エジプト考古学博物館を出て、タハリール広場からラムセス・ヒルトンまで歩くことになった。
雑踏の中を歩き出す。
人の波がすごいので気をゆるめると人とぶつかる。
車の数も半端ではない。
カイロの町の谷間に、クラクションが途切れることなく響き渡る。
歩き出して、すぐに娘の変化に気づく。
日本ではのらりくらり歩いていた娘が、背すじをピンと伸ばし、速い速度で人波をかき分けていく。
「どうして?」と聞くと
「外国人だと珍しがられて見られたり声をかけられても、そんなのヘッチャラと思わせるために
胸を張って顔を上げて堂々と歩こうと思った!」そうである。
うん!その心意気はなかなかカッコイイ!!
いよいよ通りを渡らなければならない所へ来た。エジプトでは信号や横断歩道が少ない。
だからカイロっ子たちは実に恐ろしい方法で道路の横断をする。
迫ってくる車を無視して歩き出し、絶対に走ったりしない。車の切れ目を察知してヒョイヒョイ渡る。
「お父さん!お母さん!横にピッタリついて離れないで!」
そんなこと言われるとドキドキ緊張してくる。
しかしとめどもなく流れる車を待っていたのでは、いつまでたっても渡れない。
覚悟を決めて、渡り方を体得したらしい娘に命を預けよう。
車のわずかな切れ目を見つけた娘は
「ハイッ!行くよっ!」と叫ぶ。
心の中で「ヒーッ!」と悲鳴をあげながら、娘とひとかたまりになって道路の真ん中あたりまで渡る。
前にも後ろにも、体のすれすれを車がビュンビュン走り過ぎていく。
身の毛もよだつ恐ろしい行為を2・3度繰り返し、やっと道路を渡り終えた。
ラムセス・ヒルトンに着いた頃は疲労困ぱい。
マンゴージュースをジュウジュウ音を立てて飲みながら、私は初めて娘にこう つぶやいた。
「もうエジプトはいやっ!!」(道路の横断に関してではあるが)
道路を渡られる方は、どうぞお命お大切に……
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