岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

弥生跡地、モリアオガエルがいた / モリアオガエルの生息が教えてくれること

2010-06-14 04:50:30 | Weblog
 (今日の写真は、アオガエル科アオガエル属の「モリアオガエル(森青蛙)」だ。
 昨日は「弥生スキー場跡地問題を考える市民ネットワーク」主催の「生跡地自然観察会」だった。 
 参加者は24名、弘前市からの参加者が多かったが、青森市からの参加者も3名いた。それに、「東奥日報」弘前支社の記者が1人同行取材をしてくれて、観察開始から終了まで、すべてのルートに渡って密着取材をしてくれた。
 その詳細は、3月21日に実施した「積雪期」の観察会で得た実態の記録と併せて近々の東奥日報紙に掲載されるだろう。
 観察会は「跡地内の沢(水系)をたどる」をメインテーマにして、次の各項について観察と検証をした。

①「跡地内の沢に住むザリガニなどの生き物を探す」
②それら生き物が住んでいる生息環境を具体的に知る
③「弥生跡地」の地形的な特性を知る

 この「モリアオガエル」には北側の沢上部で、「ニホンザリガニ」3匹の生息を確認してから、「遷移」の遅れている「荒原」に向かう「チシマザサの竹藪」の中で出会った。
 断っておくが、この「モリアオガエル」はその時のものではない。捕獲をしたのは私であるが、「両手」で捕まえているので撮影することが出来なかったのである。これは別な資料からの「借り物」写真である。)

◇◇ モリアオガエルの生息が教えてくれること ◇◇

 観察ルートの先導を私はしていた。7日に着けておいた「送り(赤布)」を探しながら進む。ここ1週間の木の葉や草丈の成長はすごく早い。1週間前の「タケノコ」はすっかり立派な若竹に成長していた。
 ここの「チシマザサの竹藪」は岩木山の人工的な改変を受けなかった場所の「竹藪」に比べると、丈も短く、細い。別名の「根曲がり竹」という「曲がり」の部分もその角度が広い。これらは、この竹藪の「遷移」が始まってそれほど「年数」が経っていないこと、つまり、「若い竹藪」であることを教えてくれていることだ。
 だから、他の場所の「壮年の竹藪」に比べると「歩きやすい」竹藪ということになる。
それでも、初めて歩くという参加者にとっては、難儀なものであることに変わりはない。ただ、「藪」の幅が狭いので、横切ると直ぐに「脱出」出来ることが救いであっただろう。
 この「幅の狭さ」も「遷移」途上にある「竹藪」の特徴である。
 
 先頭に立って藪をかき分けて進む。突然、目の前の細竹の分枝がゆらゆらと揺れた。その先端には緑色の何やら「塊」が見えた。私の手が竹をよけた時にその塊は竹を伝って動き出したのだ。そこで初めて、それが「カエル」であることに気づいたのだ。
 「この沢すじにモリアオガエルが生息していたらいいなあ」という思いがあれば、見えた一瞬に、それが「カエル」であることに気づいたであろう。「いるわけがない」という観念は私を盲目にしていたのである。
 後続する者はなかなかついてこない。「カエル」は動きを止めて竹にしがみついている。私は立ち止まって、その竹にしがみついている「カエル」の観察を始めた。 
 体の大きさは7~8cmほどだ。この大きさだと「ニホンアマガエル」ではない。
 背中側しか見えないが地色は緑色だ。体表にはつやがない。静かに動いて位置をかえて「カエル」の眼を見る。
 なかなか瞬いてくれないので「目の虹彩が赤褐色」かどうかの確認がとれない。一瞬可愛らしい眼が動いた。おお、これは明らかに「モリアオガエル」だ。
 「モリアオガエル」に似ているものには「シュレーゲルアオガエル」がいる。だが、この大きさからすると、確実に、疑いなく「モリアオガエル」だ。この「破壊の限りを尽くされた弥生跡地」に日本の固有種で、本州と佐渡島に分布する「モリアオガエル」が戻って来たのだ。
 「モリアオガエル」おもに「森林」に生息する。成体は肉食性で、昆虫類やクモ類などを捕食する。そして、天敵はヤマカガシ、イタチ、アナグマ、タヌキなどだ。
 この沢すじには「モリアオガエル」の餌である「昆虫類やクモ類」が多くいるということだ。そして、「モリアオガエル」がいるということは「モリアオガエル」を餌とするは虫類やほ乳類が生息しているということにもなる。この沢すじを中心にして「弥生跡地」は遷移を進め、森は回復しているのである。
 私は「こみ上げてくる嬉しさ」を抑えながら、軍手をつけた両手で優しく「包み込む」ようにして、その「モリアオガエル」を捕らえたのである。
 その日、両生類に詳しい笹森先生も観察会に参加していた。素人である私の判断に間違いがあるかも知れない。笹森先生に確認して貰うためと参加者に「モリアオガエル」生息の確認と理解をして貰うためであった。

 ようやく、「荒原」に出た。私は、全員が「藪」から出て来るのを待って、笹森先生に「モリアオガエル」を渡した。

 笹森先生は…みんなの前で次のようなことを語った。

「これはオスのようだ。メスは体長が8cmほどで、メスの方が大きい。指先には丸い吸盤があり、木の上での生活に適応している。ニホンアマガエルやシュレーゲルアオガエルと似ているが、モリアオガエルはより大型。ニホンアマガエルとは目から耳にかけて黒い帯模様がない。シュレーゲルアオガエルとは虹彩が赤っぽいことで区別する。
 繁殖期以外は主に森林に生息するが、繁殖期の4月から7月にかけては、生息地付近の湖沼や沢に集まる。
 モリアオガエルがいるということはこの場所にの生息環境が戻ってきていることを示している。」(話の内容は概要)

「岩木山や津軽の自然を愛してやまないある会員からのメール(2)」は明日掲載します。

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