退院当初は、恐る恐る杖をついて歩き、近くのスーパーのカートを押すことすら不安でした。
滑るのじゃないかしら?ギクシャク不自然な動きをしていないかしら?夫はどうして離れて歩いているのかしら?など、自信のないことが情けなかった。
でも、家の中での元の暮らしと共に、草木に生気が満ち始めると私の精気も満ちてきました。
元来、悩まない性質なので、去年までつけていた夫との「ウォーキング記録」の代わりに
「リハビリ日誌」を付けると、高らかに宣言しました。
誰に? 夫に!
40年の二人の間柄は、私が計画し、夫に花を持たせるといった風でしたので、これまでと、さして違わない生活になりました。
今まで夫は働いていましたが、月に1度のウオーキングラリーへの参加、バス旅行、海外旅行、
孫たちの所、ドライブと 遊びに制約がありながらも二人で様々な所へ出掛けては楽しんでいました。
でも、今回からはリハビリ・メインです。
私は、疲れやすく、歩くのが自分の気分ではまだ60パーセントです。
で、考えました。
近場で、歩ける名所に行こうと。スーパーがメインの時はリハビリ日誌には載せません。
あくまでも、リハビリが出来る地元近辺を探しました。
1番 鳥の翼を連想させる外観の「新鳥栖駅」へ。
初めての場所でしたが、思った通り、在来線と新幹線を繋ぐ2階の通路は無人に近く、直線が歩き易く、エレベーターのガラスは歩く姿を映す大きな鏡となって、杖歩行練習場所としてはピッタリでした。
近くには郊外型の店舗が並んでいますので、夫はそちらへ。時間を待ち合わせてリハビリに励む時、より充実感がありました。目の前には、新しい研究病院もあり、医学の発展を祈りました。
帰りには、まるでカッパドキアのような洋菓子店で、久しぶりに美味しいケーキを買い、マダムにバラの花のお庭を案内されて、見知らぬ街に心惹かれました。
2番 「曾根田親水公園」
町のパンフレットには、水遊びや花見が楽しめ、いろいろな広場があると書かれていました。山あいの清流を望む素敵な場所でしたが、リハビリ目的の我が身にとっては狭く急な道で残念ながら、不向きでした。
3番 術後初めて、山登りをしました。鳥栖の[朝日山」です。
芝公園までは車で行き、そこで休むつもりでしたが、山頂は目の前で、見晴らしは素晴らしいと
のことで、意を決して登ることにしました。
山城跡まで杖を頼りに必死に歩く時、小学生が「頑張ってください」と声をかけてくれました。なんと、狸までもが出迎えてくれました。
ゆっくり、ゆっくり、少し休み、またゆっくり、まさしく、森林浴。
頂上展望台での筑後平野の眺望は格別でした。
(朝日山展望台より 筑後川越しに久留米市の眺望。はるかに久留米成田山の観音様を望む)
4番 影絵の藤城清治展の「福岡博物館」へ。
術後初めての晴れの日の為に、お嫁さんに贈られた杖用の装飾の花飾りと高価なワンタッチ杖置きをつけた100円均一の杖を持ち、指には退院祝いとして買ってもらった大好きな「スワロフスキー」の特大指輪をして、まず「ヒルトンホテル」の最上階で食事をしてから出かけました。
あーあー、去年までは夫はホークスの試合を楽しみ、私は球場を出たり入ったりしながら、ヒルトンのウインドーショッピングを楽しんだものでしたが・・。ごめんね。
5番 姉の家に快気祝いの御届けに。そして花菖蒲の「大村公園」へ。
お昼を御一緒にと勧めてくださる義兄さんにごめんなさいして「○○○○大村」で、フルコースを。そして高校生が大村湾でボートをこぐ姿などをのんびりと眺めました。
6番 1000万本のポピーの「キリン花園」へ。
キリンビアファームで、ノンアルコールのビールと焼き肉で、生きる喜びを!
7番 「四阿屋神社」と「河内河川プール」へ
まさしく、隣町の見知らぬ、すばらしい夏の遊び場。(四阿屋はあずまやと読むそうです。)
孫たちともう一度来ることが楽しみな森で,大好きなアザミの花も咲く山道でした。
8番 「中富くすり博物館」
薬草庭園を、ゆっくりとリハビリ歩きさせて頂きました。
目の前にある「花やしき」は10数年振りでしたが、これからはもっと来たい場所になり
ました。
9番 高台の「東公園」へ。
隣の茶畑を見ながら歩き、高校陸上部の練習風景をベンチで
見学して帰りました。久々にみる若さと走れる若者たちの姿に見惚れました。
10番 念願だった原鶴温泉の「○○○」へ。
未だ歩きにも自信が持てないのにお風呂に入れるかしら?と不安はありましたが、ここ
の創作ランチは美味しいし、外のお風呂に入る事は、娑婆の第一歩という気持ちでした。
手すりがないので露天風呂には行きませんでしたが、今後、温泉リハビリ巡りをしたい私にとっては大きな自信になりました。
11番 近衛家の国宝を見に「九州国立博物館」へ。
近くにあるのに初めて行きました。平日だったせいか、思ったより人は少なく、ここは
リハビリの場所として最適と思いましたが夢中で歩き過ぎたのか、腿もだるく疲れました。
以上が、日誌に載せた5月の特定リハビリです。これを書くようになってから、なんだかリハビリが日常生活を送る上での張りになりました。
1か月に11回も連れて行ってくれる夫に対しても感謝の気持ちが強くなると同時に、昔と同じように二人で楽しむ暮らしをより心がけなくてはと思うようになりました。
また、こんな病気にでもならない限り、こんな近場にこんなにすばらしい場所があるこ
とを知らずに過ごしていたと思うと、「フッフッ 私の御蔭やろ」とつい言いたくなります。