赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

華やかなワールドカップの陰で苦悩するテレビメディア  topics(673)

2022-12-06 10:38:47 | 政治見解



topics(673):
華やかなワールドカップの陰で苦悩するテレビメディア

サッカー・ワールドカップでの日本代表の躍動は大いなる感動と勇気を与えてくれました。クロアチア戦でPK戦に敗れ、ベスト8の願いは叶いませんでしたが、それでも国民に日本人を意識させ、ごく自然にナショナリズムの感情が沸き上がります。ひねくれた人を除いて、多くの国民が日本への愛着と日本人であることのありがたさに気づかせてくれた日本代表の活躍に感謝せずにはいられません。本当にありがとうございました。

サッカーはスポーツのなかで最大にナショナリズムを喚起するものなのではないかと思います。よく、ピッチ上の戦争に例えられ、中米のホンジュラスとエルサルバドルの間では、本当に国家間の戦争が起こってしまった例もあるほどです。日頃、日本が大嫌いで日本下げに躍起になっている朝日新聞社系列のテレビ朝日でさえ、なぜか、サッカーの試合にはご執心で「絶対に負けられない戦い」などと、のたまわう不思議があります。

この理由、反体制左派であっても「愛国左派」が世界的潮流ですので、その流れに乗っかっているのか、それとも、サッカー中継すれば普段より高視聴率が取れるために広告収入が得られやすいという経済的な理由なのか、実際は後者にきまっていますが、ナショナルチームのサッカー中継は、彼らの最も嫌う保守的愛国者を量産する機会であるという事実には目をつぶらざるをえないようです。

しかし、ここにきて、テレビ業界からは悲鳴が上がっています。朝日新聞系列の日刊スポーツが “悲鳴上げるテレビ局「出せる金額ではない」無料放送の限界域へ高騰続ける放送権との攻防” という記事にあるように、放送権料の高騰が、ただでさえ収益が悪化している業界には追い打ちとなっている現実があります。

記事を引用します

カタールW杯の放送権を購入したのはNHK、フジテレビ、テレビ朝日の3局のみ。14年ブラジルW杯まではNHKと民放が共同で放送権を購入も、18年のロシアW杯ではテレビ東京が降り、今回は日本テレビとTBSも追随した。理由は放送権の高騰だ。民放連は10年南アフリカ大会からW杯は赤字と、公表している。放送関係者は「予選リーグの日本戦は3試合。NHKが初戦をとると、民放4社で2戦を取り合うことになる。外したリスクを考慮すれば、とても出せる金額ではない」と指摘する。人気スポーツのテレビでの無料放送のハードルは高い。

日本代表が初出場した98年フランス大会はNHKが全64試合を独占放送した。この時は、FIFAが各地域にサッカーを普及させたい思惑もあり、放送権をABU(アジア放送連合)に格安で販売。NHKは約6億円で購入したとされる。その後はうなぎ上り。02年は日韓での開催となり、時差もないことから放送権は185億円(推定、以下同)に。06年140億円、10年170億円、14年240億円と高騰しつづけ、今年のカタール大会は350億円ともいわれている。ただ、これでもすべてをまかなえず、日本の放送権を独占販売してきた電通は02年からは3大会は衛星放送のスカパー、今回はABEMAに販売するなどし、回収を図る。本大会ではないが、アジア最終予選はDAZNが放送権を購入、地上波放送がなかったことも記憶に新しい。

さらに、ニュースでW杯を扱うにも使用料が発生する。日本テレビとTBSは映像を使うために1.5億円を支払ったとされ、購入しなかったテレビ東京は静止画像しか使えない。同局の石川一郎社長は定例会見で「我々は商業的メディアであり、採算、経済合理性も考えなければいけない。他の番組を痛めてまでスポーツを放送するためにお金や人材も含めて回す必要があるのかどうかという総合的な判断です」と語った。


いよいよ「テレビメディアの曲がり角」が現実になってきました。最大の問題は収益の悪化です。では、なぜ、収益が上がらないのか、それはテレビ番組がつまらなくて視聴者がテレビ離れを起こし、画面の前から顧客がいなくなったからです。しかも、それを知ったスポンサーがテレビ以外の媒体に広告費をつぎ込むようになったことも大きい。

要は、つまらない番組を誰も見ようともしないのは当然なのです。もっとテレビを見たくなるようなコンテンツを用意しなければ、ますます視聴者離れが大きくなりそうです。

しかも最大の問題は、テレビメディアが無意識に自分で自分の首を絞めている事実に気が付いていないことです。それは、テレビメディアに反日の外国人が多く占めるようになってからというもの、報道番組の左傾化が著しくなっていることが原因です。日本という国を破壊したい方向で、政権批判、日本批判を繰り広げているわけで、それが、テレビ局への批判よりも番組のスポンサーに批判が集中し出したことの方が影響は大きいと言えます。

一般の人から、スポンサー会社に「偏向放送を垂れ流して日本を不安に陥れている番組。引いては株主に不利益を与えている番組のスポンサードしているのは許しがたい」との抗議が出るようになってからというもの、スポンサー会社は、このクレームに対応せざるを得なくなってきました。

さらには、「抗議だけでは効果が少ない。コンプライアンス違反の可能性があるので、調査を求める」と、スポンサー企業のコーポレートガバナンスを問うことが必要だとの意見も見られるようになってきたのも大きな影響を与えていると思います。実際、株主総会でも同様に質問をしたとのツィートも見ていますので、こうした活動が効果をあげ、テレビからのスポンサー離れが加速しているようです。

また、オンライン化の加速でインターネット広告の勢いも増してきています。2021年には、マスコミ四媒体の広告費(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)を初めて上回りました。



費用対効果の問題、偏向報道によるスポンサー離れ、インターネットに凌駕されているという現実、華やかなサッカーワールドカップの裏でテレビメディアの苦悩は深まるばかりなのではないでしょうか。




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②食料不足が招く価格の高騰 topics(672)

2022-12-06 00:00:00 | 政治見解



topics(672):②食料不足が招く価格の高騰


( 『①食料危機の予兆』の続き )

レポートは続きます。


この物資が絶たれる前から、状況はすでに少し緊迫していた。世界の食糧価格は、パンデミック時にすでに 5%ほど上昇していたのだ。世界銀行は、食料価格が 1 ポイント上昇するごとに、世界中でさらに 1 千万人が極度の 貧困状態に陥ると警告している。そして今、事態はさらに悪化している。

食料に関しては、主に天候などの関係で需給の問題が発生する。インドは、中国に次いで世界第 2 位の小麦生産国であり、世界の食糧システムにおける他の主要な穀物輸出国の作柄が悪天候で落ち込んだにもかかわらず、インドの昨年の 豊作もあってウクライナの減産によって生じた市場のギャップを埋めることができた。

しかし、インドでは熱波によって農作物が被害を受けたため、5 月に小麦の輸出を直ちに禁止することを発表した。インド政府は、食料価格の高騰は、インドと他の脆弱な国の両方にとって、重要なコモディティの安全性を脅かしていると述べた。

中国もまた、重要な穀倉地帯だ。中国が生産する食糧は、世界の総輸出量の約 20%を 占めている。しかし、中国ではゼロ・コロナ政策が実施されているため、多くの農家が働けず、食料の生産量が圧倒的に少なくなっている。

上記だけでも十分に酷く聞こえるが、これらは食糧価格の高騰を招いている問題のほんの一部に過ぎない。合成肥料の原料が不足し、価格が 3 倍になった例もある。 パンデミック発生以降、ロシアのウクライナ侵攻、豪雨によるサプライチェーンの問題、天然ガス価格の高騰など、いくつかの問題がこの不足の要因となっている。

農家は初めて、収穫期の農作物の収量を落とさずに施肥(せひ)できる量の限界を試されている。合成肥料に使われる窒素は、空気中の窒素とメタンの水素を結合させてアンモニアを作り、そのアンモニアから硝酸アンモニウムなどの窒素が作られ、優れた肥料になる。このプロセスでは、必要なメタンの供給と、化学反応の熱源として天然ガスが使用される。天然ガス価格が高騰しているので、当然このプロセスも高価になり、カリ(カリウムを含む鉱物の一種)などの天然肥料の需要が高まっている。

カナダは世界有数のポタッシュ(カリウム)の生産国だ。ウクライナ戦争の開始以降、 肥料のポタッシュの価格は 3 倍近くに達している。これはカナダにとっては朗報だが、農家にとっては悪い知らせであり、食料価格にとっても悪影響だ。

ポタッシュの生産量第 2 位はロシアで、経済制裁によって、世界はロシアのポタッシ ュを手にすることはできない。これらをまとめると、 作物の収量の減少、食糧供給の破壊、エネルギーコストの上 昇、肥料コストの上昇などにより、世界中で食糧の価格が大幅に上昇している。

では、世界の食糧不足はどの程度懸念すべきなのだろうか?

上記で述べたことの結果、2つの危険性が浮かび上がる。 食料価格の高騰は、すべての人の豊かさにマイナスの影響を与える。同時に、食料不足が深刻化して人々が食料を手に入れられなくなれば、「物価高」を超えたさらに大きなグローバルな問題が発生することになる。

これからどれだけ悪化するのか、今は予測するのが難しい。

今後、数週間から数カ月の間に入ってくるデータを注視していく必要があるが、現在の状況は、 2007 年と 2008 年に起きた前回の食糧危機のときよりも悪化しているように見える。

2006 年〜2008 年にかけての世界価格は、米が 217%、小麦が 136%、トウモロコシが 125%、大豆が 107%上昇した。2007 年以降にあらゆる種類の肥料の価格が劇的に上昇 し、2008 年の夏頃にピークに達した。物価の高騰は、アジアやアフリカの一部で抗 議や暴動に拍車をかけるほどだった。

また、仮に事態がそれほど悪化せず、混乱が限定的なものになったとしても、2024 年 までは影響と食料価格の上昇が見られると思われる。なぜなら、食品は工場とは違い季節が関係しており、植え付けの季節と収穫の季節がある。

今年のように作付けや収穫の時期を逃したり、農作物を輸出できなかったりすると、農家は種や肥料、農機具などの資金が不足することになる。その結果、将来の収穫が少なくなってしまう。ウクライナ戦争が長引けば、作付けや収穫の時期を何度か逃すことになる。

さらに、ロシアに対する制裁がエスカレートし、いずれは農産物も対象となる可能性がある。食料価格の高騰や食料不足は政府の介入を招きやすく、それは時に問題を大きくするだけだ。

また、インドと同様、政府は重要なコモディティを、必要とする国への輸出を止めるという選択をすることも可能だ。その結果、世界の食糧確保に大きな問題が生じる可能性がある。

農作のシーズンを逃すことに加え、食品輸出の禁止は農家の収益性を低下させ、次のシーズンに向けてより多くの作物を植えるための資金が不足してしまう。

(中略)

さらに、食料の需要が急増しているだけでなく、現在の食料生産能力、いわゆる供給量の減少も予測される。意識していないかもしれないが、現在、100年前のように農場を増やすことはできない。そして実際、毎年のように耕作可能な農地が失われている。

1992年から2012年の間に、3,100万エーカー以上の農地が失われた。

また、国連によると、一分あたり約23ヘクタールの良質な農地が消滅している。これは、サッカー場約32個分を合わせた大きさで、60秒ごとに失われている。

農地の急激な減少の原因は何か?
その理由はいくつかある。

主な理由としては、世界中の都市が猛烈な勢いで成長していることが挙げられる。都市化の勢いはとどまるところを知らず、先進国では都市がどんどん拡大している。

都市を拡大するために、隣接する農地を奪って住宅を建設しているのだ。アメリカだけを見ても、農地は急速に減少している。北米、欧州、日本などの先進国でも起きていて、さらには中国やインドなどの新興国でも、同様に都市化が進み、適した農地が奪われている。

つまり、今ある農場だけで減少した分を補う必要があるということだが、残念ながら、年々それは難しくなっている。

世界の食料供給に影響を与えるもう一つの要因は、風や水による浸食で、土壌の最上部にある表土と呼ばれる層が少しずつ削られていることだ。

世界の食料の約95%はこの層で育てられているが、過去150年間に全表土の約50%が消失している。農業について見識のある方であればご存じかもしれないが、農家が農地を購入する際に最も重要視するのは、表土だ。そしてそれは、手に入れるのが難しいということでもある。表土は1,000年に約3cmの割合で再生される。

地球規模の農業システムが表土を破壊している現在のペースでいくと、国連の試算では、私たちの農場に残された表土の寿命はあと60年とされている。

だから、世界の人口はかつてないほど急速に増加しているにもかかわらず、もう従来の方法では、食料生産量を急速に増やすことはできないのだ。つまり、食料の需要は増える一方で、食料の供給量は減り始めるということだ。当然のことながら、需要が高く供給が少なければ、価格は上昇する。実際、今、世界の食料価格はまさにそのような状況にあるのだ。



ここまでで引用を終わります。レポートはここから株式投資の話に進みますが私自身が興味がないので、そこは割愛いたします。

ただ、このレポートでは日本人があまり意識していない海外における食糧の不足とそれに伴う高騰が論じられていますが、これに日本も少なからず影響されていくということだけは押さえておかなければなりません。



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