今回、円熟された福島さんの指揮とそれに応えられる大阪フィルハーモニー合唱団との大きな期待を持ち、感謝の心と共に、ご盛会を心からお祈りしています。
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