岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

能郷苺「ノウゴウイチゴ」の花開く(その2)

2009-06-19 05:17:04 | Weblog
 (今日の写真は昨日同様、バラ科オランダイチゴ属の多年草「ノウゴウイチゴ(能郷苺)」だ。バラ科の植物は種類が多い。果実をつけるリンゴやナシもそうだし、秋に「ひっつき虫のような種」をつける「キンミズヒキ」もそうだ。至る所でバラ科の草花はその命を謳歌している。弘前公園に併設してある植物園でも、今多くの種類の「バラ」が最盛期を迎えているそうだ。
 オランダイチゴ属は日本では、この他に「シロバナノヘビイチゴ(別名:モリイチゴ)」の二種だけ自生する。
 北海道と本州の伯耆大山以北の日本海側に分布し、亜高山帯の湿った草地や林縁に生える。高さは5cmから10cmである。花の咲く時期は5~7月だ。花弁は6~7枚で、「シロバナノヘビイチゴ」との大きな違いはこれだ。「シロバナノヘビイチゴ」は花弁は5枚である。
 学名に「nipponica」という語があるところを見ると日本の特産種であるらしいが、その日本固有種が「オランダイチゴ属の多年草」というのが何とも面白い。きっとこれは「どいつんだ。おらんだ」という駄洒落の「オランダ(俺のものだ・我が国のものだ)」を地でいったものかも知れない。そう考えると何だかすごく楽しくなる。
 カタカナ書きで「ノウゴウイチゴ」と言われても、今一ぴんとこない。どこで区切ればいいのかが分からない。漢字書きにすると何とか分かるが、今度は「能郷」が分からない。
 これは地名だ。最初に発見された岐阜県能郷白山に由来した名前である。別名はノウゴイチゴである。
 「ノウゴウイチゴ」も「シロバナノヘビイチゴ」も草本である。私たちが「果物」として食べたり、ケーキの上に載せたりするイチゴは殆どが草本、つまり「草になる」イチゴだ。現代では大体「イチゴ」というとこれを指している。だが、昔は木本のイチゴ、つまり、「キイチゴ(木苺)」のことを専ら「イチゴ」と言っていたらしい。現にイチゴの仲間では圧倒的に「キイチゴ」類が多いのである。

 「ノウゴウイチゴ」唯一の「同属」の仲間、「シロバナノヘビイチゴ(白花の蛇苺)」は、北海道、本州、九州(屋久島)に分布して、低山帯~高山帯の日当たりのよい草原や礫地に生える高さ10㎝ほどになる多年草だ。
 葉は3小葉で平行脈がよく目立つ。花茎の先に径1.5~2.5㎝の白色の花を数個つけ、花弁は5枚だ。「ノウゴウイチゴ」は花弁が7~8枚あるので区別は簡単だ。花期は5~7月である。
 私は早くこの「簡単な区別」をして「同定」したいのであるが、岩木山ではまだ出会っていない。出会った人がいるならば教えてほしいものだ。
 「ヘビイチゴ」という名を持っているが、果実は赤く熟し、食べることが出来る。ノウゴウイチゴの果実も美味しい。汗をかき、疲れた時に、この実を頬ばると「甘さと酸味」が爽やかな気分となり、疲れをほぐしてくれるのだ。
 数年前に「子供会」の小学生グループと一緒に登山をした時、標高1200mを過ぎた辺りで「疲れと倦怠」から、「もうこれ以上は登りたくない」という意味のことを「ぶつぶつ」と言いだしたのだ。私は近くにこの「イチゴ畑」のあることを知っていたので、とにかくそこまでは何とか登らせたのである。
 小学生は正直だ。「甘い」「美味しい」を連発しながら、「採って」「食べて」元気になり、その後は「登りはじめ」のような元気さで登山を続けたのである。
 「ノウゴウイチゴ」の味は本当にいいのである。ところが、この「シロバナノヘビイチゴ」の味はその上をいくという。実際食べてみたいと思い、「岩木山中」を彷徨ってはいるのだが、「さもしい」根性の持ち主の眼には、なかなか見えないのである。別名を「モリイチゴ(森苺)」という。

 まあ、この2種類を「草本」のイチゴと言っていいのだ。ところが、「キイチゴ属」でありながら「クサイチゴ(草苺 )」という名前を持っているものがあるのだ。だからややっこしい。

 バラ科キイチゴ属の「クサイチゴ」は本州の岩手県以南に生育する落葉の小低木だ。高さは数10cmしかなく、葉も草質であり、見た目には「草本」である。
 気温の低い地域では落葉するが、暖地では常緑であり、背丈も低いことから、「クサイチゴ」の名が付いたようだ。
 生育地は明るい林縁や草地であり、もっとも一般的な「キイチゴ」であるといわれている。早春に地下茎から新しい茎を出し、純白のくっきりした5弁花を咲かせる。果実が稔るのは6月始めであり、あっさりとした甘みで食べることが出来る。
 また、よく田圃の畦や道路端、それに原野の縁で見かける「ナワシロイチゴ(苗代苺))」も、バラ科キイチゴ属の落葉小低木だ。
 茎は蔓状で短毛を密生し、棘がある。葉は3葉または5葉の複葉。初夏、淡紅色の五弁花を開き、6月、濃赤色の実を結ぶ。
 実は酸味があり、食用とすることが出来る。別名を「皐月(さつき)苺」という。名前の由来は「田植の頃に熟す」ということによる。

 「イチゴ」は英語名で「ストロベリー」だ。これは「イチゴ畑」にストロー(麦藁、むぎわら)を敷いたことによる。
「イチゴ」の「ゴ」は食べられる実という意味の接尾語だという。これは英語の「イチゴ」類に付く 「ベリー」 と同じだ。ラズベリー(Raspberry) やブラックベリー(Blackberry)などがそれだ。
 日本でも英語の「…」+ 「berry」と同じように、 苺は古名を「いちび」+「こ」といった。それが転訛して「いちご」となった。「日本書紀」には「いちびこ(伊致寐姑)」という記載があり、平安時代に入って「いちご」が現れる。
「いちご」は「いちびこ」の略かららしい。「いちび」は「一位樫(いちいがし)」のことで、「こ」は実を指し、「イチゴ」の実が「一位樫」の実に似ていることからのようだ。(明日に続く)
 
 NHK青森放送局報道カメラマンYさん、それから助手の方と岩木山の花の撮影のために赤倉登山道を登ることが延期になっていたが、今日実施することになった。過日、報告したい。

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