福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

聖ヤコビ教会のシュニットガー・オンガン

2023-01-27 09:15:28 | コンサート

一昨日(1月26日)、ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルハーモニーを聴く前の夕、聖ヤコビ教会に於けるオルガン・コンサート(無料)を聴いた。

ここに設置されているオルガンは、1689年から1693年にかけて、史上もっとも名高いオルガン製作者のひとり、アルプ・シュニトガーによって製作されたもの。設置当初から今日に至るまで、その構想に大きな変化はなく、古い配管や見込み管はほぼ原型のまま保存されているとは、まこと驚異的なことである。1700年以前に作られた現存するオルガンの中では最大のもので、保存されているバロック楽器の中では最も優れたものの1つとされている。



奏者は、聖ヤコビ教会のカントル、ゲルバルト・レフラー。バッハとブクステフーデという美しいプログラム(写真参照)。



いや、なんと言おうか。
冒頭の一節が鳴り出した途端、異世界へ連れ去られるような感覚。これまで聴いたどのオルガンとも違う音の実在感。
生々しく鮮烈であり、どこまでも高く、どこまでも遠く、そして、無限なる深さを湛えた響き。
30分がまるで10分ほどにしか感じられない至福のひとときであった。
次のオルガン・コンサートはわたしの帰国後となるので、ただ1度の機会となったが、1度でも聴けたことを天に感謝したい。

ところで、教会でのオルガンは、背後から人々に降り注ぐ。我々が祭壇に正対しているためである。帰宅して、オルガンのレコードを聴くときは、椅子の向きを180度置き替えて、背中から聴いてみようと思う。





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4年ぶりのエルプフィルハーモニー

2023-01-27 08:31:23 | コンサート

4年ぶりにハンブルクを訪れている。前回は2019年6月、ベルリンにおけるドイツ・レクイエムを終えての小旅行であり、コロナの足音もまったくなく、初夏の陽気も穏やかであった。

その時に聴いたエルプフィルハーモニーでのエッシェンバッハ指揮のブルックナー「ロマンティック」の清涼で美しい響きと州立歌劇場でのノイマイヤー・バレエ団の完成度の高い舞台が忘れられず、ドレスデン・ゼンパーオパーでのティーレマンの「リング・チクルス」に心惹かれつつも振り切って、再訪したのである。

 

ハンブルクに到着して3夜目の昨夜は、エルプフィルハーモニーに於けるヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会。

ヴォーン=ウィリアムズ: 「すずめばち」序曲、グリーグ: ピアノ協奏曲イ短調
休憩
プロコフィエフ: 交響曲第5番変ロ長調

という魅惑のプログラムで、ピアノ独奏はエルプフィルハーモニー大ホールのアーティスト・イン・レジデンスに指名されたカナダの俊英ヤン・リシエツキ。

写真の通り、正面最上階にての鑑賞。リシエツキの強靱なテクニック、幅広いダイナミズム、美しく粒だつ音色は、高所恐怖症である私に、束の間、ここが高所であることを忘れさせるに十分であった。ペトレンコ指揮のオーケストラも美しく、特に第2楽章に於ける憂愁に打たれた。

アンコールは、ショパン: 夜想曲第20番。グリーグでの感心を感動に塗り替えてくれる名演で、弱音の寂寥感、魂の孤独、その繊細な感性に彼の本物を確信した。
レシエツキは今年の東京春祭でオール・ショパンのリサイタルを開催する(4月7日 東京文化小ホール)。しかも、昨夜聴いた夜想曲第20番もプログラムに入っている! と歓んだものだが、生憎、自分のレッスンと重なって行けないことが判明。都合のつく方、ぜひ、聴いてみてください。

休憩後は、この高さに耐え得る自信がなくなり、下の階のやや左サイドの空席に移動させて貰っての鑑賞。音が近くなり、音圧はグッと上がったけれど、音のブレンド具合は最上階の方が良かったかも知れない。

プロコフィエフ5番は、元々ロイヤル・フィルのサウンドが重量級でないこともあって、ロシア系、東欧系のゴリゴリとした感触とは無縁のノーブルなアプローチとなった。はじめは、それに物足りなさも覚えたが、音楽性に間違いはないし、歌心もあるし、徐々に熱を帯びてきての最終的な迫力は申し分なく、大いに満足した。

しかし、彼らの本領はアンコールのエンターテイメントにあった。1曲目(知っているメロディなのに曲名が思い浮かばない。無念・・)の軽音楽や映画音楽にも通じるような肩の力の抜けた洒落た味わいは、聴衆から演奏途中での拍手や笑いを獲得するほどであり、2曲目のハチャトリアン: レズギンカ(「ガイーヌ」より) の怒濤には、エルプフィルハーモニー全体がロック・コンサートの会場のように、或いは贔屓のサッカーチームが決勝ゴールを決めたときのような歓声に響めいたのである。やはり、コンサート会場で声を出せるって、良いなぁ。

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新年お目出とうございます 2023/01/01

2023-01-01 11:51:23 | コーラス、オーケストラ
明けましてお目出とうございます。

昨年はコロナに泣いた日もありましたが、御陰様で演奏への歓びに満ちた一年となりました。特に、やまと国際オペラ協会との「第九」は、未来への希望となるコンサートであったと思われます。

不穏な足音も聞こえる今日この頃ですが、世の平安と皆様のご健勝をお祈りします。

本年は、下記の本番指揮がメインとなります。

5月7日(日) ティアラ江東
モーツァルト: 証聖者のためのヴェスペレ&ベートーヴェン: ハ長調ミサ
Sop: 馬原裕子 M.Sop: 山下牧子
Ten: 大槻孝志 Bar: 原田圭
東京フォルトゥーナ室内管弦楽団
合唱: ヴェリタスクワイヤー東京
混声合唱団ヴォイス

10月26日(木)
ヴァチカン サン・ピエトロ大聖堂に於けるミサ
モーツァルト 宗教小品ほか
なかにしあかね ラテン語による委嘱新作
10月28日(土)
イタリア アッシジ・サン・フランチェスコ大聖堂コンサート
髙田三郎「水のいのち」
モーツァルト「戴冠式ミサ」
なかにしあかね ラテン語による委嘱新作

大フィル合唱団も、ヴェルディ「レクイエム」(4月)、オルフ「カルミナ・ブラーナ」吹奏楽版(9月)、シェーンベルク「地には平和を」&ツェムリンスキー「詩篇第23番」(11月)、ベートーヴェン「第九」(12月)、メンデルスゾーン: 交響曲第2番「讃歌」(24年2月)と、きわめて充実した活動となりそうです。まずは、4月のヴェルレクではマスクを外して歌いたい。大フィル事務局の奮闘に期待しましょう。

本年もどうぞ宜しくお願いします。

写真: 町田市成瀬が丘の初日の出 6:51AMより
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