岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「ハルニレ」にあれこれと想う… /「アオジ」か「メボソムシクイ」か旅行者との会話

2010-05-09 05:05:51 | Weblog
 (今日の写真は、「ハルニレ」の枝に止まって囀っているスズメ目ホオジロ科の「アオジ(青鵐)」だ。
 5月6日に弘前公園内にある「植物園」に出かけた。サクラ祭りは一応前日で終了しているので、しかも、連休も終わったので「人の出」は少ないだろうと期待して出かけたのだが、それは空しいものだった。まだまだ「人の波」は続いていた。
 ところが、公園内の通路での喧噪に比べると、「植物園内の静かなこと」といったら…本当に静かで、ひときわ野鳥の囀りが、逆にうるさいほどだった。この写真は、その時に撮ったものだ。)

◇◇「ハルニレ」にあれこれと想う ◇◇

 大きな「ハルニレ(春楡:ニレ科ニレ属の落葉高木、「エルム」ともいう)」の木があり、その下に四阿(あずまや)とベンチがあった。
 この「ハルニレ」は実に立派な大木である。幹周りが3mはあろうかと思われた。植物園内の樹木は殆どが植樹されたものである。だが、ご存じの通り弘前公園は元来が「鷹ヶ岡」と呼ばれる里山である。だから、大木が自生していても別に不思議ではない。藩政時代は弘前城の一角として保護され、それ以降の戦前までは旧陸軍が管理し、戦後は弘前大学教育学部のあった場所で、一様にそこの自然林は「保護」されてきたのである。
 そのような「自然林」地に「手を入れて」人工的に造られたのが「植物園」なのだ。そのような事情を知っている者は、今でもこの「植物園」に対して苦々しい思いを持っているのだ。
 かつては「自然林」であったということを考えると、この「大木」は昔からこの場所にあったものではないかと推測される。植物園内には「ニレ」は数本あり、いずれも「大木」である。
 「ハルニレ」は日本全土の山地に生えるが、四国と九州には少ないとされている。当然、岩木山でも見られるが、その数は多くはない。一般的に「ニレ」という場合、この「ハルニレ」のことを指している。
 ニレ科にはムクノキ属、エノキ属、ニレ属(オヒョウ・アキニレ)、ケヤキ属がある。

 この「ニレ(エルム)」で思い出されるのは、五所川原市にある「エルムの街」のことだ。
 北海道の赤平市には「エルム町」と呼ばれているところもあるし、他に「エルム通り」など呼称されているところもあるそうだ。だから、五所川原市の「エルムの街」が全国でたった1つの「街」というわけではなさそうである。「エルムの街」と名付けて、地域住民からは「エルム」と呼ばれて親しまれているそうだが、実際に、その場所に「ニレ」が生えているのだろうか。
 私は「エルムの街」の名称由来が妙に知りたくなった。五所川原市には「ニレ」の大木が、それほどに生えているのだろうか。私はかつて数年間五所川原市の高校に通勤していたことがある。だが、その間に「ニレ」を見たという記憶がないのだ。
 名称というものには、その確固たる「由来」が必要ではないか。もし、五所川原市にその由来にあたる「ニレ」が全くないとすれば、これはおかしい。
 そう思ったら、何故「楡の街」としないで「エルムの街」なのかということへの疑問も出てきた。

◇◇「アオジ」か「メボソムシクイ」か、旅行者との会話 ◇◇

 私は、このベンチに腰を降ろして小一時間ほどいた。写真のアオジはその間ずっと囀っていた。
 実は「アオジ」とは、その鳴き声で、岩木山で出会っている。最初の出会いは「高校総体」山岳競技で「顧問」兼「審判員」として八甲田山に行っていた時である。朝明るくなった頃にテントから出てみた。野鳥の鳴き声が聞こえる。その声がする方を見たら、大湊高校のK先生がいる。この先生は「野鳥博士」である。そして、「チョッピーチョッ、チチクイチリリ、チョッピーチョッ、チチクイチリリ」と囀っているこの鳥が「アオジ」であることを教えてもらったのだ。
 その囀りの記憶が、それまで、全く野鳥に関心のなかった私の耳に今でも残っているらしい。もちろん、図鑑などでは見ていたが、まだ、実際の姿を見たことはなかったのだ。
 そして、今まさに目の前に、いや頭上にはその「アオジ」がいるのだった。
 全長が16cmほどといわれているが何だかそれよりも大きく見える。体の色は、全体的に薄い黄色みを帯びた緑である。よく見ると、やはり、胸が黄色地に黒色の縦斑のあるホオジロの仲間だ。頭上と頬は緑灰色で、嘴の基部や目先は黒味が強い。これは囀っているのだから、雄である。
 止まっている枝から殆ど動くことなく囀っているのだ。何という「ゆっくりとした調子」の囀りであることか。
 「アオジ」は一年を通して見かけるが、本州中部以北で繁殖し、高原、山地の明るい林に棲み、疎林で藪が多い場所を好む留鳥である。だが、市街地などの公園でも見かける事もあるそうだ。
 主に、高原や山地の明るい林にすみ、疎林で藪が多い場所を好むといわれている。藪の中では「ヂッ、ヂッ」とか「チッチッチッ」と地鳴きするという。藪や草むらの中の地上で草の実を食べ、夏には昆虫も食べるという。

 その囀りに聴き入っている私の前に、娘さんと一緒の、私と同年配と思われる夫婦が現れたのだ。その3人の会話から、この人たちは土地者でない旅行者であると思われた。
 父親と娘さんは小さな双眼鏡で、盛んに樹上を覗いている。どうも、「アオジ」を見ているようだ。私は、「アオジ」が見えるところまで出た。
 父親は、野鳥の「ハンドブック」を持ち、あるページを開いている。そこはウグイス類ヒタキ科ウグイスの仲間が掲載されているもので、「ヤブサメ」やら「メボソムシクイ」などの写真が載っていた。
 私に「あの鳥ですがね、格好と色具合からすると、ウグイスの仲間ですよね。だが、鳴き声はウグイスではないですね。ムシクイの仲間のセンダイムシクイでしょうか。そうだとすると鳴き声が違いますね」と語りかけてきた。
 私は野鳥のことは殆ど知らない。門外漢を任じているくらいだ。だが、「色具合は緑がかっている点で似ていますね。ウグイスの仲間だとすると少し多き過ぎませんか。それに、囀っているところが、あんなに高い樹上であるということも合点がいきません」と応えたのだった。
 ところが、この人はまだ、「ムシクイ」に拘っていた。「図鑑と比べてみるとメボソムシクイと非常に似ているんですよ」と言う。
 「囀りをよく聴いて下さい。『チョッピーチョッ、チチクイチリリ』と聴こえませんか。もしも、あれがメボソムシクイであるならば、樹下に藪がなければいけませんし、囀るところも高山帯です」と応じた。
 私は、それが「アオジ」であるとは言わなかった。「野鳥ハンドブック」を持っているのである。双眼鏡でじっくりと眺め、囀る声もよく聴いた。それを頼りに、ページをめくると必ず、「アオジ」に行きつくだろう。簡単に聞いた名前は直ぐ忘れる。

 その日、その場所で1時間足らずの間に、目で確認し、囀りを聴いた野鳥は、この「アオジ」の他に、ツグミ、シジュウカラ、コガラ、キビタキ、ヒヨドリ、マヒワ、オオルリがいた。植物園内の小さな林の南東に開けた林縁、そこには多くの野鳥が集まってくる。
 今度は岩木山で必ず「アオジ」の実際の姿を見よう。

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