福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

ウェルザー=メストによるブルックナー「4番」第3稿に青春時代を思い出す

2018-11-30 01:58:25 | レコード、オーディオ
ウェルザー=メスト&クリーヴランド管のブルックナー「4番」(ザンクト・フローリアン・ライヴ)Blu-rayを観始めたら止められなくて、こんな遅い時間(深夜2時)になってしまった。
迂闊にも再生してから気付いたのだが、第3稿、いわゆる改訂版のコーストヴェット校訂版というのに嵌まった。青春時代、クナのレコードで聴き馴染んだオーケストレーションを最新の生々しい音と映像で味わえるのがたまらなく幸せだ。あの日々の初々しい感動が蘇るようではないか。

クナとは芸風の異なるメストの棒で聴いても、共通した感動を味わえると言うことは、この効果を狙った厚塗りの改訂版にも大きな魅力があると言うことだ。このオーケストレーションのまま、スケルツォやフィナーレのカットがなければ・・・、などと無い物ねだりをしてもしかたがない。
 
演奏もすばらしく、先日のウィーン・フィルとの「5番」の名演といい、ウェルザー=メストが類い希なブルックナー指揮者であることを確認できたのは大きな収穫である。
 
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ズービン・メータ バイエルン放送響 「春の祭典」

2018-11-25 23:25:20 | コーラス、オーケストラ

家内を拝み倒し、夕方予定していた家族の用事を午前中に繰り上げてまでミューザ川崎に出掛けた甲斐はあった。メータの実演は四半世紀以上昔、グリーンホール相模大野に於けるイスラエル・フィルとの「シェエラザード」を聴いて以来。今回もウィーン・フィルに散在したばかりなので見送るつもりでいたのだが、「ジュピター」「巨人」プログラムの好評やら車椅子でカーテンコールに応えたことなどを耳にして、どうしても聴いておかなければならないと判断したのである。

前半のシューベルト「ロザムンデ」序曲と交響曲第3番は、メータの全身からシューベルトと音楽への愛が溢れ出る美しい演奏だった。指揮台上の椅子に腰掛けての指揮。舞台中央に辿り着くのにも、杖と介添人を必要とするまでに自力歩行の困難となったメータであるが、そのタクトは必要最小限の動きにして的確、些かの曖昧さもない見事なもの。僅かな運動から楽員の心を鼓舞する力は、どこかクナッパーツブッシュ晩年の指揮姿にも通ずところがある。上述のイスラエル・フィル公演の時のマッチョで雄弁な指揮姿だったと記憶するが、同じ人が齢と経験を重ね、病を得ながらもここまでの域に達するものなのかと胸が熱くなった。

休憩後は、徒に尖ったところのない古典的で温かなハルサイ。シューベルト同様、どこまでも簡潔なタクト。しかし、全身からは音楽のオーラが放たれ、それに応えるバイエルン放送響が見事。機能性や個人技に優れながらも、すべては音楽のため、アンサンブルのために奉仕する姿は爽やかだ。それでいて、怒涛の迫力にも欠くことがないのだから、言うことはない。確かに、世の中には、キューを出しまくって、機械的にアンサンブルを整える「春の祭典」はいくらもあるだろう。しかし、あらゆる完璧さも、今宵の巨匠とオーケストラの熱き心の交流の前には無力とすら感じた。

盛大な拍手の中、振り向きざまに「チャイコフスキー!」とアンコールを告げたメータの声には命の輝き、張りがあった。歩行こそ容易ではないが、全曲完全暗譜の頭脳と的確なタクトさばきとを合わせて考えるなら、まだまだ大丈夫そうだと安堵する。「白鳥の湖」のワルツは夢のようで、まさに極上のデザート。楽員の引き上げた後、車椅子に乗せられてカーテンコールに応えるメータの笑顔には、音楽に身を捧げる者ならではの美しさがあった。この尊い光景を、生涯忘れることはあるまい。

 

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最上級のブルックナー体験 ヴェルザー=メスト & ウィーン・フィル

2018-11-23 22:09:25 | コンサート

チケットを購入した時点では、さして大きな期待を抱いていたわけではなかった。

ヴェルザー=メストのブルックナーについては、以前、クリーヴランド管とのライヴ映像を観たときには、造型、サウンドや指揮姿に至るまで平凡に感じるなど、特別な感銘を受けなかったからだ。しかし、先日の「南国の薔薇」を観て、聴いて、俄然ブルックナーの素晴らしいであろうことを予感した。そして、その結果は事前の予測を遙かに上回る素晴らしいものだった。

第1楽章の冒頭から、弱音の美に胸打たれた。これは、弱音を重んじることのなかった朝比奈のブルックナーとは対極の美であり、水面に揺らめく光のように千変万化に色彩を変化させる弦のトレモロには目眩を覚えるほどであった。総じて、ピアノ以下の弱音に無限の段階とニュアンスがあり、各セクション間のバランスの絶妙さにはため息がもれるほどであった。一方、フォルテ以上にも凄まじいものがあり、総員フルボーイングから立ち上る弦の豊穣な響き、肺腑を衝く金管群の音圧にはただただ圧倒されるのみ。

第2楽章も弱音の美しさに酔った。もっと濃厚な歌心があってもよかったかもしれないが、歌いすぎない美しさもまたある、ということを教えられる。

さらに、第3楽章では、類い希な舞踊性を感じさせた。その聖と俗の綯い交ぜになったリズムの躍動は、メストとウィーン・フィル双方に通うオーストリア人の血のなせる業かもしれない。

フィナーレでは、前述の剛毅なまでの音量のほか、音楽が前へ前へと進んでゆく推進力にも秀でていた。などなど、どの瞬間を切り取っても「留まれ、お前は美しい!」と叫んでしまいたいほどの美しさに貫かていた。

何より嬉しかったことは、わたしがレコードで親しんできた50年代、60年代のウィーン・フィルの響きを彷彿とさせる瞬間が多々あったことである。ティーレマンとのベートーヴェンを聴いたときなどには、「ウィーン・フィルはもう昔のウィーン・フィルではない」と悟らされたものだが、今回の来日公演では古の良さが復活しているように思える。この件、ヴェルザー=メストの指揮がどれほど関与しているかは知らないが、ウィーン・フィルそのものが良い方向に変容してきていることを感じられたのは幸せなことであった。

 

 


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ヴェルザー=メスト & ウィーン・フィル ブラームス「2番」

2018-11-21 00:21:45 | コンサート

フランツ・ウェルザー=メスト指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

2018/11/20(火) 19:00開演
サントリーホール 大ホール

【出演】
指揮:フランツ・ウェルザー=メスト
ピアノ:ラン・ラン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

【曲目】
モーツァルト:オペラ『魔笛』序曲 K.620
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

この度のウィーン・フィル来日ツアーでは、11月23日(祝・金)のブルックナー「5番」だけに絞るつもりでいたのだが、ミューザ川崎でのワーグナー「神々の黄昏」ハイライトの評判を聞き、ブラームスも聴くことを決意。そんなとき、たまたま都合の悪くなった知人からチケットを譲って頂けることになったのはラッキーである。来年2月27日の「ドイツ・レクイエム」サントリーホール公演のための下見と自らに言い訳もできるという寸法だ。

実のところ、ヴェルザー=メストのレコード、CD、DVDに於ける印象は、わたしにとって芳しいものではなかったのだが、その負の印象は今宵のブラームスとアンコールによって見事に覆された。

ブラームスは、奇の衒ったところのないウィーン・フィルの伝統の響きと美質を活かした演奏で、ちょっと聴くと当たり前のようでいながら、やがて、その周到な設計やバランス感覚に気付かされる。それでいて、フィナーレに於ける精神の高揚感にも欠けておらず、実演で聴くブラームスにこれほど魅了されたのも久しぶりであった。

さらに素晴らしかったのが、アンコールのヨハン・シュトラウスⅡの「南国の薔薇」とエドゥアルト・シュトラウス「テープは切られた」である。ウィンナ・ワルツ特有のリズムひとつ取っても噎せ返るようなウィーン情緒に溢れていたが、ヴェルザー=メストの自在なテンポ操作がまたお見事。人の生きる上での喜びと哀しみが交差し、舞踊によって美に昇華されていたのである。この「南国の薔薇」に限っては、実演、録音を問わず、シューリヒトのコンサートホール録音以上の感動を覚えることは稀なのだが、今宵は背中に電気の走るような感動を味わうことができた。「テープは切られた」に於ける愉悦、ユーモア、躍動感も最高で、このアンコール2曲だけでも元の取れた気がしたものである。

前半のピアノ協奏曲については、多くを語らないでおこう。オーケストラは実に美しいモーツァルトを奏でていたが、ランランのピアノがわたしの趣味ではなかった。語りたいことは山ほどあるが自制するのが吉であろう。

なお、本公演には、RBブロック席にて皇太子様がご鑑賞されていた。

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福島有里 ぷさいく展 - 暮らしの温い布 始まる

2018-11-20 10:14:48 | 美術


福島有里 ぷさいく展 - 暮らしの温い布

いよいよ本日からです。

町田市立国際版画美術館内の喫茶けやきをお借りしての家内の展示会。

個展というほど大それたものでなく、喫茶けやきさんの壁をささやかに飾らせて頂いております。

スヌード、帽子、へんてこマフラーなどの販売もあります。

11月20日(火)から12月2日(日)まで(月曜休) 午前10:30 ~ 午後4:30

お天気にも恵まれ、芹が谷公園の木々も気持ちよさそう。

お散歩ついでに、お立ち寄り頂けると幸いです。手作り人形たちもお待ちしております。











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ドイツ・レクイエム強化練習 初日終了

2018-11-18 00:51:00 | コーラス、オーケストラ


集中レッスンというよりは、強化練習と呼ぶらしい(笑)。長丁場でしたが、実りのあるレッスンとなりました。

東京、厚木、名古屋、大阪、長岡の練習会から集った割に声やスタイルの統一感のあったのは、各地で同じメソードによるレッスンが展開されているからでありましょう。

明日も大いに楽しみです。



以下、本日の模様はFacebook記事から転載します。

「ブラームス『ドイツ・レクイエム』の強化練習1日目が終了しました。
今日は14:30~21:30までみっちりと練習。

いつもは他地区(厚木、長岡、名古屋、大阪)の練習会にご参加頂いている皆様も東京にお集まり下さり、約110名のご参加がありました。
110名で歌うドイツ・レクイエムは圧巻でした。
ご参加頂きました皆様、ありがとうございました🎵

2月のサントリーホールでの本番では、この2倍の約240名での演奏となります。
どのようなハーモニーになるのか、わくわくします😊

明日2日目は10:00~16:00の予定です。
沢山のご参加をお待ちしております😉」

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ドイツ・レクイエム Facebookのイベント頁を立ち上げる

2018-11-17 10:54:29 | コーラス、オーケストラ

この土日は、新宿村スタジオにて、ヴェリタス・クワイヤ・ジャパンによるドイツ・レクイエムの集中レッスン。

合宿と呼びたいところですが、通いのご参加者も多いので「集中レッスン」としておきます。

東京、厚木のみならず、名古屋、大阪、長岡からも多くの方に上京して頂く、ということで気合いも入りますね。

午前中は、Facebookにイベント頁を立ち上げてみました。

情報は、これで足りているかな??

ブラームス ドイツ・レクイエム特別演奏会 ~福島章恭 & Veritus Choir Japan~

https://www.facebook.com/events/1424757707654706/

ブラームス ドイツ・レクイエム特別演奏会
~ 福島章恭 & Veritus Choir Japan ~

演目 ワーグナー:ジークフリート牧歌
   ブラームス:ドイツ・レクイエム

日時: 2019年2月27日(水) 19:00開演
会場: サントリーホール大ホール

指揮: 福島章恭

ソプラノ: 平井香織  
バリトン : 与那城敬

オーケストラ: ヴェリタス交響楽団
(コンサートマスター: 崔文洙、新日本フィル、東京交響楽団をはじめとするトッププレイヤーにより構成)

合唱:ヴェリタス・クワイヤ・ジャパン

全席指定
S席 5,000円 A席 4,000円  B席 3,000円
チケットぴあ:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1844428&fbclid=IwAR1EsHPkkMtMdJy1qrv6qb4P6kHJPutpVrBXi6-hlU0m8xSHpHCet6ezsLw


お問い合わせ
エムセック・インターナショナル:03-3406-3355

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東大和のモツレク フライヤー完成!

2018-11-16 00:11:10 | コーラス、オーケストラ


東大和のモツレク。待望のフライヤーが完成しました。東大和市民「第九を歌う会」との本番は、2012年3月のヘンデル「メサイア」全曲公演以来となります。毎週木曜日の夜、ハミングホール小ホールにて、熱気溢れるレッスンが展開されております。

コーラス・ナンバーはもちろん、豪華ソリスト陣による四重唱も大いに楽しみなところ。

さらに、前プロに置かれるのはシューベルト「未完成交響曲」。

流石に最愛のブルックナーと組み合せるわけには参りませんでしたが、モーツァルトとシューベルトというオーストリアの生んだ2人の夭折の天才のともに「未完」に終わった作品を並べることは、大きな意味があるでしょう。個人的にはプレ・ブルックナーという意味合いも込めて、愛情を注ぐつもりです。

管弦楽は、都響団友会オーケストラ。都響OB、現役団員、またそのお仲間から成る実力派オーケストラとの共演に、どんな響きが生まれるのか、今からワクワクしております。

本番は、2019年2月24日(日)。
ということは、サントリーホールに於けるドイツ・レクイエム公演(ヴェリタス・クワイヤ・ジャパン&ヴェリタス交響楽団)の僅か3日前ということになります。気力と体力を充実させて臨みたいと思います。


東大和市民「第九」を歌う会第19回演奏会
【公演日】 平成31年2月24日(日)
14:00開演
【会場】ハミングホール(大ホール)

【曲 目】
・モーツァルト作曲 「レクイエム」 K.626 
・シューベルト作曲 交響曲第7番「未完成」

【指 揮・合唱指揮】 福島章恭
【副合唱指揮】奥村泰憲
【独 唱】
馬原裕子(ソプラノ)
山下牧子(アルト)
大槻孝志(テノール)
長谷川顕(バス) 

【管弦楽】 東京都交響楽団団友会オーケストラ

指定席 3,500円(ハミングホールのみ取扱い)
自由席 3,000円

チケット発売 12月6日(木)

問合せ・チケット申込み
東大和市民「第九を歌う会」
河本 042-564-0173
本荘 090-1773-8897
ハミングホール 042-590-4411
ほか(チラシをご参照ください。)
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シャルル・デュトワ 大フィル定期に登場!

2018-11-14 10:40:43 | コーラス、オーケストラ


ようやく情報解禁となりました!
早く言いたくてムズムズしてたのですが(笑)。

シャルル・デュトワが来年5月の大フィル定期に登場します。さらに、さらに、ラヴェル「ダフニスとクロエ」第2組曲では、大フィル合唱団との共演! 興奮します。

実は、かなり昔、デュトワさんの「第九」の合唱指揮(突発的な代替指揮)を打診されたことがあったのですが、自分の本番と重なって涙を呑んでお断りしたことがありました。こんな形でリベンジが果たせるとは! 生きていると良いこともありますね。

大フィルにとっても、デュトワさんにとっても記念すべき演奏会。合唱団一丸となり、素晴らしいダフニスを披露したいと思います。

もちろん、その2か月前の3月には、スラトキンさんとのバーンスタイン「チチェスター詩篇」という高い山も控えており、そちらも気が抜けません。
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ドイツ・レクイエム サントリーホール公演 チケット発売開始

2018-11-05 15:24:23 | コーラス、オーケストラ


ブラームス ドイツ・レクイエム特別公演のフライヤーが完成しました。

本番まで、約3か月。
ヴェリタス・クワイヤ・ジャパンの東京、厚木、長岡、名古屋、大阪の各レッスン会も大いに盛り上がってきております。

合わせて、チケットぴあでのチケット発売も開始しました。
良いお席はお早めに!

日時: 2019年2月27日(水)
会場: サントリーホール

指揮: 福島章恭

ソプラノ: 平井香織
バリトン : 与那城敬

オーケストラ: ヴェリタス交響楽団(コンサートマスター: 崔文洙、新日本フィル、東京交響楽団をはじめとするトッププレイヤーにより構成)

合唱:ヴェリタス・クワイヤ・ジャパン

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