赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

安全保障法制はなぜ必要なのか

2015-05-22 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(23)

安全保障法制はなぜ必要なのか




時代の潮流を変えたもの

安全保障法制の整備が急がれた理由は、中国のパワーゲームにあります。パワーゲームとは「大国がその政治的、経済的な力を背景にして主導権を握ろうとして行う、国際政治上のかけひき」のことを言います。

中国はここ数年間、日本の領海である尖閣諸島への侵攻を試みたり、東シナ海上空に防空識別圏を設定するなどの唐突な行動を取りました。それが結果的に、日本国内の国防意識を高めることにつながったと言えるでしょう。

また、日本に対するのと同様、南シナ海における行動がASEAN諸国の不興を買い、結果的に、日本とアメリカの密接な連携をもたらし、東南アジア諸国と日本が強く結びつく要因になったと思います。


安全保障法制、新聞メディアはどう伝えたか

5月14日、政府は集団的自衛権の限定的な行使を可能にすることなどを柱とした安全保障関連法案を決定しました。18時からは安倍総理が記者会見【※1】を通して国民に安全保障法制整備の意義を述べました。

【※1】「もはや一国のみで自国の安全を守ることはできない時代」、「厳しい現実から目を背けることはできない。平和外交を展開すると同時に、万が一の備えを怠ってはいけない」、「あくまで日本人の命と平和な暮らしを守るため、あらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行うもの」と語った。

読売新聞は社説で「安保2法案決定 的確で迅速な危機対処が肝要」と賛意を示しました。一方、朝日新聞「安保法制、国会へ この一線を越えさせるな」として「法案を成就させるわけにはいかない」と真っ向から反対意見を表明しています。


抑止力が国民の命を守る

現在のようなパワーゲームが行われている国際社会にあっては、軍事力の弱い国は軍事大国のパワーに飲み込まれてしまう現実があります。その意味で安全保障法制の整備は戦争の惨禍を防ぐ有力な選択肢であることを認識すべきだと思います。

フィリピン領である南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)のミスチーフ礁がいま、中国によって埋め立てられ(面積は計約8平方キロ、東京ドーム約170個分の広さ)ています。かつて、フィリピンは「米比相互防衛条約」を締結して米軍が駐留していいました。しかし、1992年に条約が事実上失効すると同時に米軍は撤退しました。その直後から中国軍の活動が活発化して、同環礁を占拠し建造物を構築しはじめたのです。フィリピンが抗議しても中国は耳を貸しません。

残念ながら現在の国際社会では、軍事力という「力」の存在が一定のバランスを保つ働きをし、バランスがとれた状態が「戦争のない平和な状態」が実現していることになります。

しかし、いままで「その地域を支配していた力」が及ばなくなって「力の空白」地帯ができますと、そこに「別の力」が容易に入り込んできます。軍事的な侵略はこのような「力の不在」によって引き起こされるのが通常です

そのため、各国はそれぞれしかるべき軍事力を持ち、他国から攻撃されぬよう努力しているわけです。さきほどのフィリピンの事例も、「力の空白」が引き起こした典型例です。


「戦争反対」で備えを怠れば、戦禍にさいなまれる

従って日本も戦争に巻き込まれないために万全の備えをしておかなければならないのです。

また、一部の人々の「戦争反対」の掛け声が「守る力」をも否定して「力の空白」をもたらす最大の元凶であることも知っておく必要があります。
5月14日、安倍総理は記者会見で次のように述べました。

「安保条約を改定したときにも、また、PKO協力法を制定したときにも、必ずと言っていいほど、戦争に巻き込まれるといった批判が噴出しました。しかし、そうした批判が全く的外れなものであったことは、これまでの歴史が証明しています」と・・・。

誰しも戦争を望んではいません。しかし、日本だけが「戦争放棄」しているからといって何も備えをしなければ、軍事的な空白地帯である日本はあっという間に攻め込まれます。これまで日本は、米軍の存在があり、自衛隊の存在があったからこそ70年もの間、どこからも攻め込まれなかったのです。

「戦争反対」を叫ぶ人ほど危険な存在はありません。彼らの「戦争反対」を叫ぶことによって日本の防衛力を弱めようとする行為は、「力の空白」を招き、日本を侵略させるための亡国行為であると言っても過言ではありません。


安全保障法制の先にみえるもの それはアジアの平和と安定

残念ながら、未だ、国際社会が「世界をあげて戦争をしない」という理想の状態には至っていません。したがって、この集団的自衛権問題は世界全体が平和になるための一つのプロセスとしてどうしても通過しなければならない関門だと思います。

同時に、この安全保障法制の整備、そして集団的自衛権行使の問題は日本一国のためだけのものではありません。

東南アジア諸国は日本に熱い視線を投げかけています。2014年5月末のアジア安全保障会議で安倍総理が「アジアの平和と繁栄よ 永遠なれ」と題した講演の実現を切に待っているのです。また、先日の日米首脳会談で宣言された「日米が中核となり,法の支配に基づく自由で開かれたアジア太平洋地域を維持・発展させる」ことを強く待ち望んでいるのです。

東南アジア諸国は、日本とともにアジアの繁栄と平和を築きたいのです。そして、それを可能にするのが日本の安全保障法制の整備なのです。なぜなら、日米間の安全保障・防衛協力の強化が、東南アジア諸国の安心感を醸成し、相互の信頼及び協力関係を深めるきっかけとなるからです。

私たちは、安全保障の法整備が、日本国民の生命と平和な暮らしを守り、東南アジアの安定と平和のために必要なプロセスなのだと強く自覚していきたいと思います。



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