ボス ～名前はわからない～

現場からの帰路。

車のスモールランプが
点灯し始める頃、
ちょっとした渋滞。

「ん？」

前方約１５０ｍに
停車中の車。

左ウインカーが点滅。

左へ寄せるでもなく
車線中央に
停まったままだ。

「どした？故障？」

その車の後続車は
対向車のスキをみて
よけて行く。

抜いた車はみな
かっ飛んで過ぎ去る。

「へ？」

俺の軽トラとの距離が
徐々に徐々に縮まる。

ついに
停車中の車の後ろに。

リアガラス越しに
運転手１名だけが見えた。

首を傾けている。

「ん？」

対向車が途切れた。

その車の脇を
ゆっくりと
追い越しがてら
横目で運転手を見た。

「えっ！」



こんな顔の
オバサンだった


こんな顔ながらも
にこやかに
ケータイでお話中。

こんな渋滞の原因、
普通なら
“ムッ！”
とか
“カッ”
とか
“ッダ！”
とかくるのだが、
今回ばかりは
なんだか
懐かしさがこみあげ、

♪マジンゴー!マジンゴー!

と、
アタマの中で歌いながら
その車を後にした。



あのオバサンは
何処の誰なんだろう。

ちょっと
気になる夕暮れ。