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田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

国会議員はムダか?

2009年08月26日 | ドラミング

先日配布された選挙公報。
食卓に載ったまま放置されていたが、そろそろ今度の選挙で、どの政党を支持するのか決める必要もあって、今朝、これを手に取り驚いた。

マスコミは、民主党大躍進と報道しているが、地元選挙区(北海道4区)の同党候補者は、その公約の第一番目に「ムダづかいの排除」をかかげ、その中に衆議院議員の定数を80削減するとある。

元々、国会議員を「ムダ」扱いにして、それを削減するという発想そのものが気に入らない。その「ムダ」なものに大挙して立候補、当選を期すというのは矛盾ではないか。

また、公報には、どの部分を減らすか記載していないが、報道によると、現行の比例定数を80削減して100にするということらしい。

現在の小選挙区制度の元では、民意が公平に議席に反映する比例部分の持つ意義は極めて大きいが、この部分を切ってどうしようと言うのか。まったく理解に苦しむ。

この小選挙区制。当初案は、小選挙区250/比例区250だったはず。それが、300/200で実施され、その後、比例を20減らして現行の300/180となった経緯がある。今更、比例部分を80も削ってどうしようというのか。民主党の党名にも恥じる公約だと思う。

あるNPOの試算によると、年間、国会議員一人にかかる経費(税金)は約8,000万円だから、定数を80削って節約できる税金は、年間64億円である。大した金額ではない。

政治の「ムダの排除」を言うなら、毎年300億円余の税金が使われる「政党(助成)交付金」を全廃した方がよほど効果的である。生まれたばかりの赤ちゃんからお年寄りまで、その政治信条にかかわりなく、毎年、国民一人当たり250円、総額300億円もの負担を強いているわけだが、支持政党を持たない、いわゆる無党派層が国民の4割にも達する中で、これらの人々を含む国民が納めた税金を、特定の政党につぎ込む不合理は、一日も早くなくすべきだ。

昨今の不況で仕事が減り、また単価の切り下げなどで、事業の継続が困難になる中小企業が多い中で、景気や業績に関係なく、四半期毎に規定額が給付される政党(助成)交付金ほど、国民をバカにした制度はないと思うがどうであろうか。


歴史をつくる主役は~長崎平和宣言

2009年08月10日 | ドラミング

昨日の被爆64周年長崎平和祈念式典で田上市長が読み上げた「長崎平和宣言」は、オバマ大統領のプラハ演説を受けて、核廃絶への道を歩むべきとの具体的提案を含む画期的なものとなりました。備忘録を兼ね、ここに採録します(出典:Asahicom)


 今、私たち人間の前にはふたつの道があります。

 ひとつは、「核兵器のない世界」への道であり、もうひとつは、64年前の広島と長崎の破壊をくりかえす滅亡の道です。

 今年4月、チェコのプラハで、アメリカのバラク・オバマ大統領が「核兵器のない世界」を目指すと明言しました。ロシアと戦略兵器削減条約(START)の交渉を再開し、空も、海も、地下も、宇宙空間でも、核実験をすべて禁止する「包括的核実験禁止条約」(CTBT)の批准を進め、核兵器に必要な高濃縮ウランやプルトニウムの生産を禁止する条約の締結に努めるなど、具体的な道筋を示したのです。「核兵器を使用した唯一の核保有国として行動する道義的な責任がある」という強い決意に、被爆地でも感動がひろがりました。

 核超大国アメリカが、核兵器廃絶に向けてようやく一歩踏み出した歴史的な瞬間でした。

 しかし、翌5月には、国連安全保障理事会の決議に違反して、北朝鮮が2回目の核実験を強行しました。世界が核抑止力に頼り、核兵器が存在するかぎり、こうした危険な国家やテロリストが現れる可能性はなくなりません。北朝鮮の核兵器を国際社会は断固として廃棄させるとともに、核保有5カ国は、自らの核兵器の削減も進めるべきです。アメリカとロシアはもちろん、イギリス、フランス、中国も、核不拡散条約(NPT)の核軍縮の責務を誠実に果たすべきです。

 さらに徹底して廃絶を進めるために、昨年、潘基文国連事務総長が積極的な協議を訴えた「核兵器禁止条約」(NWC)への取り組みを求めます。インドやパキスタン、北朝鮮はもちろん、核兵器を保有するといわれるイスラエルや、核開発疑惑のイランにも参加を求め、核兵器を完全に廃棄させるのです。

 日本政府はプラハ演説を支持し、被爆国として、国際社会を導く役割を果たさなければなりません。また、憲法の不戦と平和の理念を国際社会に広げ、非核三原則をゆるぎない立場とするための法制化と、北朝鮮を組み込んだ「北東アジア非核兵器地帯」の実現の方策に着手すべきです。

 オバマ大統領、メドベージェフ・ロシア大統領、ブラウン・イギリス首相、サルコジ・フランス大統領、胡錦濤・中国国家主席、さらに、シン・インド首相、ザルダリ・パキスタン大統領、金正日・北朝鮮総書記、ネタニヤフ・イスラエル首相、アフマディネジャド・イラン大統領、そしてすべての世界の指導者に呼びかけます。

 被爆地・長崎へ来てください。

 原爆資料館を訪れ、今も多くの遺骨が埋もれている被爆の跡地に立ってみてください。1945年8月9日11時2分の長崎。強力な放射線と、数千度もの熱線と、猛烈な爆風で破壊され、凄(すさ)まじい炎に焼き尽くされた廃墟(はいきょ)の静寂。7万4千人の死者の沈黙の叫び。7万5千人もの負傷者の呻(うめ)き。犠牲者の無念の思いに、だれもが心ふるえるでしょう。

 かろうじて生き残った被爆者にも、みなさんは出会うはずです。高齢となった今も、放射線の後障害に苦しみながら、自らの経験を語り伝えようとする彼らの声を聞くでしょう。被爆の経験は共有できなくても、核兵器廃絶を目指す意識は共有できると信じて活動する若い世代の熱意にも心うごかされることでしょう。

 今、長崎では「平和市長会議」を開催しています。来年2月には国内外のNGOが集まり、「核兵器廃絶―地球市民集会ナガサキ」も開催します。来年の核不拡散条約再検討会議に向けて、市民とNGOと都市が結束を強めていこうとしています。

 長崎市民は、オバマ大統領に、被爆地・長崎の訪問を求める署名活動に取り組んでいます。歴史をつくる主役は、私たちひとりひとりです。指導者や政府だけに任せておいてはいけません。

 世界のみなさん、今こそ、それぞれの場所で、それぞれの暮らしの中で、プラハ演説への支持を表明する取り組みを始め、「核兵器のない世界」への道を共に歩んでいこうではありませんか。

 原子爆弾が投下されて64年の歳月が流れました。被爆者は高齢化しています。被爆者救済の立場から、実態に即した援護を急ぐように、あらためて日本政府に要望します。

 原子爆弾で亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りし、核兵器廃絶のための努力を誓い、ここに宣言します。

 2009年(平成21年)8月9日  長崎市長 田上富久


天の声

2009年06月21日 | ドラミング

西松建設の国沢幹雄前社長による政治資金規正法及び、外為・外国貿易法違反事件の公判が開かれた。

同氏は、起訴事実を全面的に認めるとともに、弁護人質問では、「大なり小なり競争に勝つためには(政治家への多額の政治献金も)必要と考えていたが、悪弊をなくす努力を何故できなかったのかと忸怩たる思いだ」と述べたという。

つまり、前民主党党首、小沢氏への多額の献金は、公共工事の受注に必要な同氏側からの「天の声」を得るためのものであって、その違法性を十分認識していたことになる。

一方、西松建設と密接な関係を持ちつつ献金の受け皿となり、実質的に「天の声」を発していたとされる小沢氏の公設第一秘書、大久保隆規容疑者側は、「検察の一方的な主張で根拠はない」と主張しているという。

しかし、「便宜供与を期待しての献金」という主張は、極めて納得性があり庶民感情にも沿うものである。何も期待せず、億を越す金を出す者がいるだろうか。

20日の朝日朝刊に堀田力氏(元特捜検事)の談話が載っている。
堀田氏は、「冒頭陳述で、小沢事務所が政治力を悪用して公共工事を私物化した事実が明らかになった。(業者に)高く落札させて得た利益を(政治家に)還元させるのは、税金の横領と行っていい。事件は政治資金の実態を国民の目から覆い隠す行為で悪質だ」と述べている。

これがこの事件の本質だと思うがどうだろうか。


まずはメデタシ~小沢氏辞任

2009年05月12日 | ドラミング

民主党小沢一郎代表が辞任した。
遅きに失したが、誠に喜ばしい。

小生は、民主党の支持者でも関係者でもないが、政治の刷新を望む立場から、小沢氏の代表辞任を強く求めて来た

それは、政治家の生命線とも言うべき政治資金問題で、自らの公設秘書が規制法違反容疑で逮捕・起訴されている中で、公党の代表に居座るのは、いかにも国民をバカにしていると思ったからだ。

長期にわたり、特定の建設業者から巨額の政治献金を受けながら、単なる「手続き論」にすりかえる同氏の主張は、国民を納得させるものではない。この点については、昨日の記者会見でも何の説明もなかった。

従って、小沢氏が代表を辞めたからと言って、それがすぐさま民主党の支持回復につながるものではない。それほど国民は甘くない。

つまり、一方の当事者である自民党を含め、政治と金の問題について明確な対応方針を示さないかぎり、国民の支持を得ることはできない。

政党助成金制度で国民の税金を使いながら、国民の期待に応えられない政党などナンセンス。大いなる刷新を期待したい。

 

 


的を得たBPOの見解~NHK番組改編問題

2009年05月03日 | ドラミング

今日はうすら寒い曇天です。
午後には晴れるようですから、畑を耕す準備を始めようと思っています。

4月28日、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は、2001年に起きたNHK番組の改変問題について意見書を公表しました。

これによると、

1)公共放送であるNHKにとって、自主・自立は、最も重要な理念であり視聴者からの期待と信頼の源泉である。従って、日常的に政治家と接している部門の責任者が、政治家が関心を抱いているテーマを扱う番組の制作に関与すべきでない。

今回、番組の放送前に、放送総局長が官房副長官であった安倍晋三氏に面談し、その後、国会担当局長を含め、制作スタフに改変を指示したことは、自主・自立を危うくする行為である。

2)この結果、放映された番組は、シリーズの前作3本に比べ散漫な内容となり、当初の企画、趣旨から大きく後退し、番組の質の低下につながった。

3)NHKは、受信料制度のもと、政治の監督を受ける立場にあればこそ、政治や政治家との距離を適切に保たねばならない。しかるに、番組制作局長や国会担当局長が、何の躊躇や障壁もなく、放送・制作部門に出入りし、直接改編に関与した。NHKは、明確な任務分担と組織的な分離を行うべきである。

とNHKの対応のまずさを指摘すると共に、改善点を提起しています。

これに対し、NHKは「強い違和感を覚える」とした談話を出し、依然としてこの問題を真剣に反省し、改善処置を取ろうとの姿勢をみせていません。

もしこのまま何も手をつけず、従来の態度に終始するなら、再度視聴者の猛反発を招き、受信料不払いの拡大につながりかねません。NHKの猛省と真摯な対応を希望するものです。

彼らが顔を向けるべきは政治家ではなく、毎月の家計から受信料を払い続ける視聴者大衆であることを肝に銘じるべきです。

(注)番組とは~従軍慰安婦問題を民間人が裁く民衆法廷を取り上げ、2001年に放送されたETV特集「問われる戦時性暴力」で、50分強の粗編集版が、放送前日と当日に、直接関与した兵のインタビューなどを削除して40分に短縮され、放送された。

 

 


ナイジェリア詐欺

2009年04月03日 | ドラミング

今日のニセコはとびきりの快晴です。
雪面の反射もあって、強烈な日差しが差し込んでいます。

先日、古いノートパソコンをインターネットオークションで売却したのですが、その際、出品者に対する質問欄に、カナダから英文による照会がありました。

曰く、あなたが出品しているパソコンを、ナイジェリアに住む弟にプレゼントしたい。ついては、あなたの銀行口座に2,000ドルを送金するから、それをパソコンの代金と送料に当てて欲しいと。

エェッ! 何でカナダからこんな引き合いがあるの? 
しかも日本製のパソコンをナイジェリアへ送ってどうするつもり?と思いつつ、メールでやり取りをしていたのですが、その内、出品していたパソコンは、本邦の方が落札し、売却が決まってしまいました。

そこで、カナダからの照会に対しては、「売れてしまったので、対応不能」と書き送ったところ、今度は、他に適当なパソコンを紹介してくれ、それをナイジェリアへ送ってくれ。代金はいますぐ送金する。すぐ口座情報を知らせ、と矢の催促。

せっかくの照会なのでめんどうをみてやってもいいかと思い、他の出品者と連絡をとって商品の予約をした上で、送付方法などの調査をしていたのですが、その間も、先方からは「早く口座情報を送れ、金を振り込む」との督促が続きました。

それにしても、日本語のパソコンがどうしてナイジェリアで必要なのかという質問に、何も答えないまま、口座情報の開示をせっつくことに違和感を持ち、検索サイトで調べてみてビックリ!! この手の手法は「ナイジェリア詐欺」と呼ばれ、古くから存在しているとのこと。

昔は、やれ石油の利権を買わないかとか、高額の闇金があるが利用しないかとか、あの手この手で詐欺を働く国際グループが、ナイジェリアを拠点に暗躍していたようですが、最近は、手口も小振りになって、せいぜいパソコンをだまし取るとか、口座情報を入手して、あわよくばそこから預金を引き出すとかいう手口に変って来ているようです。

上記から、即座にコレポンを中止して、先方からのメールは自動廃棄するよう設定して関係を絶ちました。それにしても、こちらの好意を逆手にとって悪さをする詐欺団には怒りを覚えます。皆様もどうぞお気をつけ下さい。 

 


小沢氏続投の影響は明らか

2009年03月30日 | ドラミング

今日のニセコは、チラチラ雪が舞ったり、日差しがでたりの落ち着かないお天気です。気温は大分上がって、正午現在、4℃ほどです。

昨日投票が行われた千葉県知事選挙。
自民党系の森田氏が、民主・社民党などが推薦した吉田候補に40万票の大差をつけて当選しました。

民主党などは、政権選択選挙の前哨戦と位置づけて戦っただけに、この結果に衝撃を受けているようです。

やはり、小沢代表が、自らの金権体質について十分な説明を行わないまま、党首続投を決めたことが影響しています。

また、この問題に対するマスコミ各社の世論調査結果をみても、説明責任を果たしていない、小沢氏は党首を辞めるべきとの声が6割を越えています。このままでは、昨日の(小生の)記事のように、民主党の苦悩は深まるばかりです。

 


壊し屋

2009年03月29日 | ドラミング

朝からまぶしい日差しが降りそそいでいます。
日差しは春そのものですが、周囲は積雪1mの銀世界。気温は、-4℃と、春にはほど遠い状況です。

民主党は、27日、衆参両院でそれぞれ議員集会を開いて、小沢党首の政治資金疑惑に関する釈明を聞き、これを了承しました。

この報道に接し、民主党もこれで終わりだなとの印象を持ちました。

同氏は釈明演説で「すべてを政権交代にかける」としましたが、これは、つまり、政権交代が実現した暁には、彼に(首相として)国の舵取りをまかせるということですが、果たして、国民はこれを受け入れるでしょうか。答えは「否」です。

単に選挙上手だからという理由で、金銭疑惑の渦中に居る党首に物も言えず、自ら自浄作用を発揮しえない政党に、どうして国民は政権を託すでしょうか。

これで民主党は、政権交代どころか、次の選挙で大きく後退することになるでしょう。小沢氏は、今回もまた、「壊し屋」にふさわしい役割を演じたと言えるでしょう。

今朝の新聞(朝日)に載った投書は、今の民主党に対する国民の気分を代表しているように思いましたので、以下、ご紹介します。

代表居座りで政権遠ざかる(無職67歳、世田谷区)

民主党の小沢代表の代表続投の会見を聞き、民主党支持者として全く失望した。

第一に小沢氏は、政治献金疑惑に対して国民に説明責任を果たしていないこと、第二になぜ代表の座にとどまるのか理解に苦しむ。

そもそも小沢氏は、どうして長年にわたり、このような多額な政治献金を集める必要があったのか、また、その金がどのように使われたのか国民に説明する義務がある。

一企業が何の目的もなく政治家に多額な寄付をするということは常識では考えられない。小沢氏はすべて秘書に任せていたと言うが、本人も事実を承知した上で秘書に委任したのだろう。たとえ小沢氏個人に刑事責任が及ばないにしても公設第1秘書が起訴された事実は重く、民主党全体のイメージダウンになり、そのダメージは多大だ。

小沢氏は「政権交代のために頑張りたい」と言うが、代表の座に居座り続ければ続けるほど政権は遠ざかる。多くの国民が、代表を辞任すべきだと考えているからだ。小沢氏の考えは民意を無視した独断である。

民主党執行部の中の小沢氏擁護の動きも理解できない。政党の自浄能力なければ、自民党と同類と見なし、国民はますます政治から離れてゆく。民主党は、政党としての存亡の危機状態にあると認識すべきだ。

 


NHKスペシャル「菜の花畑の笑顔と銃弾」

2009年02月24日 | ドラミング

今日のニセコは、薄日も射すが小雪も舞うというはっきりしないお天気です。快晴を期待して滑りに行きましたが、風が強く雪面も見難いので、1時間ほどで帰ってきてしまいました。

昨夜、ご覧になった方も多いと思いますが、NHK総合で放映されたNHKスペシャル「菜の花畑の笑顔と銃弾」は、見ごたえのある良質のドキュメンタリーでした。

昨年8月、アフガニスタンで武装グループに拉致、殺害された伊藤和也さん。5年間にわたる農業指導のかたわら撮りためた3,000枚の写真を残していました。



写真は、戦乱の地で農業指導に苦闘する彼自身の他、緑の戻った大地をうめる菜の花や初めて収穫した薩摩芋や葡萄を手にして微笑む子供たちや村人など、いくつもの感動的なシーンを伝えています。

そして、彼に学んだ農業技術を継承し、広大な荒地を緑に変える作業に精出す村人たちが、「村人が腹一杯食べることができるようになれば、紛争など起らない」と話すシーンは、何が真の国際援助かを如実に物語っていると思いました。

この番組は、2月26日(木) 午前0:45~1:35 再放送されます。写真は、NHK ONLINEから借用しました。

 


オバマ政権の外交政策

2009年01月27日 | ドラミング

今日のニセコは、時々雪が降る落ち着かないお天気です。
昨夜かなりの降雪があり、母屋の屋根は、また30cm以上の雪が堆積しています。

朝日・読売などの全国紙は、政権発足直後の22日、オバマ大統領が国務省で行った演説を詳しく報道しませんでしたが、今後の米国の外交政策を占ううえで極めて重要な演説だと思います。特に、国務省の外交官がどのような心構えで、米国の外交を推進すべきかについて述べた部分は、傾聴に値します。

一方、パレスチナ問題については、イスラエルがガザに侵攻し、パレスチナ人に対して執拗に攻撃を繰り返していた3週間、彼はだんまりを決め込んでいたこともあり、その対応が注目されていましたが、「米国は、イスラエルが自国を防衛する権利を常に支持する」と述べ、イスラエル寄りともとれる発言を行っています。

私たちは、オバマ政権を無条件に支持するものではなく、個々の政策が、国際信義と道理にもとづいてどのように実行されていくかを注意深く見守って行く必要があると思います。備忘録の意味もあり、演説全文を山形新聞から拝借して掲載します。

オバマ大統領の国務省における演説全文(2009/01/22)

 ありがとう。ありがとう。皆さん、ありがとう。着席してください。

 この場に来て国務省の俊英の皆さんに賛辞を呈するのは、光栄なことだ。わたしは既に、皆さんに贈り物をお送りした。ヒラリー・クリントンです(笑いと歓声)。

 彼女はわたしが全幅の信頼を置く国務長官だ。彼女の就任を速やかに承認していただいたことを、上院(外交委員会)のケリー委員長に感謝したい。われわれには時間がないのだ。

 わたしが本日ここに来たのは、米国のリーダーシップを新たにする上で、わたしが外交の重要性を重視していることの表れだ。(また)あなた方が毎日遂行している職務に謝辞を申し上げる機会としたい。ご存じの通り、米国民は時として、皆さんとご家族の犠牲や皆さんが職務を果たすために日夜を問わず続けている献身を、完全には理解していない。

 ジョー・バイデン副大統領はじめ壇上の面々を代表して申し上げたい。皆さんは私たちの誇りだ。皆さんは米国民の安全と無事のために不可欠な職務を遂行している。今後の成功に向けて国務省が決定的に重要な役割を担っていることを、全国民に理解してもらいたい。あなたがた1人1人が、今後の成功を左右する。

 そして、外交に携わることを考えているすべての若い方に伝えたい。米国の力と、米国の価値観と理想を伝える上で、彼らが極めて重要な役割を担うということを。

 この新世紀を受け継ぐためには、米国に新たな指導力が必要だ。米国の強さは武力や富だけではなく、私たちの不朽の価値観がもたらすということを認識すべきだ。わが国の安全保障と世界中の人々の切望のためにも、新時代は今、始まらねばならない。

 本日、わたしは3つの大統領令に署名した。まず第1に、はっきり言いたいのが、米国は拷問をしない(歓声)。第2に、グアンタナモ(海軍基地)の収容所は閉鎖し、あそこで収容されている人々の処遇を決定する。そして第3に、わが国と法による支配を最もよく保護するために、テロ容疑者の拘束と司法の在り方をどうするか、包括的な見直しを直ちに行う。

 米国は自国の安全を守るために決意を曲げず、テロを実行しようとしたり、米国を脅かしたりする者を徹底的に追跡する。このことを、世界は理解すべきだ。だからこそ、この見通しのはっきりしない戦いでは、持続性のある枠組みが必要なのだ。

 本日私が署名した大統領令は、わたしたちの行為が自由を守る上で必要であり、用心深く安全保障に配慮しつつ、基本的な価値観を堅持しているということを明確に示すものだ。

 米国の道徳的な模範は、わたしたちの世界的指導力の基盤であり指針であらねばならない。わたしたちは極めて複雑で、相互に関連した地球規模の難題に直面している。テロとの戦い、宗派の分断、そして死をもたらす技術の拡散だ。私たちが求めたのではないにせよ、歴史が与えた重荷を米国は背負い、持ちこたえねばならない。

 直ちに簡単に前進できるわけではないし、世界中の誤りを正すと約束することもできない。しかしわたしたちは、国民を保護し、国益を満たし、理想を推進するために、米国の力のすべてを用いることは確約できる。信念に基づき焦点の明確な、持続性のある米国の外交から始めよう。

 その努力を進めるためには、何年にもわたり皆さんの激務と根気が必要だ。

 わたしたちが直面する課題の緊急性と複雑さにかんがみ、またわたしたちの真剣さを示すためにも、クリントン国務長官と私は今日、2人の優れた米国人に登板を願った。

 イスラエルとパレスチナ、アラブ諸国との持続的な和平を積極的かつ攻撃的に求めることが、わたしの政策だ。この目的のためにクリントン長官と私はジョージ・ミッチェルに中東特使就任をお願いした。

 ジョージの交渉力は、米国と世界中で有名だ。国際的な名声があり、職務に生涯をささげてきた。上院議員として強固な指導力と、党派を超えた成果をあげてきた。北アイルランド和平で、苦痛に満ち長期化した紛争を調停するうえで彼の尽力は欠かせなかった。公私にわたり、有能さと誠実さを示してきた。交渉に当たっては全権を委任され、和平に向けた米国の立場を維持する。

 行く手の険しさは疑う余地もない。ジョージは難しさを概説してくれた。ガザとイスラエル南部での戦闘は、その難しさと、今後避けられないであろう後退を思い起こさせた。

 米国が強力にたゆまず関与すれば、分断は乗り越えられるし前進する力が得られることは、歴史が示している。事態の緊急性を実感しなければならない。だからこそ、今般の停戦を当事者らに維持させ定着させるために、ジョージを可能な限り早く現地に派遣するのだ。

 はっきりさせておこう。米国はイスラエルの安全を守るために全力を尽くす。イスラエルが自国を防衛する権利を常に支持する。(パレスチナのイスラム原理主義組織)ハマスは多年にわたり、何千発ものロケット弾を罪のないイスラエル市民に向け撃ち込んできた。民主主義と国際社会は、そのような脅威を容認できない。パレスチナ人の利益も、そうしたテロ行為によって後退させられている。

 欧州連合(EU)と国連、米国、ロシアの4者は、和平の真の当事者となるためにハマスが以下の条件を受け入れなければならないことを表明した。イスラエルの生存権を認め、暴力を放棄し、過去の合意を順守することだ。

 さらに持続的な停戦に求められることは明白だ。ハマスはロケット攻撃をやめなければならない。イスラエルはガザからの撤退を完了する。

 米国とそのパートナーは、ハマスが再武装できないよう、信頼できる(武器)密輸阻止体制の確立を支援する。昨日、私は(エジプトの)ムバラク大統領と会談し、停戦達成にエジプトが重要な役割を果たしたことに、謝意を表明した。さらにわれわれは、エジプト国境からの密輸を阻止する決意を前提とし、エジプトがより広範な和平への基盤をつくるため発揮するパートナーシップに期待する。

 今、罪のないイスラエル人に向けられたロケット攻撃は容認できないように、パレスチナ人の未来に希望がないことも容認できない。パレスチナとイスラエルにおける人命損失や、ガザにおける大きな苦難、人道面での問題を深く憂慮する。当面の食料やきれいな飲料水、基本的な医療ケアを必要とし、息が詰まるような貧困にあまりにも長い間直面してきたパレスチナの市民に、われわれは深く同情する。

 今、われわれは、平和を求める人々に手を差し伸べなければならない。持続的な停戦の一部として、国際社会とパレスチナ当局が参加する適切な監視体制の下、ガザの境界検問所を開放して支援と商業物資が流入するようにしなければならない。救援は、それを頼みとする罪のないパレスチナ人に届かなければならない。

 米国は、短期的人道支援と、パレスチナ経済の長期的再建を支援する国々による国際会議を全面的に支持する。こうした支援はパレスチナ自治政府の承認下で行われるだろう。

 恒久的な平和を築くのには、長い停戦だけではない、さらなる努力が必要だ。だからこそ、平和かつ安全に2つの国が隣り合って共存できるよう積極的な働き掛けを続けるつもりだ。ミッチェル氏も同様の努力を続ける。そして、イスラエルが、国際社会で同国を承認するアラブ諸国と広範囲な平和に達するための努力を続けるだろう。

 アラブ和平案は、こうした努力を進展させるための建設的な内容を伴っている。いまこそ、アラブ諸国が和平案の約束に従い行動するときだ。パレスチナ自治政府のアッバス議長とファイヤド首相の指導下に政権を支え、イスラエルとの関係正常化に向けて歩み出し、われわれを脅かす過激主義に立ち向かうのだ。

 パレスチナの治安部隊を訓練し、イスラエルとの関係を維持するヨルダンが果たしている建設的役割は、見本となるものだ。

 われわれはこの地域のあらゆる国に、テロ組織への支援を止めるべきだと明確に示さなくてはならない。

 世界の安全に対するもう1つの緊急の脅威は、悪化するアフガニスタンとパキスタンの状況である。それはまさに、テロと過激主義に対するわれわれの長い戦いの最前線だ。中東と同様に、問題を個別に処理することはできない。国境近くにあるアルカイダやタリバンの拠点と対峙(たいじ)することを避けては、答えは得られない。アフガニスタンとパキスタンの人々に幅広い機会をつくりだすことなしに、平和は長続きしない。

 これは、緊急に取り組まなくてはならない国際的課題だ。だからこそ、クリントン長官とわたしはアフガニスタン・パキスタン担当特使にリチャード・ホルブルック大使を任命した。ホルブルック氏は、同世代において最も才能に恵まれた外交官の1人だ。数十年間、さまざまな国で働き、卓越した国連大使であった。同盟国とのきずなを強め、厳しい交渉に取り組み、デイトン合意の生みの親として得難い平和を成し遂げることに貢献した。この重要な地域において、戦略的かつ持続可能な政策を実行する上で大きな役割を果たすだろう。

 現状は危機的であり、前進には時間がかかるのだということを、米国民と国際社会は理解しなくてはならない。アフガニスタンでは暴力が劇的に増殖している。死をもたらす反政府活動が(人々に)深く根を張っている。アヘン取引が世界で最も手広く行われている。アフガン政府は基本的な行政サービスも行うことができないでいる。

 アルカイダとタリバンは、険しいパキスタン国境に広がる部族地域に築いた拠点から攻撃を繰り返している。そして、9・11(2001年9月11日の米中枢同時テロ)以来、われわれの国土が攻撃されることはなかったが、アルカイダのテロリストたちは逃亡を続け、陰謀をめぐらしている。

 前進するためには、われわれは安全保障に役立つ達成可能な目標に優先順序を設けなくてはならない。この政権はアフガンとパキスタンに焦点を移し、本腰を入れて問題に取り組む覚悟だ。そのために政策の見直しを進めている。

 われわれは各国政府とのより強いパートナーシップの構築、北大西洋条約機構(NATO)諸国との協力態勢の維持に努める。アフガン、パキスタン両国と深いきずなを築き、テロや過激派と闘う包括的戦略を模索する。

 われわれは、こうした目標を達成する戦略的方向を示す。そして軍人、民間人を問わずアフガンで活動を続ける米国人を支援すると誓う。今回の任命は、試練に立ち向かい、未来に安全と機会をもたらそうと、行動力と決意を持って臨むチームをさらに強化するものだ。

 行く先には困難が待ち受けている。われわれは、自らに多くを課し、同時に、新たなパートナーシップと協力関係を模索して世界中の友人たちにより多くを求めることになるだろう。なぜなら、21世紀における安全とは、皆で成し遂げるものだからだ。しかし、先頭に立つという米国の覚悟に揺るぎはない。もはや漂流も遅れも許されない。破滅を欲している者たちに屈することもできない。

 米国のリーダーシップの新しい時代が来た。厳しい仕事は始まったばかりだ。あなたたちは、この重要な責務を果たす最前線に立つのだ。クリントン国務長官のリーダーシップ、リチャード・ホルブルックやジョージ・ミッチェルのような素晴らしい特使たち、きょうここにいる素晴らしいチームの補佐を得て、われわれが目標を達成し、米国の安全を守り、わが国だけでなく世界中の国々のためにより良い時代を築くことができると信じている。

 みなさん、ありがとう。(拍手)

 


オバマ米大統領就任演説(全文)

2009年01月22日 | ドラミング

今日のニセコは、穏やかな快晴です。
今朝の気温は、この冬一番の-14℃でした。

米国オバマ大領領の就任演説をYOMIURIONLINEから転載します。中見出しも同紙によります。

 ◆危機への決意◆

 市民の皆さん。私は今日、我々の前にある職務に対して厳粛な気持ちを抱き、あなた方から与えられた信頼に感謝し、我々の祖先が支払った犠牲を心に留めながら、ここに立っている。私は、ブッシュ大統領の我が国への奉仕、並びに大統領がこの政権移行期間に示した寛容さと協力に感謝する。

 これで44人の米国人が大統領就任宣誓を行った。宣誓は、繁栄の高まりのときや、平和で静かなときに行われたこともあった。しかし、しばしば、宣誓は、暗雲が垂れこめるときや荒れ狂う嵐のときに行われた。こうした時、米国は、指導者たちの技量や理念だけに頼ることなく、我々人民が祖先の理想に忠実で、建国の文言に正直であることによって、乗り切ってきた。

 ずっとそうやってきた。この世代の米国人も同様にしなければならない。

 我々が危機の最中にいることは、現在では明白だ。我々の国家は、暴力と憎悪の広範なネットワークを相手に戦争を行っている。我々の経済は、ひどく弱体化している。一部の者の強欲と無責任の結果であるだけでなく、厳しい決断をすることなく、国家を新しい時代に適合させそこなった我々全員の失敗の結果である。家は失われ、職はなくなり、ビジネスは台無しになった。我々の健康保険制度は金がかかり過ぎる。荒廃している我々の学校はあまりにも多い。さらに、我々のエネルギーの消費のしかたが、我々の敵を強化し、我々の惑星を脅かしているという証拠が、日増しに増え続けている。

 これらは、データと統計に基づく危機の指標だ。予測は困難だが、間違いなく深刻なのは、我々の国土に広がる自信の喪失や、米国の凋落(ちょうらく)は避けがたく、次の世代はうなだれて過ごさなければならないというぬぐいがたい恐怖だ。

 今日、私はあなた方に告げる。我々が直面している試練は本物だ。試練は深刻で数多い。試練は容易に、または、短い時間で対処できるものではない。しかし、米国よ、わかってほしい。これらの試練は対処されるだろう。

 この日、我々は、恐怖ではなく希望を、紛争と不一致ではなく目標の共有を選んだため、ここに集った。

 この日、我々は、我々の政治をあまりにも長い間阻害してきた、ささいな不満や偽りの約束、非難や言い古された定説を終わらせることを宣言する。

 ◆国家の偉大さ◆

 我々の国はまだ若いが、聖書の言葉には、子どもじみたことをやめるときが来たとある。我々の忍耐に富んだ精神を再確認し、より良い歴史を選び、貴重な才能と、世代から世代へと引き継がれてきた尊い考えを発展させるときが来た。尊い考えというのは、すべての人は平等で、自由で、あらゆる手段により幸福を追求する機会を与えられるという、神からの約束のことである。

 我々の国の偉大さを再確認するとき、我々は、偉大さが決して与えられたものではないことに気づく。それは勝ち取らなければならないのだ。我々の旅は、近道でも安易なものでもなかった。我々の旅には、仕事より娯楽を好み、富と名声の喜びだけを望むような、臆病者のための道筋はなかった。むしろ、我々の旅は、危機に立ち向かう者、仕事をする者、創造をしようとする者のためのものだ。それらの人々は、著名な人たちというより、しばしば、無名の働く男女で、長い、でこぼこした道を繁栄と自由を目指し、我々を導いてきた人々だ。

 我々のために、彼らは、わずかな財産をまとめ、新たな生活を求めて大洋を旅した。

 我々のために、彼らは、劣悪な条件でせっせと働き、西部に移住し、むち打ちに耐えながら、硬い大地を耕した。

 我々のために、彼らは、(独立戦争の戦場)コンコードや(南北戦争の)ゲティスバーグ、(第2次大戦の)ノルマンディーや(ベトナム戦争の)ケサンのような場所で戦い、死んだ。

 しばしば、これらの男女は、我々がより良い生活を送れるように、手の皮がすりむけるまで、もがき、犠牲になり、働いた。彼らは米国を、個人の野望を合わせたものより大きく、生まれや富や党派のすべての違いを超えるほど、偉大であると考えていた。

 ◆米国再生◆

 これが今日、我々が続けている旅なのだ。米国は依然として地球上で最も繁栄し、力強い国だ。我々の労働者は今回危機が始まった時と同様、生産性は高い。我々は相変わらず創意に富み、我々が生み出す財やサービスは先週や先月、昨年と同様、必要とされている。能力も衰えていない。しかし、同じ手を用いるだけで、狭い利益にこだわり、面倒な決定を先送りする、そんな時代は確実に終わった。今日から我々は立ち上がり、ほこりを払って、米国再生の仕事に着手しなければならない。

 なすべき仕事は至る所にある。米国経済は、大胆かつ迅速な行動を求めている。そして我々は新規の雇用創出のみならず、新たな成長の礎を整えることができる。道路や橋を造り、電線やデジタル通信網を敷き、商業を支え、我々を一つに結び付ける。科学を本来あるべき地位に戻し、医療の質を引き上げながら、そのコストは減らす。太陽、風や土壌を利用して自動車を動かし、工場を動かす。新時代の要請に合うよう学校や単科大、大学を変えていく。我々はすべてのことを成し遂げられるし、行っていく。

 我々の野望の大きさについて疑念を抱く人がいる。我々のシステムは多くの大きな計画に耐えられないと指摘する人もいる。だが、彼らは忘れている。彼らはこの国が何を成し遂げたかを忘れている。想像力が共通の目的と出合った時、必要が勇気と結びついた時、自由な男女が何を達成できるかを忘れているのだ。

 皮肉屋が理解できないのは、彼らがよって立つ地面が動いたということだ。長い間、我々を疲れさせてきた陳腐な政治議論はもはや通用しない。我々が今日問うべきなのは、政府の大小ではなく、政府が機能するか否かだ。家族が人並みの給与の仕事を見つけたり、負担できる(医療)保険や、立派な退職資金を手に入れることの助けに、政府がなるかどうかだ。答えがイエスの場合は、その施策を前進させる。ノーならば終わりとなる。公的資金を管理する者は適切に支出し、悪弊を改め、誰からも見えるように業務を行う。それによって初めて、国民と政府の間に不可欠な信頼を回復できる。

 問うべきなのは、市場の良しあしでもない。富を作り自由を広げる市場の力に比肩するものはない。だが、今回の(経済)危機は、監視がなければ、市場は統制を失い、豊かな者ばかりを優遇する国の繁栄が長続きしないことを我々に気づかせた。我々の経済の成功はいつも、単に国内総生産(GDP)の大きさだけでなく、我々の繁栄が広がる範囲や、機会を求めるすべての人に広げる能力によるものだった。慈善としてではなく、公共の利益に通じる最も確実な道としてだ。

 ◆我々の安全とは◆

 我々の共通の防衛については、安全と理想とを天秤(てんびん)にかけるという誤った選択を拒否する。我々の想像を超える危機に直面した建国の父たちは、法の支配と国民の権利を保障する憲章を起案した。憲章は、何世代もの犠牲によって拡充された。これらの理想は、今日でも世界を照らしており、我々は都合次第で手放したりはしない。今日(の就任式を)見ている他国の国民や政府ら。巨大都市から私の父が生まれた小さな村まで。米国が平和と尊厳の未来を求めるすべての国々、すべての男女と子供の友人であり、我々がもう一度、指導力を発揮していく用意があると、知ってほしい。

 前の世代は、ファシズムや共産主義と、ミサイルや戦車だけではなく、強固な同盟と強い信念を持って対峙(たいじ)したことを思い出してほしい。彼らは、我々の力だけでは我々を守れず、好きに振る舞う資格を得たのではないことも理解していた。代わりに、慎重に使うことで力が増すことを理解していた。我々の安全は、大義の正当性や模範を示す力、謙虚さ、自制心からいずるものだ。

 我々は、この遺産の番人だ。こうした原則にもう一度導かれることで、我々は、一層の努力や、国家間の一層の協力や理解が求められる新たな脅威に立ち向かうことができる。我々は、責任ある形で、イラクをイラク国民に委ね、苦労しながらもアフガニスタンに平和を築き始めるだろう。古くからの友やかつての敵とともに、核の脅威を減らし、地球温暖化を食い止めるためたゆまず努力するだろう。

 ◆変わる世界◆

 我々は、我々の生き方について謝らないし、それを守ることを躊躇(ちゅうちょ)しない。テロを引き起こし、罪のない人を殺すことで目的の推進を図る人々よ、我々は言う。我々の精神は今、より強固であり、壊すことはできないと。あなたたちは、我々より長く生きることはできない。我々は、あなたたちを打ち破るだろう。

 我々のつぎはぎ細工の遺産は強みであって、弱みではない。我々は、キリスト教徒やイスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、それに神を信じない人による国家だ。我々は、あらゆる言語や文化で形作られ、地球上のあらゆる場所から集まっている。

 我々には、南北戦争や人種隔離の苦い経験があり、その暗い時代から出てきて、より強く、より団結するようになった。我々は信じている。古くからある憎しみはいつかなくなり、民族を隔てる線も消えると。世界が小さくなる中で、我々に共通の人間愛が現れることになると。米国が、新しい平和の時代に先駆ける役割を果たさねばならないと。

 イスラム世界よ、我々は、相互理解と尊敬に基づき、新しく進む道を模索する。紛争の種をまいたり、自分たちの社会の問題を西洋のせいにしたりする世界各地の指導者よ、国民は、あなた方が何を築けるかで判断するのであって、何を破壊するかで判断するのではないことを知るべきだ。腐敗や欺き、さらには異議を唱える人を黙らせることで、権力にしがみつく者よ、あなたたちは、歴史の誤った側にいる。握ったこぶしを開くなら、我々は手をさしのべよう。

 貧しい国の人々よ、我々は誓う。農場に作物が実り、きれいな水が流れ、飢えた体に栄養を与え、乾いた心を満たすため、ともに取り組むことを。我々と同じように比較的満たされた国々よ、我々が国境の向こう側の苦悩にもはや無関心でなく、影響を考慮せず世界の資源を消費することもないと言おう。世界は変わった。だから、我々も世界と共に変わらなければならない。

 我々の前に広がる道について考える時、今この瞬間にもはるかかなたの砂漠や遠くの山々をパトロールしている勇敢な米国人たちに、心からの感謝をもって思いをはせる。彼らは、アーリントン(国立墓地)に横たわる亡くなった英雄たちが、時代を超えてささやくように、我々に語りかけてくる。我々は彼らを誇りに思う。それは、彼らが我々の自由を守ってくれているからだけではなく、奉仕の精神、つまり、自分自身よりも大きい何かの中に進んで意味を見いだす意思を体現しているからだ。これこそが時代を決するこの時に、我々すべてが持たねばならない精神だ。

 ◆新しい責任の時代◆

 政府はやれること、やらなければならないことをやるが、詰まるところ、わが国がよって立つのは国民の信念と決意である。堤防が決壊した時、見知らぬ人をも助ける親切心であり、暗黒の時に友人が職を失うのを傍観するより、自らの労働時間を削る無私の心である。我々の運命を最終的に決めるのは、煙に覆われた階段を突進する消防士の勇気であり、子どもを育てる親の意思である。

 我々の挑戦は新しいものかもしれない。我々がそれに立ち向かう手段も新しいものかもしれない。しかし、我々の成功は、誠実や勤勉、勇気、公正、寛容、好奇心、忠誠心、愛国心といった価値観にかかっている。これらは、昔から変わらぬ真実である。これらは、歴史を通じて進歩を遂げるため静かな力となってきた。必要とされるのは、そうした真実に立ち返ることだ。

 いま我々に求められているのは、新しい責任の時代に入ることだ。米国民一人ひとりが自分自身と自国、世界に義務を負うことを認識し、その義務をいやいや引き受けるのではなく喜んで機会をとらえることだ。困難な任務に我々のすべてを与えることこそ、心を満たし、我々の個性を示すのだ。

 これが市民の代償であり約束なのだ。これが我々の自信の源なのだ。神が、我々に定かではない運命を形作るよう命じているのだ。

 これが我々の自由と信条の意味なのだ。なぜ、あらゆる人種や信条の男女、子どもたちが、この立派なモールの至る所で祝典のため集えるのか。そして、なぜ60年足らず前に地元の食堂で食事することを許されなかったかもしれない父親を持つ男が今、最も神聖な宣誓を行うためにあなた方の前に立つことができるのか。

 ◆自由を未来へ◆

 だから、我々が誰なのか、どれほど長い旅をしてきたのか、その記憶とともにこの日を祝おう。米国誕生の年、酷寒の中で、愛国者の小さな一団は、氷が覆う川の岸辺で、消えそうなたき火の傍らに身を寄せ合った。首都は見捨てられた。敵は進軍してきた。雪は血で染まった。我々の革命の結末が最も疑わしくなった時、我が国の祖は、この言葉を人々に読むよう命じた。

 「酷寒の中、希望と美徳しか生き残ることができない時、共通の脅威に気づいた町も田舎もそれに立ち向かうために進み出た、と未来の世界で語られるようにしよう」

 アメリカよ。我々自身が共通の脅威に直面している時に、我々自身の苦難の冬に、時を超えたこれらの言葉を思い出そう。希望と美徳を抱き、このいてつく流れに再び立ち向かい、どんな嵐が訪れようとも耐えよう。

 そして、我々の子孫に言い伝えられるようにしようではないか。我々が試された時、旅を終わらせることを拒み、後戻りすることも、くじけることもなかった、と。そして、地平線と神の慈しみをしっかりと見つめ、自由という偉大な贈り物を運び、未来の世代に無事に届けた、と。

 ありがとう。神の祝福が皆さんにあらんことを。そして、神の祝福がアメリカ合衆国にあらんことを。

 


オバマ政権の誕生を喜ぶ!

2009年01月21日 | ドラミング

今日のニセコは、時々粉雪の舞うお天気です。
昨日より少し気温も下がって、肌寒い朝を迎えました。

世界中の期待を担って米国オバマ政権が誕生しました。

彼の持つ若さ、弁舌力、誠実さ、人を見る目の温かさ等々、富裕層の代表者であったブッシュ氏と対極にある姿勢で、直面する課題に真摯に取り組んで欲しい。そして地に落ちた米国の威信を取り戻して欲しいと思います。

イラク・アフガン戦争の終結、パレスチナ問題の平和的解決、金融危機・世界不況の克服と格差の是正、地球温暖化防止への積極的参加等々、どの課題ひとつとっても容易ではありませんが、一国覇権主義でなく、世界のさまざまな国々との相互協力と米国民の一致した協力があれば、きっと成し遂げられるに相違ありません。

今日からは、あの暗いブッシュ氏の顔を見なくて済むと思うと、それだけでも明るい気持ちになります。

ところで、昨日の参院予算委員会。民主党の石井一氏が、米国オバマ氏の支持率が80%以上であるのに対し、わが日本国の麻生総理のそれが16~7%である違いはどこにあるのかと質問していましたが、この落差の大きさに戸惑うばかりです。写真は、MSNから拝借しました。

(注)オバマ氏の記事は、こちら(1234)にもあります。

 


目線をどこに置いているのか?

2009年01月02日 | ドラミング

今日のニセコは、湿った雪の舞うはっきりしないお天気です。気温は高く、何でも12月中旬頃の暖かさとか。変な天気が続いています。以下は、拙宅周囲の風景です。

さて、元日に配達された新聞の正月特集(別刷り)を見て、今の新聞は、一体どこを見ているのか、まったくわからないという思いを強くしました。と言うより、その「事大主義」の強さに辟易した次第です。

拙宅では、朝日新聞を購読していますが、正月特集は、次の5点から成っています。

・ スポーツ~届け、世界の頂点へ(イチローなど)
・ 京都御所~御所、皇居などのあせぬ輝き
・ 学ぶ楽しさ~夏目漱石ら文豪のノート作成術
・ 北ブランド~北の売れっ子(商品)大集合
・ TV・ラジオ~新年テレビ・ラジオガイド

このリストをご覧になって、ある程度内容をご想像いただけると思うのですが、そこにあるのは、極端な事大主義で、すでに世界や日本で実績を上げている人々や事物を取り上げ、その”すごさ”をアピールしているに過ぎません。これでは、小生ら読者は、「ああそうですか、たいしなもんですね」と感心はすれど、記事を読む気力すらわきません。

要は、世界と日本の現実を正確に、しかも前向きに伝えようとするジャーナリズムの原点に根ざした特集になっていないのです。つまり、その視点は上を向いたきりで、現実を見つめるとか庶民の目線がないのです。

これでは、パレスチナで何が起ころうと、派遣社員が名だたる大企業からどれだけ大量に首になろうが、マスコミは見てみぬ振りをしていると言われても仕方ないでしょう。これらは、本紙の中で、申し訳程度に取り上げられているに過ぎません。

また、これらの別刷りは、基本は8頁建てですが、テレビ・ラジオガイドだけは、30頁もあって、新聞と言う活字メディアが、こんな大きなヴォリウムの特集を組んで、テレビ・ラジオに擦り寄って行って良いものでしょうか。これでは、ますます活字メディアの地盤沈下につながるのではないでしょうか。

正月早々の繰言で恐縮ですが、ちょっと気になりました。他の全国紙はどうだったのでしょうか。

 


結局、やらせだったのですね

2008年11月11日 | ドラミング

日中戦争などの歴史認識について、政府の方針に反する見解を発表して更迭された田母神前航空幕僚長の論文ですが、その後の報道や各種のブログなどを総合すると、やはり、小生が指摘した”確信犯的やらせ”の色彩が濃いものであることがはっきりしてきました。

先ず、この論文を募集したホテル・マンション経営「アパグループ」の元谷外志雄代表という人物ですが、地元小松市の「小松基地金沢友の会」の会長で、田母神氏とは、同氏が第6航空団司令として小松基地に勤務していた1998年以来、親交があると言われています。

自らも「報道されない近現代史」という著書を出版して、いわゆる「自虐史観の克服」を説き、今回の懸賞論文の募集も、この出版記念事業として企画されたといいます。

元谷氏がまた、「戦後レジームからの脱却」や「憲法改正」を公約した参議選に大敗した安倍晋三元首相の後援会「安晋会」の副会長をつとめていることを想起すれば、田母神氏がこの首相の元で、航空幕僚長に登用されたのも肯けます。

加えて、この懸賞論文の審査委員は、優性思想をかかげ右翼的言辞をもって知られる委員長の渡部昇一・上智大名誉教授に加え、花岡信昭・産経新聞客員編集委員、小松崎和夫・報知新聞社社長、中山泰秀衆院議員らですが、この顔ぶれを見れば、入賞論文の中身がわかろうというものです。

一方、この論文募集には、自衛隊小松基地などに勤務する94名もの現職自衛官が応募していたようですが、小松基地では、この論文募集と時期を同じくして、同一テーマで論文を作成するよう幹部隊員に対して指示が出され、提出された論文を一括、募集事務局へ届けていたといいますから驚きです。

また、田母神氏は、2002~04年統合幕僚学校長を務めており、「南京大虐殺はなかった」などと隊内誌に発表していたと報道されています。このような背景を持つ人物のもとで、自衛隊の幹部がどのような教育を受けていたか不安が残ります。

従って、田母神氏や自衛隊の関連する幹部を国会に呼び、今回の事態の事実とその原因について徹底した追及を行う必要があります。また、今後の幹部自衛官の教育をどうするのか、また、統合幕僚長と陸海空の各幕僚長を同意人事とする自衛隊法の改正等、再発防止策の策定が必要でしょう。

 


オバマ氏の勝利演説(全文)

2008年11月06日 | ドラミング

今日のニセコは、暖かい穏やかにお天気です。
午前中、車のタイヤ交換をしました。これで、いつ大雪が来ても大丈夫で
す。

米国の第44代大統領に選出されたオバマ氏は、その勝利演説で、今回の
大統領選挙の持つ意義や、今後の課題などについて下記のように訴えま
した。以下、ご紹介します。(いつになったら、日本の政治家もこのように
格調の高い演説ができるようになるのでしょうか)



「もし、米国ではあらゆることが可能であるということを疑ったり、建国
者の夢がまだ生きているのか疑問に思っていたり、米国の民主主義の
力を疑ったりする人がいたら、こう言いたい。今夜が答えだと。

 この答えは、(投票するために)全国の学校や教会の周りに行列を作
ったこれまでにない数の人々、何時間も待ち続けた人々によって示され
た。これらは多くの人たちにとって初めてのことだった。今回は違うは
ずで、自分たちの声が変革になりうると信じていたからだ。

 若者と高齢者、富める者と貧しい者、民主党員と共和党員、黒人と白
人、ヒスパニック、アジア系、先住民、同性愛者とそうでない人、障害
を持つ人とそうでない人が出した答えだ。我々は決して単なる個人の寄
せ集めだったり、単なる青(民主党)の州や赤(共和党)の州の寄せ集
めだったりではないというメッセージを世界に伝えた米国人の答えだ。
私たちは今も、これからもずっとアメリカ合衆国だ。

 米国人が達成できることについて、悲観的でおびえていて、懐疑的で
あるようにとあまりに長い間、あまりに多くの人から言い聞かされてき
た人々に対して、歴史の弧に手をかけ、より良い明日の希望に向かって
再びそれを動かすように導いた答えだ。

 長い時間がかかった。でも今夜、この決定的な瞬間、この選挙の日に
私たちが成し遂げたことにより、米国に変革が到来したのだ。

 先ほど、マケイン上院議員からとても丁重な電話を頂いた。

 マケイン議員はこの選挙戦で、長い期間懸命に戦った。そして彼は、
愛する国のため、もっと長い間、もっと懸命に戦ってきた。彼は米国の
ために、私たちの大半が想像もつかないほどの犠牲を耐え忍んできた。
この勇敢で私心のない指導者の献身のおかげで、私たちはより良い暮ら
しを享受している。

 私は、マケイン氏とペイリン知事が達成したことについて、彼らを祝
福する。これから、この国の希望を新たにするため、彼らと共に働くこ
とを楽しみにしている。

 この選挙戦での私の相棒に感謝したい。心のこもった演説を行い、ス
クラントンの街で共に育ち、デラウェアへ帰宅する列車に乗り合わせた、
そんな普通の人々のために発言してきた男、合衆国副大統領に選ばれた
ジョー・バイデンだ。

 さらに私は、過去16年にわたる最良の親友であり、家族の要、生涯
愛する人、そして次のファーストレディーとなる(妻の)ミシェル・オ
バマの揺るぎない支持なくして、今夜ここに立つことはできなかった。
(娘の)サーシャとマリア、君たちが想像する以上に私は君たちのこと
を愛している。新しい子犬と一緒にホワイトハウスに行こう。

 もうこの世にいないが、(母方の)祖母が、私をここまで育ててくれ
た家族と共に私のことを見守ってくれていることを知っている。亡き家
族がここにいないのをとても寂しく思う。彼らへの恩義は計り知れない
ものだ。

 姉妹のマヤとアルマ、他のすべての兄弟姉妹たち、君たちの応援にと
ても感謝している。

 選挙事務局長のデービッド・プルフ、君はこの選挙戦の隠れた英雄だ。
おそらく米国の歴史上で最高の政治運動の態勢を築いてくれた。

 最高戦略責任者のデービッド・アクセルロッド、君はあらゆる局面で
私と共にいてくれた。

 政治史で最高の選挙チームが勝利を可能にした。このために君たちが
払った犠牲に対して永遠に感謝する。

 しかし、何にもまして、この勝利が本当は誰のものかを私は決して忘
れない。それは(米国民である)あなたたち、あなたたちのものなのだ。

 私は大統領の最有力候補であったことがなかった。十分な資金や多く
の推薦と共に始めたわけではない。最初は資金も支持者も少なかった。
我々の選挙戦はワシントンの大会場ではなく、デモインの裏庭やコンコ
ードの居間、チャールストンの玄関先で始まった。少ない貯金の中から
5ドル、10ドル、20ドルを出してくれた、働く人々のおかげだ。

 力を増したのは、無気力な世代という神話をはねのけた若者たちが、
家族から離れ、少ない報酬と睡眠時間の仕事をしてくれたからだ。寒さ
にも暑さにも負けず、全くの赤の他人の家をノックして回ってくれた、
そう若くない人々からも力を得た。ボランティアとして集まって組織を
作り、(リンカーン米大統領の言った)「人民の人民による人民のため
の政治」は200年以上たっても滅びていないと証明した何百万人もの
米国人から力を得た。

 これは、あなたたちの勝利だ。

 そして、あなたたちがこの選挙に勝つためだけに行動したのではない
ことを私は知っている。私のために行動したのでないことも。

 あなたたちは、これから待ち受けている膨大な課題を理解しているか
ら行動したのだ。今夜は祝うにしても、明日から向き合う難題は我々の
時代で最大級だ。(イラクとアフガニスタンの)二つの戦争、危機に直
面した地球、今世紀最悪の金融危機・・・。

 我々は今夜、ここに集っていても、イラクの砂漠やアフガニスタンの
山地で起床し、我々のために命の危険を冒している勇敢な米国人がいる
ことを知っている。

 子供たちが眠りについた後も、多くの父親や母親が、住宅ローンや医
療費、子供たちの大学の費用をどうやって工面したらいいか思い悩ませ
ている。

 新たなエネルギーの開発、雇用の創出、学校の建設、脅威への対処、
修復すべき同盟関係、といった課題が待っている。

 道のりは長く、険しい。1年、あるいは(大統領任期の)1期(4年)
の間には達成できないかも知れない。だが、私は今夜ほどそこに到達で
きるという希望を持てたことはない。

 私は約束する。我々が、国民としてそこに到達することを。

 出だしのつまずきや失敗はあるだろう。大統領としての私の決定や政
策のすべてに必ずしも賛成しない人もたくさんいるだろう。政府があら
ゆる問題を解決することはできないことも我々は知っている。

 だが、我々が直面する困難について私は常にあなたたちに正直にい
る。特に意見が異なるときほど、あなたたちの声を聞く。そして何よりも、
あなたたちにこの国の再建に加わってもらいたい。221年間米国がや
ってきた、ブロックやれんがを一つひとつ、硬くなった手で積み上げる
という唯一のやり方で。

 21カ月前の真冬に始まったことは、この秋の夜には終わらない。

 この勝利だけが、我々が追い求める変革ではない。これは変革を行う
ためのチャンスに過ぎない。もし以前の状況に戻ってしまったら、変化
は起きない。

 あなたたち抜きではできない。新しい奉仕、犠牲の精神抜きではでき
ない。

 仕事に取りかかり、より懸命に働き、そして互いに助け合えるよう、
新しい愛国の精神、責任感の精神を呼び起こそう。

 今回の金融危機が何かを教えてくれたとしたら、町の大通りが疲弊し
ているときにウォール街だけが栄えていることはできないということだ
と思いだそう。

 この国では、我々は一つの国家、つまり一つの国民として栄えたり衰
退したりする。長い間この国の政治を害してきた狭量で未熟な党派主義
に戻ろうという誘惑に耐えよう。

 初めて共和党からホワイトハウスに乗り込んだのは、この州の出身者
だった。共和党は自立と個人の自由、国の団結という価値観に基づいて
設立された。これらの価値観は我々も共有している。

 今夜、民主党は大きな勝利を得た。だがそれは、一定の謙虚さと、
我々の進歩を滞らせてきた分断状態を正常化しようという決意を伴うも
のだ。

 リンカーンは、我々以上に分裂していた国民に対し、「我々は敵では
なく友人なのだ」と語った。感情は高まっているかもしれないが、好意
のきずなを断ってはいけない。

 私を支持してくれなかった人たち、あなたたちの票は得られなかった
が、あなたたちの声は聞こえている。あなた方の助けが必要だ。私はあ
なたたちの大統領にもなるのだ。

 今夜、米国の外で見守っている人たち、議会や王宮のみならず、忘れ
られた世界の片隅で、ラジオの周りに集まっている、あらゆる人々に対
して言いたい。(今日成し遂げられた)米国の物語は特異だが、我々の
行き先は共有できる。米国の新しい指導力の夜明けは近づいている、と。

 この世界を破壊しようとする者たち、我々はおまえたちを打ち負かす。
そして、平和と安全を求める人々、我々はあなたがたを支援する。

 米国の(指導力の)灯台が今も明るく輝いているのか疑問に思ってい
る人々よ。今夜、我が国の本当の強さが、武力や富の力ではなく、民主
主義や自由、機会や希望といった絶えざる理想の力に由来することを改
めて証明した。

 これが米国の真の才能だ。米国は変化できる。我々の団結は完遂でき
る。これまで成し遂げたことから、明日達成できること、そしてしなけ
ればならないことへの希望が生まれる。

 今回の選挙で初めて起きたこと、そして多くの話が、何世代にもわた
って語り継がれるだろう。しかし、今夜私の心に浮かぶのは、アトラン
タで1票を投じた女性のことだ。他の数百万人の有権者と同様に、行列
に並んで投票した。ただひとつ他の人たちと違っていたのは、彼女、ア
ン・ニクソン・クーパーさんが106歳だということだ。

 彼女は奴隷制が終わってわずか1世代後に生まれた。まだ道には車が
なく、空には飛行機が飛んでいなかった時代だ。彼女のような人が、女
性であるということと、肌の色という2つの理由で投票ができなかった
時代だ。

 今夜、この1世紀に米国で彼女が見たすべてのことに思いをはせたい。
傷心と希望、努力と進歩、「不可能だ」と言われ続けたことに対して、
「我々はできる」という米国の信条を進めようとした人々。

 女性が声を出せず、希望が踏みにじられた時代もあったが、女性が立
ち上がって発言し、投票を求める姿を、彼女は目の当たりにした。

 (30年代に中西部で起きた)土埃の嵐の絶望や全土の恐慌の時にも、
この国がニューディール政策や新たな雇用、そして新たな共通目標の意
識によって、恐怖そのものを克服するのを、彼女は見た。我々はできる
のだ。

 我々の港が爆撃され、独裁体制が世界を脅かしたが、彼女は、一つの
世代が立ち上がり、民主主義が守られるのを目撃した。我々はできるの
だ。

 (黒人解放運動のきっかけとなったアラバマ州)モンゴメリーの通学
バスのボイコットやセルマのデモ、「我々は勝利する」というキング牧
師の言葉も聞いた。我々はできるのだ。

 人類が月に到達し、ベルリンの壁が崩壊し、世界は科学と想像力でつ
ながった。

 そして今年、この選挙で彼女は指で画面に触れて一票を投じた。10
6年の生涯で良いときも暗い時代も経験し、彼女は米国がいかに変化す
るかを知っているからだ。我々はできるのだ。

 米国よ、我々はここまで来た。いろんなものを見てきた。だが、やる
べきことはまだまだある。だから今夜、自らに問おう。我々の子どもた
ちは次の世紀を見られるのか。私の娘たちがアン・ニクソン・クーパー
のように長生きできたら、どんな変化を見るのか。我々はどんな進歩を
遂げているのか。

 これらの問いに我々が答える好機だ。今は、我々の時代なのだ。

 人々に仕事を戻し、子どもたちに機会の扉を開こう。繁栄を再建し
、平和の大義を推進しよう。アメリカン・ドリームを取り戻し、我々
は一つであるという根本的真実を再確認しよう。希望を持つことは息
するくらい当たり前だ。皮肉や懐疑心に出会ったり、「できやしない」
という人に出会ったりしたら、米国民の精神を要約する不朽の信条で
応えよう。「我々はできる」

(注)写真及び、テキストはアサヒコムから借用しました。