昨日、シュミット村木眞須美さんの「左手のピアニスト」をご紹介した
ところ、思いがけず大勢の方にご覧いただいて、とても感心が高い
ことを実感しました。
ただ、この本は、ゲザ・ズッチだけでなく、第一次大戦で右腕を失った
オーストリアのピアニスト「パウル・ヴィトゲンシュタイン」についても、
かなりの紙数を費やしてお書きになっています。
特に、経済的に恵まれていた彼は、当時(20世紀初頭)活躍していた
ラヴェルやリヒャルト・シュトラウスなどに、左手のためのピアノ曲の
作曲を委託し、自らそれを演奏しました。
ご本によると、彼はかなり難しい気性の人だったらしく、出来上がって
来た曲が意に沿わないと、作曲者にその旨伝え、演奏することもなか
ったと言います。また、気に入って演奏した曲でも、他の「左手のピア
ニスト」に演奏を許可することはなかったようです。
その点、現在、「左手の・・・」と言えばこの曲を連想するほど傑作とされ
ているラヴェルの「左手のためのコンチェルト」も例外でなく、作曲当初
は、委託者である彼によって演奏されることはありませんでした。
一度、このコンチェルトを聴いてみたいと思い、手元のソフトを漁ってみ
ると、EMIが編纂した世界音楽全集に、マゼール・フランス国立響がフリ
ップ・コラールの独奏で録音したLPがありました。
ご存知のように、ラヴェルは、「展覧会の絵」や「ボレロ」など、その華麗な
オーケストレーションで知られています。このコンチェルトもジャズの曲想
を盛り込んだ異色の仕上がりとなっていますが、重層的な響きは、彼独特
の世界を形成し、これが「左手(だけの)」のピアノコンチェルトかと驚かさ
れました。